空中分解2 #2451の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
★ −−ウォフ! この仕事場ではチャイムの替りにリトリーバーのジェーンが吠える。 便利ではあるが、犬の苦手な人物との打合せは一度のみで終る。 もっとも彼は犬の嫌いな人間が嫌いだ、それでいい。 「おかえりさない、どうでした?」 「どうもこうも相変らずラジカルなご老人だ」 「そうですね、先生になにか言える人ってタカさんぐらいしか−−」 「うるせぃ」 −−ヒュッ! 「何だぁ?」 「矢をよけたっ、ゴメンナサイ」 「はは、なんか電話あったか?」 「はい、桃田さんから。一応スケジュールお知らせしときましたけど…… イージュウマンならびの桃田さん、ふふ」 「そういう事もあったな。ももけんか……随分久しぶりだ」 イージュウは業界用語の数、すなわち30という事だ。 彼女がまだここに来たばかりの頃、彼から確かタレントの写真集に添えるイメージ コピーを頼まれた。彼女がその請求書の金額を確認するために彼に電話をすると、 その返答がイージュウならび、つまり30万円の源泉税つき¥333,333−。 彼女がそれをさっぱり理解できないで、俺に聞いて来た事がある。それを機会に そういう事も覚えておいた方がいいと、色々教えた。 数字の1から9は、ツエー、デー、イー 〜 オクターブ、ナイン。例えば1万 8千円であればツエーマンオクターブセンという事になる。それに、タクシー=シ ータク、ピアノ=ヤノピ ギター=ターギ、ファン=ワンフ、ただ逆さまにすれば いいという事でなく、それなりの逆さま用語でこれが結構ややこしい。 彼女はすっかりそれをメモして覚えたようだが、それ以来彼女は彼の様に業界用 語をつかう人物に出会ってはいない。 「先生!三色コンビ復活じゃないですか?」 「三色コンビねぇ」 −−桃謙プロの桃田謙一、作曲家の青山恭平、そして俺、銀色虎人の三色コンビ、 随分ヒット歌手を生んだもんだ。 「あいつまだそんな夢見て電話してくるんだな、もっと若い作詞家と組めばよさそ うなもんだが−−」 「そんな事ないです、先生の詞一番素敵、新人なんかロクなの……」 「謙遜して言ってるんだ」 −−ヒュッ!「おっとぉ」 「いいんだ。若い奴には幼いが若いなりの汗と泪みたいな詞があるんだよ、それは 俺にも真似出来ないかな。しかしそれも10年20年続けるとなると、その時は あいつらに俺の真似が出来ない筈だ。若干の憂いも含めてキャリアとはそういう もんだ」 「−−若干の憂いも含めてですか」 「アンポンタン!」 「先生、死語ですねそれ、トンチンカンぐらいの方がまだ使える……ふふ」 「とうへんぼく!」 「えーっ、トーヘンボク?」 「唐の変な木と書く、まぬけの事だ」 「う〜ん、響きは使えますねー、先生は風来坊?」 「風のように来たる男、それは使える日本語だろ。ありがと」 「ふふ、じゃ風来坊と唐変木ですか私たち」 「どちらかと言うとアンポンタンとトンチンカンだ、はは」 「あっ忘れてた。鳥見さんからもライカの修理終りましたって連絡ありました。 取りに来なければ持って行ってもいいとか言ってましたけど?」 「来るなって言えよ、明日行く」 「はい、わかりました」
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