空中分解2 #2423の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「あんた達」とチキンを頬張りながら、叔母さんが言った。「一体、何の話し をしているの?」 「別に・・・」と俺。 「最近の子って、全然わかんないわ」と叔母さん。 おばあちゃんの家に着くと、車の音を聞きつけて、健一が出てきた。健一は 、一人前に、黒い光沢のある礼服を着ていた。下駄をつっかけていて、下駄に 驚いた、放し飼いの鶏がバタバタして、彼は丸で、地元に帰った代議士みたい だった。ブレザーの俺は、少し、気が引けた。登を見ると、青い顔をして、鶏 を見ている。 「どうした、登」と健一が言った。「久しぶりだな。車に酔ったのか?」 「この子は、車には強い筈よ」と叔母さんが言った。「どうしたの?登ちゃん 」 「ニワトリが・・・」と言って、登は口を両手で塞いだ。 手の間から、吐しゃ物が漏れ出して、ポタポタと落ちる。 「どうしたのよォ」と言って、叔母さんは、登の背中をさすった。 登は、しゃがみ込んで、泣き出した。 俺も、鶏を見ていて、胸が、むかついた。何故だろう?と、俺は考えていた、 が、すぐに、了解した。 「分かったよ」と俺は言った。「叔母さん」 「えェ?どうして?」と叔母さんが言った。 「さっき、フライドチキン食べたじゃない。それでだよ」 「何の事?」 「生きてるチキンを見て、気持ち悪くなったんだよ」 「そうなの?」と叔母さんは、登に言った。 登は、なおも吐きながら、うなずいた。 「でも、何で?」と叔母さんは、俺に言った。 「何でって・・・。叔母さんは、気持ち悪くないの? フライドチキンの正体 を見て」 「牛の生け作りって、不気味だよな」と、ずっと腕組をして、傍観していた健 一が言った。 「何?」と叔母さんが言った。 「部分でない肉なんて、気味悪いって言う事」と健一が言った。 「変な人達」と叔母さん。「そういう世代なのかしら」 おじさん達が出て来て、登は家の中に運ばれた。鶏は、篭に閉じ込められた 。 大人達は、すっかり出来上がっていた。おばあちゃんは、祭壇の奥にしまわ れていて、一人ぽっちだった。明日の「最後のお別れ」までは拝めない、と誰 かが言っていた。俺は、何故か、ほっとした。 酒の席にあぶれた、おじさんの一人が、テレビで、プロ野球のオープン戦を 観ていた。俺も、なんとなく、おじさんの背中に立って、テレビを眺めていた 。巨人の桑田が、何回もサインに首を振って、なかなか投げない。やっとセッ トポジションに入ったと思ったら、今度は打者がタイム。俺は、苛々していた 。俺はVHSのリモコンを捜していた。もちろん、生中継は、早送り出来ない 。 「ヒロシかァ?」とおじさんが、俺に気付いて、振り返った。「野球、好きか ?」 「好きだよ」と俺が言った。 「東京に住んでるんじゃ、ドームに行くのか?」 「行かないよ」 「何で?」 「だって、騒がしいし、汗臭いし、・・・。ヒットする音はしても、打球なん か見えないもの」 「じゃあ、もっぱら、テレビで観戦かい」 「中継も観ない」 「じゃあ、プロ野球ニュースか」 「それも見ない」 「じゃあ、何で見るんだ?」 「朝、新聞で確認するだけ」 「そんなので楽しいのか?」 「分からない・・・。でも慣れてるから、多分楽しい。新聞の見出しで、だい たい分かるよ」 「変な奴だなァ」 要するに、その晩は、全く速く過ぎた。坊主が来て、大人達は泣いて、酒を 呑んで、寝てしまった。誰かが、線香を絶やさない為に、徹夜の番をしなけれ ばならなかった。孫を代表して、俺と健一が、線香番をした。俺と健一は、膝 を抱えて、線香を眺めていた。線香の煙が、幾重にも層になって、薄暗い部屋 を、漂っている。天国って、こんな感じかな、と思った。 夜中の2時頃、カヨの事を、思い出した。伝言ダイヤルに電話をしようと思 って、電話の所へ、行った。しかし、おばあちゃんの家の電話は、ダイヤル回 線で、「#」が無かった。 電話から、帰って来た時、「彼女にでも、かけたかの?」と健一が聞いた。 「まあね」と俺が言った。「健ちゃんの方は、彼女、いるの?」 「いるよ」と健一は言った。「うまく、言ってるの?ヒロシの方」 「何で?」 「だって、随分、短い電話だったし」 俺は、少し考えてから、「俺ねェ・・・」と言った。「俺って、少し変なんだ 」 「何が?」と健一が言った。 「俺、あいつの事、好きなんだ。でも、俺の愛しているのは、俺が思っている あいつで、本当のあいつじゃないんだ」 「結晶作用、ってやつ?」 「何? それ」 「アバタもエクボ、ってやつだよ」と健一が言った。 「そうじゃないよ」と俺は言った。「俺、あいつが好きだったんだ。初めて会 ってみて、思った通りの娘だったし」 「初めて会って?」と健一がいった。「会う前から、愛してたの?」 「まあね」と俺は言った。「色々、あるじゃない」 「ペンフレンドとか?」 「まァ、そんな所」 「それで?」と健一。 「会ってみて、いい娘だなァー、って思って、ホテルに行って・・・」 「どうだった? お味の方は」と健一が言った。 「最高だったよ」と俺は嘘をいう。「でもね、なんか、こう・・・。こうなん だ。あいつとセックスするより、あいつの写真を見て、オナニーした方が、い いんだよねェー」 「へェー」 「俺、って、変?」と俺が言った。 健一は、少し考えていた。それから「『レイン・マン』観た?」と言った。
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