空中分解2 #2489の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
鉢かぶり姫が被っていたのも、こんなのじゃない、と思われるくらいに大きな鉢に 入ったラーメンを汁まで残さず「ぶわちかぶりも〜ん」と言われる程に飲み干す2人。 「うっぷっ!」 と体を揺すりながら勘定を割り勘で済ませると表へ出た。予備のヘルメットをロック から器用に外すと、「ポーン」とほおりなげた。両の手だけで受け止められなくて、 腹で受け止めた宮島は 「げ〜っぷっ〜!」 と、ニンニクやナットウやラッキョウやクサヤのない交ぜになったゲップを吐いた。 眼鏡を外してフルフェィスのメットを被ると、 「乗った事、あるよな?」 と言って宮島をリアシートに乗せて、「グィン」と車道に乗り出した。125ccの バイクは、2人乗りらしく慎重にノロノロと走り出した。2人とも鼻は馬鹿になって いる。宮島の吐息を少し襟元に感じて真壁は走る。前を赤いオープンカーがアベック を乗せて走っている。女の子の長い髪が風に揺れている。 「女の子が乗る、なんて事は考えるのはよそう・・・・」 そう言い捨てた眼前に視線は釘付けになる。3ナンバーのセダンが大きく車線を越え 前方に現れた。族っぽい男女の陰が一瞬ヘッドラィトに光って見えた。慌ててブレーキ をかける。 「ぐわっしゃ〜ん」 「き、き、き、き〜」 ノロノロと走っていたお蔭で難を逃れた。緩やかなカーブであった。反対車線から飛 び出してきたのは、3ナンバーのセダン。男2人、女2人のお兄さんとお姉さん方が 乗っていた。そして、災難だったのはオープンの2シーター。これもアベック。 「アベック、アベック、女の子と2人連れ・・・・・」 真壁はつぶやく。ガラスが飛び散っている。明るくなったり暗くなったりする125 のバイクのラィトに照らされている。ひしゃげた車の中からうめき声がする。伸ばし た血だらけの手がゆらゆらとうごめく。宮島は言う。 「おい、助けださなくっちゃ!」 真壁は咄嗟に止めに入る。 「降りるな 燃えるぞ〜」 と叫ぶ間も無く、車高を下げた3ナンバーの足元に洩れたガソリンから炎が巻上がる。 声も無い宮島であったが、訳も判らず真壁は叫ぶ。 「燃えろ〜!」 振り返ろうとする宮島を怒鳴りつける。 「しっかり掴まってろ!」 ユーノスも炎に包まれる。2人乗りのバイクは大きくロールして反転した。 「ど〜ん ばしゅ〜ん ど〜ん・・・・・」 爆発音を背中に受けて宮島は眉をつり上げ、思わずしがみついている。 「お前、気持ち悪いぞ〜 気持ち〜」 叫びながら真壁も半分泣き顔になっている。宮島も泣きながら怒鳴る。 「け、け、け、いさつに届けんでもいいのかよ〜?ま、っま、まかべ〜!」 「ど、ど、どうせ、ネーチャンと楽しくよろしくやってた奴らだよ〜 ほ、ほ、ほっとけ〜、仏の黒焼が惚れ薬になるってか〜?み、み、みやじま〜?」 きっと誰かさんが御立派な戒名でも御付け下さるんだよ。生前の行いが良かった方じゃ ござんせんか〜。風切る背広に体は冷え切る。捨て鉢の気分に涙流れる。鼻ビシビシに 走る、走る、ひた走る。目指すは六本木。小劇場ワールィとオモショィの角を曲がると ネオンが南欧風の壁の前に光っている。 バイクを止める。足の震えが止まらない。メットを外す。腕の震えも止まってない。 目を泣きはらしたドブネズミ・ルックの30男2人。確かにここはディスコの入り口。 このディスコの経営は、あるVAN会社でT&E(旅行とエンターテイメント)タイプ のクレジットカードの発行も行い、ハウスカード(その系列店でしか使えないカード) +パソコン通信+通信販売といったビジネスを展開している。 エンマ大王様が立ってる。夜の王様、黒服様だ。腿に力が入らない。与太つきながら 入り口を入ろうとすると、河豚提灯面した黒服が説教臭くのたまう。 「困りますね〜、この店はセンスと品格を大事にするんですよ 2着でサンキュッパなんてシケた格好じゃ駄目ですよ〜 御帰りはあちら・・」 何だ?見ただけで判るというのか?いつものアレか〜?そうそう! 「ねえ貧民 あっち行って〜てか?」 手を振り振り足を振り振り、真壁は日頃出したことの無い声でわめく。宮島もわめく。 目は吊上がり、両の手を振り上げる。2人は吐き気に襲われる。 