空中分解2 #2404の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
あたしユカリ。成田でシグマニア王国の第二王子様にみそめられて(ホント よ!)、お嫁にいく事になったの。 最初に声をかけられた時は、何よコイツー! とか思ったけど、よくよく見て みると、割と男前だし、何か雰囲気がアレなのよね。それでもしかしたら、て思 ったら、やっぱり! 王子様だったのぉ! ★ 「そこのお嬢さんガール!」 この一言でもう逃げたくなったわ。 「変わらないね。とってもキューティクルござる」 キューティクル、て何? まさかキュートを言い間違えてんじゃないでしょう ね。それともビューティフルかしら。聞く方が恥ずかしくなるような言葉を使わ ないでほしい、て言いたいわ、ほんと。 まあ、あたしの事ほめようとしてた、てのは分かったんだけどね。んふっ。 そしたらこの人、いきなり! あたしの脇にガッて手を延ばして、体を持ち上 げたの。ちょうど、そう赤ちゃんを両手で抱き上げるみたいに。公衆の面前で、 急所をいきなり攻められて、マジであせったわ。 「きゃあっ!」 「見つけた、見つけたあるよ! マインお嬢さんガール!」 ★ 「ワタシとってもニッポンに興味あるのコトね。うちの国も、ニッポンの事有名 よ。ニンジャ、ハラキリ、フジヤマに、ホンダ、トヨタ」 「は、はぁ」 ここ空港の喫茶室。ああ、何でこんな変なのに、のこのこ誘われちゃったんだ ろ。やっぱり最初の脇つかみ抱き上げが決ったのね。 でも、こいつダセー外人だなぁと思いながらも、彼の話に引き込まれていった のあたし。彼、嘘は言わないの。冗談も言わないの。でも、なんでか分かんない けど彼の話、面白かったのよね。 悪い人じゃないみたいだけど、外人にしても何かこの人、ただものじゃないわ ねえ。日本にも何度か来てるみたい。 て事でもう退散。 「あのぉ、あたしそろそろ帰りますもう遅いし用事もあるしそれじゃどうも楽し いお話ありがとうゴザイマシタッ!」 つきあってられますかってんだ! そそくさと椅子をけって帰ろうとしたら、 いつの間にやら、後ろにはサングラスに黒づくめのおじさん達がずらーッと! ひえー! 何よこれ! ★ ええ? 王子様あ? この人が! 「第二王子だけどネ」 わっわっわっ、どうしよ! どうしよ! 「あー、それはどうも、ようこそ日本へ、えーとそのぅ」 「ユカリさん」 「は?」 「(しばし沈黙)」 げっ、目がマジだわこの人。 「ワタシ、あなたの為に現在ホンジツただいま日本に来ました」 ガシッ(あたしの手を握る音) 「ユカリさん、ワタシとケッコンしてください!」 「な な な なにー!」 ★ それでなくても、黒ずくめのおじさん達にまわりをガードされて一等目立つん だから、できるならおとなしくしてたかったけど、言われた内容が内容でしょ。 はしたないとは思ったけどさ、すっとんきょうな大声出しちゃったわよ。 彼がどこであたしの事知ったか、ていうと、ねぇ。 言っちゃおうかなぁ。うふふ。 実はね、あたし達、偶然だけど以前に一度、顔を合わせた事があるのよね。 思い出したくもない、いやな事件があったんだけど、その時、彼氏に「みそめ られた」らしいの。あれは、そう! たまたまあたしがお使いで、ロイヤルシャ インホテルに行った時の事だったわ。 当時あたしは花屋の店員で、ロビーに飾られていた花を取り替えに行ってた訳 なの。何でも要人が来るとかで、それまでに全部終わらせなきゃならなかったん だけど、車が渋滞にはまっちゃって、花を届けるのが少し遅れちゃったのね。 ホテルに着いたのが予定時刻ぎりぎりで、あたしも他の人達もみんなあせって たわ。 そう、ご明察。