空中分解2 #2448の修正
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序 山口県の南東端、広島県との境近くに、大島郡は今もある。古代には 海の民の根拠地として勢い有ったのだろう。日本書紀神代には、陰神の 生んだ日本国土、即ち「大八洲国」の七番目に数えられている。万葉の 時代から、周辺は急湍を以て知られた、海の要害。「海族」たちの根城 には格好の小島が、幾らでもある。 源平合戦の折には平知盛が、ここで水軍を組織し、源氏への抵抗を試 みた。室町期に中国地方に勢力を張った守護大名・大内氏の水軍は「大 島海賊」で、その大部分を構成した。大内氏の後を襲い中国地方を治め、 江戸期には周防、長門の国持大名となった毛利氏も、水軍は引き継ぎ、 「船手組」に名を改めながら、手放すことはなかった。 大島郡の本島・屋代島から北東400mの沖に、無毛(なしけ)島が 浮かんでいる。陰神が屋代島を生んだ時に飛び散った塩か飛沫が固まっ てできたのだろう。すぐ東は愛媛県。この海峡は6ノットの急潮で、多 くの命を飲み込んできた。島の面積は約1.1平方km。平野は殆どな く、岩でゴツゴツした、その名の通りの不毛の島。 島の開拓が始まったのは、寛文12(1672)年だった。対岸の地 を知行していた萩藩士・村上主膳が7町歩の開拓を藩に願い出て許され た。石高16石3斗余、家数8。これで暮らせる筈もない。急湍の海は タイ、ハマチの一本釣りが盛んな絶好の漁場でもあった。島民は米を作 りながら漁にも出た。村上主膳は船手組だった。そして島民は主膳の指 揮下、密かに海賊行為も行なっていたらしい。 近代以前、陸上にすら国家権力の力が及ばぬ地域はあった。海上は、 殆ど無法状態だった。「海賊」とは海にまで権力が及ぶことを主張する 陸上国家の物言いに過ぎない。権力内の反権力を「賊」と言う。権力外 にある彼らは実のところ、「海族」であった。彼らにとって海賊行為は 漁と同じだった。獲物は、海中を泳いでいても海上を走っていても、獲 物だ。海上では、私的所有権という概念は存在しない。あるとすれば、 それは、自分が取ってきた、という事実のみを根拠とする。土地などの 場合のように、権力に認めてもらい初めて確定するものではない。彼ら にとって権力とは波をかいくぐる術を心得た頭であり、環境とは揺れ動 き、荒らぶる海だった。 半農半漁の彼らが海賊行為を行なっていたことは、驚くに当たらない。 近隣の海で海賊をしていたのは、独り無毛島の民だけではない。隣の愛 媛県の島々には中世、勇名を馳せた村上、忽那水軍の末裔達が漁民とし て暮らしていた。事件の幕は、無毛島の入植から5年経緯った、延宝4 (1677)年、秋の新月夜に斬り落とされた。 般若 「よおい 竹坊 情けないのぉ 漁師の息子が船酔いかぁ」 「大丈夫よっ ほっとけや」竹は背中をさする年配の漁師の手を振り 払った。17の彼は、3年も船に乗っているというのに、大島の荒波を 受けると、いつも酔う。竹たちは伊予の国、松山藩の三津浜村の漁師。 タイを追ってやってきた。9人が2艘に分かれ、遠く大島沖に漕ぎ出し てきた。 「ほおよのぉ オヤジの松やん 死んだんも この辺やったわいなぁ 腕のエエ漁師やったが 男前じゃったけん 般若姫に見初められた んやろなぁ」年配の漁師は真っ黒な海を眺めやった。 「般若 いうて オットロシイお面の?」竹は尋ねた。 「ちゃわいや ベッピンさんよ ワシらが拝んだことないような」 年配の漁師は竹の上に屈み込み笑いながら話し始めた。 それは、悲しく惨い話だった。豊後の国の般若姫という美女を恋慕し た橘豊日御子は大和にあった宮を抜け出し豊後まで下り、素性を隠して 愛し合うようになるが、帝に連れ戻される。娘を出産した般若姫は御子 を慕って海路、都に向かう。しかし美しい般若姫を見初めた龍神が、嵐 を起こし、終に姫は御子を慕いながら大晦日の凍てつく海に我が身を躍 らせた。19歳だった。大島には姫を弔った般若寺があり、寺には御子 が寄進した石の五重塔が残っている。塔は御子が姫の船旅の無事を祈っ 彫らせた物を運んだらしい。御子は皇位に即き死後、用明帝の諡号を贈 られ稜(みささぎ)は、この地に遷された。 「ほれでの 大晦日の夜になったら 沈んだ辺りから ほおよ ちょうど この辺よ この辺から3つのヒトダマがスゥーと昇って どっかバラバラに飛んでいくんよ ん あっ あれ そこにっ」 「わあああっっっっっ」竹は船底に尻餅を突いた。 「あはははははは ほんなに驚かんでもエエげぇ」 「驚いたんやないわい ちょっ ちょっと オイサンの顔に ビックリしただけよ」竹はムキになってイイワケする。年配の漁師 は、鷹揚に笑っていたが、急に険しい顔付きになった。 