空中分解2 #2382の修正
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★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「あなた 惟義がなくなって もう 7年ね」 「おお もお ほんなんなるか」 「7回忌だから 月に行きたいんだけど」 「ああ 行かないかんな 月 いうたら 弟の ほれ 惟顕くん あそこの開拓事務所に勤めてんだろ」 「ええ なんだか イイ人がいるから 是非 あたしたちに 会ってほしいって 言ってるの」 「ほおお ほういや もう23やもんな どんな娘やろか」 「なんでも 1つ年上で 事務所の上司の娘さんなんだって もう その人の話になったら 照れちゃって 照れちゃって まともな話に なんないのよ もお ベタ惚れね」 「ははは ほしたら 命日に合わせて休暇貰おうわい」 ワシは月の日本人学校で働いている時に書いた論文が認められ 日本本土の大学の教師になっていた 歴史心理学科の日本近代史講座を担当している 平の講師 惟義の姉の由美とは3年前に結婚した 惟義が校舎の屋上で 首を絞められ発見されてから もう7年が経った 5年ぶりの月は 暑かった 「ニイサァン」 元気のいい 惟顕くんの声だ 見て驚いた あの頃の惟義ソックリだ あれほど反目しあっていたのに 皮肉なものだ 「なんや 迎えに来とったんか 仕事 ええの?」 「うん 由美姉さんに 時間教えてもらってたんだ えと あの この娘が あの・・・」 「松本恵子さん やったっけ」 「あれ 義兄さん 知ってたんですか この娘」 「あ ああ」 「M先生 お久し振りです 覚えてて下さったんですね 感激だわ」 「ははは 忘れっこないよ あんたみたいな別嬪さん」 条件反射的に 由美が頬を膨らませてみせる ナニ 本当に 怒ってるわけじゃない 翌日 知人回りをすると偽って 恵子を呼び出した 「どおゆうことや 惟顕くんが 惟義の弟だって 知ってたんだろ」 「知ってたわ 彼が月に来た時から 驚いたわ 瓜二つなんだもん」 「ほやったら なんで なんで・・・ また 悲劇を繰り返したいんか もう 不幸な記憶は 君で断つって 誓ったやないか」 「誤解しないで 彼から アタシに近付いて来たのよ」 「だ だからって・・・」 「M先生 解ってた筈よ アタシが彼と付き合わなかったとしても アタシが子供を生めば アタシが持ってる忌まわしい血の記憶は 子供に伝わり いつか きっと 彼じゃなくても 彼の子孫を殺すのよ」 「ほ ほやけど・・・ お前が 夢の中で見た 憲兵大尉の殺害と同じように 惟義を殺すことを 妄想し その通りに 学校の屋上で 惟義を殺したのは 解っとる 惟義に その夢の話は聞いとるけん 裁判で ほんまに見たように 証言もできる こんな事 言いたあないけど もし 考えを変えんのやったら あの事件の事 バラすで」 「ふふふ M先生ったら 嘘が下手ね 先生が あの時 沈黙を守ったのは アタシの嘘泣きのせいでも 生徒のアタシと惟義先生のスキャンダルを恐れたせいでもない ふふ 由美さんだっけ あの優しそうな奥さんを 悲しませないためだったんでしょ 先祖が兄弟そろって 女を力づくでモノにして しかも 実の娘や 姪をね 女にとって そんな血が自分に流れてるなんて知ったら ショックだもんね いくら遠い先祖だからって こと細かく具体的に知ったら 耐えられないわ しかも 教師の弟は教え子とデキてて その教え子に殺されたなんて 知ったらねぇ」 「だ だからっ」 「だからぁ 先生は絶対 喋らないってこと」 「う ううっ」 「なに 怖い顔してるのよ でも 安心して 誓いは守るわ」 「え?」 「本当よ あたし 考えたの そして・・・ あたし 彼と結婚して 彼と結婚するけど 子供は生まない 生む前に 前に・・・」 「解った 何も言わん ほやけど 教えてくれ お前 惟義のこと 愛しとったんか 本当に惟顕くんのこと 愛しとるんか」 恵子はコクリと頷いた ワシは もお それ以上 何も言えなかった あの時も 惟義が殺されるのは 解っていた 2度も 殺人が起こることが 解っていて それを 認めてしまっている だが 今のワシには 何も できない 「早かったわね ねえ 私 恵子さん 気に入っちゃった あんな可愛い人 滅多にいないわよ イイ子だし ねえ ねえ 学校の頃 どんな生徒だったの」 「あ ああ おとなしい っていうか 真面目な子だったよ」 「でしょうねぇ シッカリしてるし・・・ ねえ お料理は得意かしら」 「ははは それは 知らんなあ 惟顕くんなら 知っとるかもしれんが」 「私 お料理 教えてあげるの それに お裁縫も それからね・・・」 由美は 無邪気に喜んでいる そういえば 妹が欲しいと 子供の頃から 言っていた やるせなくなった 近い将来 その妹と 実の弟を 同時に亡くすことになるのだ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ これは 何かの間違いだ・・・ 頭がクラクラする 恵子の奴 しくじりやがった 「あ あなた どおしてっ どおして こんな むごいっ」 横で由美が泣きじゃくっている 「ああ まさか こんな・・・」本当に 予定外だった 「あなた せめて せめて この子をっ この子をっ 私たちの手で 立派にっ 立派にっ」 ワシら夫婦は 月に来ていた 惟顕くん と恵子の乗った車が 事故を起こし 二人とも 死亡したのだ 臨月だった恵子の胎内から 奇跡的に 子供が 無傷で 取り出された 女の子だった 事故原因は 惟顕くんの ハンドル操作の不適切 惟顕くんの首には 絞められた跡が残っていたが シートベルトが絡まったのだろうと 無視された 二人とも 胸部を強打したための ショック死と鑑定された 「お気の毒です」仏頂面の警官が説明を終え 挨拶した 途端に笑いが込み上げてきた 「はーはっはっはあっっ ほおかっ ほおやったらええんよっ ははははははーーーーー」 警官は驚いて ワシの肩に 手をかけ ゆさぶった 「だいじょぶかっ おいっ どおしたっ」 「あ あはは す すみません 緊張が一気に緩んで ははは いやはや」 どうにかごまかして 退出した 廊下でも躍り出したい気分だった ほおか 惟顕くんが死んだってことは 呪われた 因縁の血も記憶も 対象を失ったってことや 男の方の血が絶えたんや あの女の子も 自分で自分の首を 絞めるわけにもいくまい なあんだい 脅かしやがって ハッピー・エンドやないか よくやった 恵子 よくやったぞ ハッピー・エンド ハッピー・エンド エエ言葉や 一応 ニコニコ顔をおさめて 由美のもとに帰った 由美は 息子の聡に恵子の娘を抱かせていた 「由美 この子の名前も考えんといかんな」 「ええ あたしも 考えたの 二人の名を合わせて 顕恵にしようかと思って」 「おお エエげ」 軽い気持ちで答え 顕恵に目を遣った 血の気がひいていくのが 自分でも解った 顕恵は 懸命に手を伸ばし 聡の首に両掌を当て 無邪気に悦びの声を上げていた そういや 聡も・・・ (了)
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