その要人、ていうのが、彼だったの。 ★ 「きゃーユカリちゃん、来たよ来たよ! 早くそれ置いて!」 て同僚の子がわめくのよ。外を見たら、黒塗りの大きい車がちょうど横付け して、例の黒づくめのおじさん達に囲まれて、きらきらしたのいっぱい付けたお 兄さんが出てきた訳。 もう余裕なんてないから、あたしの背ほどもある大理石の台によいしょ、て花 瓶を置いて、その影に後ろ向いて隠れるように立ってたのあたし。 それを待ってたかのように、要人のお兄さん、ロビーに入って来たのね。ぎり ぎりセーフ。ほぉ、て大きく息をついて天井を向いたら、そしたら、頭が後ろの 花瓶にごっつんこ。 花瓶が台の向こう側、お兄さんの足元近くで、がっちゃーん、て悲鳴を上げた 時は、死んじゃうしかない、て思ったわ。 ★ もう一生忘れられないわねぇ絶対。今思い出してもゾッとするのあたし。 大騒ぎになって、台の陰からこわごわ頭を出してみたら、お兄さんを囲んでい たおじさん達が、一斉にあたしに銃を向けて口々に何かを叫んだわ。 「ご ご ご ごめんなさい!」 あたしもう恐くって、その場に土下座しちゃった。 で、めちゃめちゃになった頭で、とにかく片付けなきゃ、て思って、花瓶のか けらとかお花とか、拾ったりしたのよ。 後で話を聞いたら、くだんのお兄さんは、その時「ジャパニーズ・ドゲザ」と かいって感心してたんだって。 とにかく、その時は、いろんな人から(結構偉い人もいたみたい)油をしぼら れて、コメツキバッタみたくぺこぺこしたあげくに、最後は花屋もやめさせられ ちゃったけど、命までは取られなかったわ。 マスコミ? ううん、幸い、て言ったら変だけど、空港での中継が終わったら みんな引き揚げて、ホテルまで追っかけてきた人はいなかったから、その点は助 かったのあたし。 ★ 要するに、この第二王子様は、あたしの土下座が気に入ったらしいのね。それ でずうっと憶えてたらしいの。 こんなのってありなのぉ? 将来、歴史の本に「シグマニア王国の第二王子は 彼女の土下座に惚れました」なんて、変な事書かれないかしらん。 とにかく、すぐにお返事できることじゃありませんから、て逃げて帰ったら、 両親が玄関であたしの帰りを待ってて、顔を見るなり「でかした!」ときたもん よ(他に言いようはないのか、ウチの親ときたらまったくもう)。別れてしばら くして、家の方に大使館から連絡がきたんだって。 翌日からテレビは来るわラジオは来るわ新聞は来るわ雑誌は来るわ、花瓶をぶ ちまけた時に真っ赤になって怒ってた役人のおじさんはにこにこ笑い浮かべて来 るわで、もう大変。 そうよね。あたしもそう思うよ。周りでいくら騒いでもねぇ、これって、肝心 なのは当人どうしの問題だと思うんだけどな。 うん、今は好き。いっぱい好き。いい人だもん。んふっ。 ★ あたしね、彼に嫁ぐ事に決めたの。 そりゃ言葉とか風習とか、心配な事ってたくさんあるよ。シグマニアなんて国、 今まで名前も知らなかったし。 でも、それってさ、誰と一緒になるにしても結局は同じでしょ。ね。 幸せ、なのかな。やっぱり。彼の顔が胸に浮かぶと、あったかい気持ちになる んだ。 成田での脇つかみ抱き上げなんかも、今は素敵な思い出。考えてみれば、すっ ごくロマンチックよねあの場面。て、ちょっとあたしの欲目かな。 人生ってね、何が起こるか分かんないよね。これから先、たいした事なんても う起こりっこないさ、て言ってる人がいるけど、そんな事ないよ。絶体。悪い事 もあるけど、いい事もあるよ、ね。 じゃあね。お別れよ。あなたもがんばってね。バイバイ! <おわり>
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