空中分解2 #2311の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
13 いつの間にか眠りこんでしまったらしい。さっきから少し眠って、目覚めると何かが 起きて、誰かが死ぬか、傷つくかしている。今度そのパターンが繰り返されるとしたら 私の番だ。しかし、私が目を開いたとき襲いかかってくる人間はいなかった。 時計を見た。午前8時30分。 私は伸びをして、外を見た。 雨が止んでいた。 あまりにもあたりまえの光景なので、私は最初何も感じなかった。次の瞬間、私はそ の光景の意味を理解して飛び上がった。 雨が止んでいる! 私は外へ走り出た。雨は止んでいた。東の空には見慣れた太陽が昇っていた。 心が歓喜で満たされた。大声で笑いだしたくなった。 そうしなかったのは、何かが心に引っ掛かっていたからである。何かが…。 私は空を仰いだ。青空が広がっている。雲一つない。静かな朝だ。 静かすぎる。少し寒い。 不意に私は違和感の原因を理解した。何も聞こえないのだ。 小鳥のさえずりも、枝のざわめきも、もちろん車の音も、人の声も。私の耳がおかし くなったのではない。 再び恐怖を感じた。見慣れた光景が急に、敵意と悪意で満ちているように思えた。 私は突然、恐ろしくなって店内に逃げ帰った。 可能ならばハッピーエンドで締めくくりたいところだが、残念ながらそうはいかない ようだ。もっとも、そうなる可能性も残っていないわけではないが。 店内から1時間あまり外を観察したが、動く物をひとつも発見できなかった。鳥はお ろか、虫さえいない。私は再び原発事故を疑った。もし、強力な放射能のせいで全ての 生物が死に絶えたのだとしたら?しかし、それなら私も何らかの異常を感じているので はないだろうか。 外に見える森林の樹木には何の異常も感じられない。何が起こっているにせよ、植物 はその影響から除外されているようだ。それとも進行が遅いだけで、いずれ枯れてしま うのだろうか。 ひょっとして動物は死んだのではなく、どこかへ行ってしまったのかもしれない。動 物だけでなく、全ての人間も?この峠だけが取り残されたのだろうか。 全ては謎だ。いつかこの謎が解きあかされる日が来るのだろうか。 この手記を書きながら、私は考えている。この峠の周りに異常が発生したのではなく この峠だけが別の世界に移ってしまったとしたら?考えても仕方がないのだが、考えず にはいられない。別の惑星か、異次元か、人類が死滅した後の世界か、超古代か。 あの雨はなんだったのだろう。何の意味があったのだろう。あけみさんが考えたよう に外の世界または状況との境界だったのだろうか。何者かが私たちを救おうとカーテン をひいてくれたのか。だとすれば、あまり役には立たなかった。閉じこめられた私たち の結束はあっけなく崩れ落ち、殺しあい、傷つけあってしまった。私たちが試練を与え られたのだとしたら、恐らく落第だ。 これから私は峠を下る。ナップザックに食料をつめた。バイクのエンジンは動く事を 確認した。大宮と阿部のバイクからガソリンを抜き取って、私のタンクを満タンにして ある。護身用にナイフも用意した。あけみさんが失敗した事を、私はやろうとしている のだ。 何が起こっているのか、この目で確かめなければならない。世界中で安全なのはここ だけかも知れない。それを確認するためにだけでも行かなければならない。この手記は ここに残しておくつもりである。これがいつか誰かに読まれる事があるのかどうかわか らない。戻ってきて続きを書くことになるのかも知れない。 私だけが生き残った。そのことに何か意味があるのなら。それがわかってさえいたな らば。こんなに不安にはならないだろうに。 うまく締めくくる事ができない。中途半端で終える事にしよう。いつか続きが、この 結末がかけるように。それを願って…。 END
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