空中分解2 #2452の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
−−ウォフ! 「鳥見です、カメラ持ってきましたあ」 −−うっ鳥見のオッサン 「どうせうるさいとか噂してたんでしょ先生」 鳥見はななめ向いにあるクラブ叶の常連で、新橋駅前でマニアむけの中古カメラ 店をやっている親父だ。先月だったか銀座ナインの中に小さな骨董品屋まで開いた ようで、手広くはやっているが、ほとんどカミサンとムスコが店に出て親父は遊び 人。いつもへんてこな骨董品を、話しの種ですと抱え、近隣に出没しては、それを 結局売りつけにかかるというオッサンである。 「先生、叶のママが最近つれないのヨって泣いてましたよ、ウォホオホオ」 「おい、あれは元歌手の教え子だ、笑子が本気に……」 「先生、別に今は独身なんですから本当でもいいんですよ」 「おおっ、笑子ちゃんが気にした。あらあ−−これはこっちの方も何か……」 オッサンが笑子の匂いをかぎまわる 「う〜んこれは香水ではなく石鹸の匂いか、するってえと?」 笑子が逃げる 「そんな事ばっかりして!奥さんにいいつけますよっ」 「妻か、惜しいやつを亡くした」 「あらら今度は殺しちゃうんですかぁ」 「まあいじゃないですか、はいこれ。 先生のライカは普通のカメラと違うんですから、フィルムを挿填する時に7〜8 センチ端っこをナナメに切って、このパトローネの溝にいれ、すぐ蓋をしないで こうして騙しだまし巻上げて下さいよ」 「ああ、そうしたつもりなんだけどな、10枚程でひっかかって動かなくなった」 「やっぱり最初の巻方のせいだと思いますよ。しかしライカのレンズ、特に先生の ズマリットの50mm、これは大人気ですが好き嫌いが激しくてね、まクセモノ ぶりが面白しろいっていえば面白いレンズですけどねえ、今度は先生どうですか 沈胴式のエルマー、なかなか渋いんですよこれが」 「ほ〜ら来た来た、まだまだ使いきれないな俺には。 こいつはボディが小さいんで、毎日必ず持ってあるいては駄作の撮りまくりって 感じか−−。ちょっとしたコメントを付けた写真集を出してみたいんだが、まだ 気に入ったのは一枚も撮れない」 「いいですねいいですねえ、先生だったらそりゃ素晴らしいに決ってます。ところ で先日ひっかっかってたフィルムですけど、セーフでしたので一応現像しときま した」 「ああ、有難う」 −−彼はそのモノクロの写真を一枚ずつ見始めた。 毎日持っているといっても、持っている事さえ忘れている事が多い。それも広い彼 の交際範囲からすると被写体もまちまち、うっかりするといつ撮ったのかも忘れて いる写真さえある。 「あっ叶の順子さん!」 「ほらっこれですよ動かぬ証拠、ねっ笑子ちゃん」 「はは、これ見ろタカさんのランチタイムだ」 −−マクドナルドの裏口 スーツを来た紳士がごみ箱から堂々とハンバーガーを失敬している。 「これも1分前までは500円、それに包装紙つきで清潔という事だ。 ファーストフードの店にはすべて廃棄処分の時間が定められている。彼はそれを 把握し、ローテーションを作る。そして銀座にいるすべてのホームレスに公平な 場所割りをしている、つまり元締めだ」 「へえ、たいしたもんですねぇ」 「俺も頂戴した事がある」 「先生っ!?」 「それに銀座のクラブでどれだけビールが余ると思う?。あれはコップについで飲 むから飲み口も清潔だろ、若干時間が遅くなるのを我慢すれば、銀座には常に完 璧な晩酌が用意されているという訳だ。 近頃はホームレスといえどもいままでの浮浪者のそれとは随分違う。おまけにタ カさんにはショバの利ざやがあり、地下道で詩も売っている。それで朝晩銭湯に 行き、歯をみがき、洗濯をし、ドライヤーを髪にあてる、そしてスーツを纏う」 「はーっ、三日やったら−−とはよく言いますが、それ以上ですねえ」 「地下道で売ってるその詩も、言いたくはないがかなりの歯ごたえがある。笑子、 お前も真似をしてみたらいい」 「いいんですっ私は」 「だからな、お前の詞は、お気に入りのカフェテリアで彼を待ってたら雨が降って きて、傘を買いにいったら彼とすれ違ってしまった……そんなのばっかりなんだ 「そんなの書いた事ありませんよだ」 「へへ、あの人は俺の先生だった事もあるんだ」 「えっ!!」 「羽鷹一徹。名前の通り一徹で歯ごたえのある詞は書いたが、不器用な作詞家でな 俺がミュージシャンをやめて作詞家を目指していた頃、あの人の家に半年程かな 居候ってやつをしていた事がある。だがある日いきなり家族もなにも捨てて蒸発 してな、家族はもとより俺も路頭に迷った。しかし、一応はあの人らしい生き方 が好きで俺は門を叩いた訳だし、おかげでというか、それがバネになったんだか 数年先には一応名前も知られるようになった」 「へっえぇ、はだか一徹?」 「ペンネームだよ、俺のペンネームもあの人がつけた。 本名は清野虎人。親父が渓流釣りが好きだったせいでな、へんなあて字なんだが マスのTROUTをもじって虎人とつけた、当初俺はその本名でやってたんだが、 あの人がゴロ合わせなのか、華がないという事なのか“銀色虎人”に変えた」 「はあぁ、そうなんですか」 「……で、数年後、銀座の地下道でバッタリだ」 「それじゃ先生の先生−−」 「まったくな、それも地下道に棲んでりゃもぐらの先生だ。 なんでもあれからインドに渡って、なんていったかな……ジョージハリスンに教 えた事があるとかいう霊能者−−いや瞑想者?なんだかわからないけど、その人 物に瞑想を伝授され帰国したとか言ってたよ」 「ふふ、私通いつめて教わっちゃおうかしら」 「全部お見通しで煙に卷かれるだろうな。さっきも俺の事をアウトローには成りき れぬバンガローだと抜かしやがった」 「バンガロー?う〜ん、私にはわかりませんが、詩人は銀座でハンバーガーを失敬 しながらも孤高というか……」 「おだてすぎかな、ホントはすれすれでバカかも知れない」 「いやいや、なんなんだかわからなくなって来た」 「要するにそういう事だ、俺にもなんなんだかわからないさ。 タカさんのカミさんと子供も引越しをしてその後消息不明、知らせたいとも思う んだが、それもお節介かもしれないしな」
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