「ゲボ〜〜〜〜〜〜」 ニュルニュルと吐物が一直線に黒服へと吹きつける。ネバネバと流れるラーメンやらは ウゴメキ ブツブツと切れて、ぬめぬめとした尺取り虫の様に蠢き始めた。そのうち、 「ぷつっ!ぷつっ!ぷつっ!ぷつっ!ぷつっ!ぷつっ!ぷつっ!ぷつっ!ぷつっ!」 と黒服の体を喰い破っていった。一瞬にして黒服は喰いつくされ、黒い服だけがヒラリ と床に落ちていく。目は吊上がり、両の手を振り上げる。再び吐き気に襲われる。 「ゲボ〜〜〜〜〜〜」 店の奥の方へ蠢く虫どもは飛んでゆく。異様な臭いが立ち込める。敏感な娘が2人、急 に飛び出してきた。 「や〜な臭い、何かしら〜、みんな良く平気やね〜!」 顔を見合わせると前の男2人に気がついたのか、 「何〜 宮島さんと真壁さん 何ださーい格好で突っ立ってんの?」 「勝田ルィと草津輝子か」 本当に無表情な真壁と宮島。顔一面が浮腫んでいる。 「ふん!つまんないから、もう帰ろう!」 2人の女の子はルンルンと帰って行った。店の奥の方へ蠢く虫どもは素早く移動する。 異様な臭いが立ち込めている。相変わらずクロノリの音楽が流れている。シャンデリア を吊している金具もムシャムシャとくわれ崩れ落ちる。シャンデリアが落ちた。 「がっしゃ〜ん」 虫というか、ミミズというか、休む事なく食べ続けている。悲鳴が聞こえる。 「きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!きゃー!・・・・・・・・・」 名古屋弁でトロィ奴、というのは確か「トゥ〜リア〜」という発音になるはずだ。これ に似たディスコの名前を聞いた気がするのは気のせい?に違い無い。が、とまれ、大勢 の女や男どもが下敷になった。うめき声が聞こえる。相変わらずに大音量のディスコ・ ミュージックはVANを通じた有線放送で流れている。蠢く虫達はみるみるうちに数を 増していき、その勢いから免れた者はいないようであった。 「ガジグジゴジゲジガジグジゴジゲジガジグジゴジゲジ・・・・・・・・・」 黙々と食べ続ける虫達に跡形も無く食われて、後には、一着何万円もする御洋服だけが 残されている。真壁は顔色一つ変えずに、どんよりした顔で立っている。 「みんな壊れてしまえ」 真壁は短くつぶやく。振り上げた両の手が宙を切る。灰色の気がほと走り、ピンク色の 光が辺りにまぶしく照りつける。宮島の顔がみるみる湯気をたてて乾いていった。 「キュイ〜ン チュド〜ン」 火柱が上がった。店の中の何やかにやが吹き上げられている。日干しになった様な宮島 は、吹いて来た突風に「バタン」と倒れるとモロモロと崩れて灰になった。真壁は風に 乗って、上空高く舞い上がった。強い横風に煽られてネクタイがなびいている。 「えへへっへへえへっへ〜へへっへへへへっへ〜」 気味の悪い笑い声が聞こえる。暗い路地裏から下半身だけの裸体の男が現れた。腰より 上が無い。その「モノ」を大きくシナラせながら右へ左へ振りながらスタスタと歩く。 瓦礫がそこかしこに落ちている歩道を歩いてくる。 「女はおらんか〜 ワシがトロケさせてやろうての〜」 野太い声がする。口も咽も無いのに響いてくる。頭の天辺から震わせる様な笑い声。 「えへへっへへえへっへ〜へへっへへへへっへ〜」 真壁に別の人格の記憶が蘇る。 「ア・イ・ツ・は・ま・だ・生・き・て・い・る」 ムシ 吐き気は独りでに起きてくる。あちこちに散らばっていた蠢達も下半身男へと群がって ゆく。下半身男の「モノ」がミミズの大群に包まれる、男の足も包まれる。「モノ」と 足だけの肉欲の塊はそれでも歩き続けようとしているように見えた。 「うぅ〜 た・ま・ら・ん」 野太い声が聞こえて、歩みが止まった。 「もう・・・生かしちゃ おかねぇ!」 真壁は吐き捨てる様に叫ぶと、手を組み、気を凝らした。 「 どが〜〜〜〜ぁぁぁ〜〜〜〜ん 」 下半身男は雲散霧消した。が、同時に白いネバネバした液体が四方八方へ飛び散ったの であった。真壁は、大きく肩で息をした。 真壁は惚けた様に、ビルの壁にもたれて座り込んでいる。思い直してバイクに跨る。 「 ラーメン喰いてぇ 」 そう呟くと、バイクは深夜開いているラーメン屋へと一目散に消えていった。
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