「風の臭いが変わった こりゃイカン よい 竹坊 帆降ろせ 漕いで無毛島にでも急がんと ワシらも般若姫様の所に 行かんと いかんなるけん 早ぉ 走れっ」 竹は飛び起き甲板に飛び出して行った。タドンのように真っ黒い波が ドロリドロリとうねり、ノタウチ回っている。小さな船は風に揺られる ミノムシのように右に倒れ、左に傾いた。山のように見える大きな波が 覆い被ってくる。 海賊 帆を降ろした3艘の舟が、波に揉まれながら島に這い寄る。それぞれ 3人の男が乗り組んでいる。舟は村はずれの磯に着く。星明かりに9つ の黒い影がウッソリと立ち上がる。9人は揃いの赤褌に長ドスをブチ込 んでいる。40がらみの男一人だけが半纏を着ている。他は全裸に近い。 頷き合い磯を這い登り、浜に出る。浜の奥には7つの人家が1つの屋敷 を中心に、円を象っている。5年前に人が住み始めた、この島には犬も いない。静まり返った浜を9人は落ち着き払った足取りで歩いていく。 集落に辿り着くと、4人の男が周囲に立つ。5人の男は中央の屋敷に向 かう。 「定 抜かるなよ」半纏を着た40がらみが顔にアドケナサの残って いる18ぐらいの少年に声を掛けた。 定は板戸から洩れる明かりを睨みながら、頷く。定は、“稼ぎに出る” のは初めてだった。5年前から村の頭の父親について漁には出ていたが 盗みを働くのは、初めてだった。 「今日みたいな日にゃぁ 男はみんな漁に出てる 残ってるのは 足腰立たねぇ年寄りと 女子供だけだ 楽な仕事よ」半纏を着た父親が息子に笑いかけた。 「定坊 男になれよ」6尺ゆたかなゴマ潮頭が定の肩を叩く。頭格の 松吉だ。頭の春市と同じ歳だがフケて見える。定の名付け親だ。 2人に挟まれた定は両の拳を握り締めガタガタ震えていたが、松吉に 肩を叩かれた途端に、「うわああああっっっ」、悲鳴にも似た叫び声を 上げると板戸を蹴倒し躍り込んだ。春市、松吉、そして2人の男が続く。 タタキで縄をなっていた老人が驚いて男達を見上げる。「ケッ」、春市 が老人の胸ぐらを足蹴にする。「あああああ」、老人は弱々しい悲鳴を 上げ転がり、胸を押さえて呻き悶えた。定は一瞬、振り返り老人を見遣 ったが、ドロリとした春市の笑った視線と合った途端、何やら喚きなが ら屋敷の奥へと、駆け出した。 「何 何があったの」16ぐらいの娘が障子を開け顔を覗かせた。定 は驚いたように、急に立ち止まって娘を食い入るように見つめた。烏目 勝ちな切れ長の目は見開き、定を見つめ返している。白く細めに通った 鼻筋にはウッスラ脂が浮かび、柔らかく光り、際立っている。驚きのセ イか半ば開かれた唇は艶やかに輝いている。 「定坊 男になれ」。定の耳に松吉の声が蘇る。ゴクリと喉が鳴る。 娘は思い出したように悲鳴を上げ、板戸をコジ開け庭に飛び降りた。定 は後を追った。娘は細く白い指で裏木戸をガタガタいわせていた。裾の 乱れた襦袢には、娘の背中から腰にかけての輪郭がピッタリと浮き上が って揺れている。定はジリジリと近寄り、娘の脇を抱え、裏木戸から引 き剥がした。(俺の獲物だ 俺の獲物だ 男になるんだ 男に・・・) 定は娘を突き倒し、覆い被さった。左の腰を持ち上げられ、定は慌て て目を遣る。長ドスを差した侭だった。定は娘の泣き叫ぶ顔を、脂ぎっ た視線で見つめながら、褌をほどいていった。波打つ娘の柔らかい肉体 が感じられる。襦袢をもどかしくカキ広げ、イキリ立ったモノを娘の下 半身へと、やみくもに押し付けた。娘は汗と涙で美しい顔をクシャクシ ャにして、泣きじゃくっている。定のモノは突然、何かに沈み込んでい った。「ぎゃああああああっっっ」娘は目を堅く閉じた侭、絶叫した。 定は腰にしびれを感じて、のけぞり叫び娘の首筋に顔を埋めた。慌て て再び顔を持ち上げ、腰を動かし始めた。呼吸は苦しくなっていたが、 どうしても腰の動きは止められなかった。娘はもう、叫んではいなかっ た。歯を食いしばり目を堅く閉じて、呻き泣いていた。定は2、3分だ け娘にしがみついて身を揺らせていたが、打ち震え再び顔を娘の首筋に 埋めた後はしばらく動かなくなった。 定の心は静かになっていた。耳には娘のおえつと屋敷を家捜しする音、 そして時折、女子供の悲鳴が聞こえていた。定の肉体は弛緩しきってい た。潮にベタつく顔を娘の滑らかな首筋に何度も何度も擦り着けた。 「定っ 定っ どこだっ 定っ 引き揚げるぞっ」春市のドラ声が響 いてくる。跳び起きると、乾いた目の娘が無表情に見上げていた。定は 長ドスと褌を掴むと、後ずさり尻餅を突いた。「あ あ あ」定は、慌 てて立ち上がると、一目散に駆けていった。 MAY BE CONTINUED
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