空中分解2 #2421の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
おばあちゃんは、本当に、あっちこっち切り刻まれた感じだった。もう、口 では、息が出来なかった。喉を切開して、プラスチックの管が植え込んであっ た。鼻から細いビニールホースが入っていた。食事の時間になると、そこから 、味噌汁やジュースを、注射器で入れた。布団の下の方からも、細いビニール ホースが出てる。それは、ベットに吊されたビニール袋につながっていた。ビ ニール袋の中には尿が溜っている。点滴は、常に2本で、一本は茶色の大きな 瓶で、これはブドウ糖らしかった。もう一本の、小さい、透きとうった瓶には 、緑の十字が印刷してあった。俺は、初め、「どうして、こんなにまでして、 おばあちゃんを生かしておくのだろう?」と思った。しかし、緑の十字を見て いて、解った様な気がした。おばあちゃんは、医者や薬屋の為に、生きている のだ。 俺は、おばあちゃんが、何時死んでもよかった。でも、今夜でなくて、いい 。昨日か明日か、当番が別の親戚の晩に死ねばいい。 夜中、お袋は、折りたたみ式のベットに寝て、俺は、ソファーに寝ていた。 スタンドの明りが、ぼんやりと、おばあちゃんを照らし出していた。ルーベン スの絵画みたいだった。お袋の、かすかな寝息が聞こえる。加湿機が静かな音 を立てている。誰かが持って来たパイナップルが、熟れて甘い匂いを発してい る。俺の、残りの一生、パイナップルの匂いを嗅ぐ度に、おばあちゃんの事を 思い出すに違いない。 俺は眠りそうになった。まどろむと、点滴の滴が落ちる音が聞こえた気がし た。しかし、それは、廊下を歩く看護婦のヒールの音だった。入って来た看護 婦は、懐中電灯で俺を照らし、俺は目を覚ます。看護婦が出て行くと、ヒール の音が、廊下に、冷たく、こだました。プルーストの『失われた時を求めて』 の、初めの部分を思い出した。しかし、看護婦は、一時間おきに来るので、俺 は眠る事を諦めた。 ウォークマンか液晶テレビを持って来ればよかったな、と、俺は、思った。 テーブルの上に、誰かが忘れていった、カード式ラジオを発見した。試しに聴 いてみる。J−WAVEが入った。 −−−ハーイ、エブリボディー。ダンス&ソウルミュージック・フリークに送 る、J−WAVE・バック・トゥー・ソウルトレイン。懐かしいあのナンバー を、ラジオの前のあなたに、今すぐ、デリィバリィー。さて、続いてのオーダ ーは、フラッシュダンスのサウンドトラックから、マニアック・バイ・マイケ ル・センベーロ。新宿区は、コウジ・バックトゥー0さんからのリクエスト。 いとしい、カヨちゃんへ、との、メッセージを添えて。お送りするのは、オフ コース、ナンバーワンFMステーション、エイティーワン・ポイント・スリー 、J−WAVE。 夜中の二時頃、お袋は、完全に寝入っていた。俺は、病室を抜け出し、病院 を抜け出し、真夜中の大塚の通りを、ぶらついた。「空車」の赤いランプをつ けたタクシーが、ジェット機程のスピードで、疾走している。 (コメント:今だったら↑こんな言い方は絶対にしないのになあ) タバコを売っている、コンビニエンス・ストアを見つけて、タバコと百円ラ イターとライト・コーラを買った。店の外で、コーラを飲みながら、ちょっと 、一服。一口すっただけで、ニコチンが体中の血管を収縮して、めまいがする 。俺は、しばらくの間、タバコに酔っていた。それから、グリーン電話で、伝 言ダイヤルに電話をした。 8301# −−−NTT東京ダイヤルセンターです。ピッという音の後に連絡番号と#を 押して下さい。 0129・0129・# −−−登録している暗証番号と#を押して下さい。 0129・# −−−伝言されるか、お聞きになるかをご指定下さい。新たに伝言される時は 、数字の3と#を、また伝言をお聞きになる時は、数字の7と#を押し て下さい。 7・# −−−新しい伝言からお伝えします。お聞きになっている途中で数字の9と# を押すと次の伝言に移り、数字の8と#を押すと伝言を繰り返します。 9# −−−1時10分のマーガリンからのメッセージ! 僕も、思い出大好き人間 なんだよね。だって、思い出の中の僕は、便秘だったり、汗を掻いたりしない からさァ。セックスしている時に、オナラをしたかったり、しないから。「ヘ ッ・ヘッ・ヘッ、あんた、綺麗な顔をしているけれど、臭いオナラするんだろ うねェ」「ヘッ・ヘッ・ヘッ、あんた、可愛い顔をして、太いウンコするんだ ろうねェ」うぅ・・・すごい事を、言ってしまった。とにかく、思い出は、最 高ですよ。傷つかないし、傷つけないからね。 −−−次の伝言をお伝えします。 −−−1時を、ちょっと回った板さん、だ。過去、って、俺は、好きだねー。 大抵、今より、思い出の方が、好きだよ。俺は、今の俺より、昔の俺を愛して いる感じだぜ。多分、思い出の中の俺は、不快を感じないからかな? −−−次の伝言をお伝えします。 −−−時刻は12時52分のトモロです。コウジさんは、17にして、過去に 、生きるのですか? でも、この曲、懐かしかった。あの頃の事、色々、思い 出しました。もし、今夜、この曲を聴いていなかったら、あの頃の事は、一生 、忘れたままだったかも・・・。そうしたら、あの頃、生きていなかったのと 、同じですね。 −−−次の伝言をお伝えします。 −−−12時40分のコウジ・バックトゥー0です。『フラッシュ・ダンス』 のサントラは、レコードもCDも持っていまーす。じゃあ、何でリクエストし たかって? だって、一人で聴いてもつまらないし・・・。みんなで聴きたい 、って、感じなんです。みんなで聴きながら、でも、一人でいたい。僕、あの 曲、好きなんです。あの頃の方が元気だった感じ。僕、あの頃の方が気持ちよ かったなァー。 −−−次の伝言をお伝えします。 −−−12時と36分は、家主のカヨです。いやー、びっくりしましたねー。 今、J−WAVEを聴いてら、なんと、コウジさんのリクエストがかかってい ましたねー。カヨは、このCD、持っていますよ。今度、コウジさんに、貸し てあげようかな。 −−−ご利用いただき、有難うございました。 朝方、俺は、自分の部屋に帰ってから、鏡を見ながら、泣いた。30分ぐら い、泣いた。つまり、俺は、縫いぐるみを脱いで、おばあちゃんの置かれてい る状況を、今更、感じている訳なのだが。 「何で、何が悪くって、おばあちゃんが、あんな目に会わなきゃならないの? 」
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