空中分解2 #2487の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
地下鉄深く 眠れる豚 乗り越しの挙げ句に目覚め 目覚め サラリーマンの怒りを乗せて 寺へ 来たらむ (クロヨン税制バカヤロー!!) 土手の上の一本道にコーラの空き缶がポツンと立っている。真壁六郎はバイク シズク を止めると、ビショ濡れになったシャツやらズボンから雫を滴らせながらヘルメ ットを外した。にわか雨に降られて、脇道に逃れてきた所だ。 「 ふ〜っ 」 ため息が洩れる。腹立ち紛れに空き缶に蹴りを入れる。 「 ズコーン 」 という音をさせて、シブキを撒き散らしながら飛んで行く。止んだばかりの雨に 多摩川はけぶり、霞んで見える鉄橋を電車は渡って行く。向こう岸は川崎。夕闇 に街の灯が見える。 同じ事ばかり考えている。楽しい記憶が、あれよあれよという間にクラッシュ して、やがて、バグ(bug)の巣になる。その物事、そのルーチンに思い至る と、たちまちにして暴走する思考。専門的に言うと、そういうのを「生活の特徴」 と言うらしい。ただ虚ろに、遠くを見据えて、自動販売機にコインを入れる。 「 ガチャン・・・ありがとうございました・・・ 」 乾いた女性の声がする。もう、3日も誰とも口をきいていない。コンビニでカゴ に弁当とか飲物を入れて、金かプリペイドカードを差し出すだけで、当座の飯は 食える。部屋に戻って、ガランとした廊下にへたりこむ。シャワーを浴びてから コンビニのソバを広げ食べ始める。木の床が冷たく心地よい。帰省したとて良い 事があるはずも無い。真壁の夏期休暇はこんなふうにすぎてゆく。チャールズ・ マンションの一室で。同じ事ばかりをまた考えている。 もう30才を過ぎてしまった。近々に副長昇任試験がある。「目覚めの日」と 会社の中では呼ばれる試験である。ラインを上ってゆくか、スタッフというか、 日のあたる窓の側かの分かれ目、である、とのモッパラの噂。でも、結局、特急 で昇進してゆく「メンバーズ・エリート」は最初から決まってるんだ。筆記試験 及び面接試験、そして外部委託の『地獄の訓練』。『心理攻撃』に耐えかね退社 をしてしまう人が毎年出る。それでも受けなければならない。さもなければ転職 を考えなければならない。どこのビデオ・プロダクションが作ったのか知らない けど、ウマク出来た就職案内というヤツにだまされたのは真壁だけじゃない。 クーラーを切って眠る。酒を流し込み何も考えないで寝る。この、チャールズ ・マンションはワンルームばかりである。誰もいないのか、それとも誰かがいる のか見当もつかない。考えても仕方がない。寝汗をびっしょりかいている。結局、 目がさめてしまった。考えても仕方がない。同じ事ばかり考えている。 たおやかに歩く女が微笑む。ニンマリと笑うその顔に、頭にこびりついて決して 離れない・・・。そして、今は身重の筈なのだ・・・・・。 今日も、コンビニには、例の彼が来ている。一人で来ては、漫画雑誌に顔をつっ 込むようにして、ニンマリと笑って読んでいる。午前0時15分。首都圏の人口は 一口に3000万人くらいと言われている。標準偏差の3倍平均からはずれた方も 10人くらいはいらっしゃってもオカシクは無い。あくまで、統計学的な理論上の 話ではある。実際に、そうした方が新聞の紙面を賑わせても困りモノであるのだが。 また、コンビニでソバを買ってしまった。公園のベンチに座りジュルジュルと啜る。 ふらりと歩いているうちに、トラックがビュンビュン通る大通りに沿って走る わき道に出てしまった。風はだいぶんと冷たくなって、秋の予感がする。涼しい。 ぼけっとして歩いていたら、原チャリ(原動機付き自転車=50CCのバイク)に 乗った高校生らしい連中に囲まれていた。 「 おっさん 」 リーダー格らしい男は、女の子の肩を抱いてニヤツキながら言った。 「 何とか言えよ〜 こらぁ〜 腹ばっかり出てよ〜 」 俺は終始無言だった。奴らはイキリ立ってきたみたいだった。言葉に事欠いては、 「 どうせ 嫁の来手なんか ないんだよな〜 はっはっはっは 」 そうだ、30過ぎてんだ。それがどうした。糸が切れた様に、真壁六郎の腕は空 を切り、そして、つんのめった。が、しかし、灰色の「気」が、にわかに辺りに 広がり、ピンク色に衝撃波は輝いた。肩を抱いた男は、女の子もろともに宙高く 大通りに飛ばされて行った。 「 俺の心に触るな〜 」 真壁六郎は叫んだ。男も女の子も、ちょうど走ってきたダンプのルーフの風切り 板にはね上げられ、落ちてきたかと思うと、次のトラック、次のトレーラー、と 転々として、結局のところ、後から来たアベックの乗ったオープン・カーの後ろ の座席に落ちたのだった。血だらけの男の手が、助手席のワンレンの女の肩を 「 ギュ〜 」 と掴むと、頭をがっくりと落とし動かなくなった。 「 キャ〜 」 という声がドップラー効果して通り過ぎていった。事の次第を見ていた連中は、 逃げようと一斉にキーを回すが、セルモーターが回るだけでエンジンは掛からぬ。 焦りの色が呻きに変わる。 「 みんな 壊してやる 」 真壁六郎がそう呟くと、体は宙に浮かび、電話ボックスの上に立っていた。急に 悪心がして、思わずソバが胃液とともにほとばしる。 「 げげ〜げげげげげげげ〜 」 電話ボックスの屋根にニュルニュルとソバがうごめく。電話ボックスの壁をつたって 原付の連中にズルズルと近づいてゆく。 「 ふ〜っ おっおれ・・どうなって・・・・ 」 声になるかならぬかのうちに、真壁の両手は高々と挙がり、そして宙を切った。再び、 灰色の「気」が爆発する。たちまち、その辺の連中の頭はひしゃげてイチゴ・ジャム になった。なんだか気分がおかしい。グラグラする頭は舞上がる。何かに動かされて いる。何かに笑わされている。 「 はっはっはっは〜 」 真壁六郎は宙高く舞上がった。15台あまりの原付のまわりにはミンチの御肉が散らば っている。ニュルニュルとうごめくソバかミミズかは、その肉をついばんでいる。 グラグラする頭に、口だけが大きく開いて高笑い。 「 はっはっはっは〜 」 こんな高笑いなんぞ生まれてこの方したことはなかった。学校でも、遊びに行っ ても、そして勿論の事に会社でも。この人生笑った事なんか無かった。笑い過ぎて、 目がつり上がっているのが真壁六郎にもわかる。頭がグラグラする。 「 何で あいつは 何度も 」 道路沿いの人家の屋根を何回飛び跳ねただろうか。真壁六郎は、確実に何処か に向かっている。古い小説の題名が口からついて出る。 「 何となくコロシタル 」 ブリリアントな丑の刻が始まろうとしていた。
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