空中分解2 #2422の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
§ タワー・レコードの、「ウェルカム・トゥー・ジャパン」コーナーで、バン ・ヘイレンの最新のCDを買った。金を払う時に、レジのカウンターの下に、 気になる、ポスターを発見する。ドゥービー・ブラザースの、新しいCDの、 発売予告。ドゥービーは、大好きだ。『ミニット・バイ・ミニット』から10 年。俺は、真から、生きていて良かった、と、思った。歴史学者なら、ヒトラ ーの演説を、聞きたいだろう。同様にして、俺にとって、新発売のドゥービー のCDを聴く事は、記念碑的出来事なのだ。 哲也の家に、行った。哲也のおばさんが、哲也の部屋に、案内してくれた。 哲也の部屋は、公団の四畳半で、息が苦しい程だった。壁一面に、ポスターが 、貼ってある。NECの斉藤由貴のポスター、富士通の南野陽子のポスター、 沖の浅香唯のポスター。机の上には、NECの32ビットのマシンがあった。 マシンの上にはCRTがあって、CRTの上にはモデムが乗っていて、その上 に、電話が置いてあった。哲也は、頭にはヘッドホンをかけてCDを聴きなが ら、パソコン通信でセンターを呼び出していて、通信回線がつながるまで、リ モコンのスイッチをRGBとテレビのチャンネルに、行ったり来たりしていた 。 「パソコン通信、するの?」と俺は、モデムをいじりながら、言った。 「ああ」 「何処のセンター?」 「PC−VANだよ。でも、最近控えているんだ」と哲也が言った。 「何で?」 「だって、今月の電話代、18万だぜ。おっかーが、怒っちゃってね。新藤の 奴、ボリすぎだと思わない?」 哲也と俺は、PC−VANのオン・ライン・トークで遊んで、それから、グ ラフィック・ツールで漫画を描いて、それから、バン・ヘイレンのCDを聴い た。バン・ヘイレンのCDを、コンポに乗せる時、「ダビングさせてよ」と哲 也が言った。 俺は、嫌だった、が、「いいよ」と言った。 バン・ヘイレンを聴きながら、俺と哲也は漫画を読んでいた。たまに、深夜放 送で仕入れたギャグを、飛ばした。バン・ヘイレンが終わって、俺は帰った。 玄関まで、俺を送りに来た哲也が、「後で、電話するよ」と言っていた。 § 家に帰ると、誰もいなかった。台所が、西日で、暗いオレンジ色に染まって いた。いかにも、陰うつな家庭のイメージ。テーブルの上に、置き手紙があっ た。 −−−浩、お帰りなさい。おばあちゃんが亡くなりました。お母さんとパパは 、先に、宇都宮の実家に行きます。浩は、代田の寛子おばさんと一緒に来なさ い。寛子おばさんに電話する事。お腹がすいたら、冷蔵庫にチーズケーキがあ るよ。 俺は、チーズケーキを食べながら、寛子叔母さんに、電話した。今日は友引 で、お通夜は明日、という事だった。明日の九時に、「新宿の目」の前で、待 ち合わせる約束をする。 翌日の朝になって、俺は、初めて、何を着て行ったらいいのか、迷った。そ れらしい服を、俺は、持っていない。考えた挙げ句に、紺のブレザーのエンブ レムを剥して、それを着て行った。 俺が、「新宿の目」に着いた時、叔母さんは、既にいた。従兄弟で、中学生 の、登もいた。 「おじさんは?」と俺は叔母さんに聞いた。 「夕べの内に、一人で行っちゃったわよ」 「へー」 「あの人、何時も、一人で行っちゃうの。何時も、よ!」 ベットの中でも?、という台詞は吐かないでおく。叔母さんは、さばけた人 だけれども、登がいたから、言わない。 叔母さんの運転で、東北自動車道を北上する。俺と登は、後部シートにいた 。無口な登は、大切そうに、ジュラルミンのケースを抱えていた。 「何が入っているの? 三億円?」と俺は登に言った。 「カメラ」と登が言った。 「この子が、お葬式の記録係なのよ。後で見たくなるでしょ、みんな」と叔母 さんが言った。 宇都宮に着いたのは、お昼頃だった。登が「お腹がすいた」と言い出した。 叔母さんは、ケンタッキー・フライドチキンに、車を入れる。 「こういうのって、いいの?」と俺は叔母さんに言った。 「何が?」と叔母が言った。 「だって、喪中は、精進料理とかじゃないの?」 「信心深いのねェ」 「別にそういう訳じゃないけど」 チキンを食べながら、登は、ジュラルミンのケースから、アイドルの写真を 取り出して、見せてくれた。 「これ、生写真ってやつ?」と俺は登に言った。「何処で撮ったの?」 「国分寺の丸井」と登。 「カメラに微笑してるね」 「そうだよ」 「話したの」と俺が言った。 「誰と?」と登が言った。 「このアイドルと」 「のりピーと?」 「そうだよ」 「どうして?」と登が言った。 「だって、こんなに接近したなら、話せばよかったじゃん」 「・・・・」 「憧れてんだろ」と俺が言った。 「だって、そんな暇ないや。写真に撮れば、何時でもみれるから」 「奇妙だな」と俺は言った。「話すチャンスがあるのに話さないで、後で写真 に話すなんて・・・」 「そうじゃないや」と登が言った。「話す時間がなかったんだ」 「シャッター押す間に、一言でも話せばよかったじゃない」 「だって」と言って、登は少し考えた。「だって、もし、話して、嫌われたら どしてくれる? 嫌いになるのもいやだし・・・」 俺は、カヨとの晩の事を、思い出した。あの時、俺は、縫いぐるみの中から、 カメラを回していた。部屋に帰ってから、頭の中で、フィルムを再生して、俺 は、自涜した。 俺は、「そうだな」と登に言った。「そうだよ、解る。実際に話したら、嫌い になるかも知れない。写真ぐらいの方が安全だよ、写真ぐらいの方が愛しやす い」
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