空中分解2 #2254の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
A PRIEST イア・イア・シュブ=ニグラス! 千の仔山羊を孕みし森の黒山羊よ!! シュブ=ニグラスよ・・・ 大いなる宇宙の女神よ・・・ 我がいけにえを照覧あれ・・・ 詠唱が続く。人間ならざるものたちによって。鬱蒼とした森の奥深く、古び た崩れかけた教会。ここには今、あらゆる時代あらゆる世界を通じてもっとも 忌まわしきものの存在の一つが召喚されている。 目の前にある死体−−−苦悶の表情を浮かべ、いまだに断末魔の叫びを発し ているかのようだ−−−が、かつての私の親友だったとは信じ難いものがある。 なぜこんな事になってしまったのだろうか? 私の廻りには闇からの使者たちが、その冒涜的な姿態をのたうちまわらせて いる。我が友の死を歓んでいるのか、無数に這えた黒い触手を振り回し、異様 な興奮にうめき沸き立っているようだ。いつのまにか数も増えている。20体 はいるだろうか。私はその輪の中心にいる。手の中にある汚れたナイフだけが 唯一の拠り所であるが、仮にこれがショットガンであったとしてもあまり変わ りはない、もう逃れようはないのだ。 そして私の前には未知の巨大な存在が異常な光を放ち、空中に確固として浮 いている。全宇宙を通して最も邪悪なるもの。その吐き気をもよおす光景に、 だが私は魅せられているのだ。死と恐怖に包まれた空間。 ・・・・・ 我々がこの尋常ならざる状況に陥った理由、そして我が親友−−−名をキー ス・アボットといった−−−が無惨にも殺されるにいたった理由とは何か。最 初はただの遊びだったのだ。死と恐怖を探し求めるゲーム。 いつの頃からだったかもうはっきりは覚えていない。我々は<恐怖>を探し 求め、世界中を旅していた。私には祖父が残した、たぶん一生かかっても使い きれないだろうほどの莫大な遺産があり、キースには人を真から震え上がらせ るような奇怪で変わった知識が抱負にあった。そして二人とも時間を持て余し 怠惰で変化のない日常生活に飽き飽きしていたのだ。 砂漠の中に放棄され朽ち果て死に覆われた都市遺跡。原始宗教を再現した呪 いの数々。ピラミッド。悪魔崇拝。気違いじみた姿態の彫像や神秘主義的で暗 い冒涜的な絵画、陰鬱な音楽。いけにえを使い悪魔の復活の儀式を毎週のよう に行なった。皮を剥ぎ、内臓をえぐりだし、血をすすり、腸を首に巻き付け、 死のダンスを踊り狂う。墓を荒らし、動物たちを生きたままミイラ化する。 我々の退廃的な精神は、常により暗い刺激を求め続けていた。 そんなある日キースが古書店から見つけ出してきた一冊の本によって、我々 の闇の領域は突然に広がった。思えばこれは我々に仕掛けられた罠だったのか もしれない。『森の祭義書』と呼ばれるその本は、それまでの二人が想像もし なかったような死と恐怖の世界を、これまで見・聞き・感じてきたことを完全 に凌駕する数々のおぞましさに満ち溢れている世界を与えてくれた。そこには いかな我々でも容易に理解できるようなものはなかったし、仮に理解できたと しても手に負えるようなものでもなかった。そんな中で『シュブ=ニグラスの 召喚』に関する呪文が特に我々の注意を引いた。シュブ=ニグラス。そう、我 々には何の認識もなかったのだ。何の知恵も。そのときには。 シュブ=ニグラスの召喚。必要なものはすぐに揃った。まずいけにえに使う 動物。これは各地の町の牧場から牛を大量に買い込んだ。勘ぐられるようなこ とのないように、私は新しく牧場経営を始めることにし、財力にものを言って 土地を買い付けたることまでした。儀式のための祭壇は既に用意されていた。 町からかなり外れたところから始まる大森林地帯。その奥にある、今では人々 に忘れ去られ倒壊したままに放置されている教会。二人でなんども訪れて確認 した。荒れはて打ち捨てられた墓地。腐れた棺桶には奇妙にねじくれた木々の 根が侵入し死者の骸から養分をすすっている。そこには通常人が想像しうる最 高の恐怖が既に用意されていた。それだけでやめておけば良かったのだ。だが 我々が求めたのはそれ以上のものだった。 物理的な全ての準備が完了し、後は月のない夜を待つだけとなった。だが最 悪の夜はすぐにもやってきた。 血塗られた祭壇。もう10頭は殺しただろうか。祭壇は大量の鮮血によって 清めねばならない。1頭また1頭と今ではほとんど機械的に処理している。例 え牛であっても恐怖を感じることがあるのだろうか? 私は1頭の腸をえぐり 出しながら、次の死を待つ牛の泣き声を、うめきを聞いていた。死と恐怖。我 々が求め追い続けていたものの始まり。 準備が整うとキースはおもむろに召喚の呪を唱えはじめた。はじめは低く弱 い声で、そして徐々に強く、それは奇妙なほどの静寂をもたらしている闇の森 に谺した。彼に合わせて私も詠唱をはじめた。詠唱は徐々に徐々に力を込めら れていった。 イア・イア・シュブ=ニグラス! 千の仔山羊を孕みし森の黒山羊よ!! 腐れ果てた教会の内に外に呪文は響きわたった。私は単調に続く詠唱のなか、 いつしか自らの声に陶酔していた。 イア・イア・シュブ=ニグラス! 千の仔山羊を孕みし森の黒山羊よ!! 声が激しくなっていく。そしてそれが最高潮に達したとき、ついに変化が起 こった。異常な気を感じた。森の奥から。それがゆっくりと近付いてくるのを 感じていた。私の感覚は完璧に研ぎすまされていた。 そして森から現れたもの。巨大な黒い塊。どす黒い紐状の触手。全身に無数 に開いているしわだらけの口からは緑色のよだれをボタボタと垂れ流していた。 狂おしい気。ああ、なんというおぞましさ。巨大なひづめ。黒い仔山羊。この ようなものが存在することが許されるのか。 私は既に後悔していた。ゲームだったのだ。しかしなぜかしら、やめるつも りはなかった。無意識のうちに呪文を唱え続けることだけが唯一助かる道であ るこ とを理解していたからかもしれない。 だが最悪のものはその後からやってきた。この世にあらざる光に包まれて。 あまりに巨大な。短く黒いひづめのついた足。不定型の怪物が宙を浮いている。 冒涜的な。無数の触手。不浄な粘液に包まれた塊。最強にして最悪なるもの。 シュブ=ニグラス。我々はただ呆然と見つめるしかなかった。シュブ=ニグラ ス。ああ、なんということだ。 それは忌まわしくも偉大なる究極の神の姿だった。うめき、のたうち、声に あらざる声をあげ、いけにえの血をすすっていたそれこそは伝説の森の黒山羊。 名状しがたき化物じみたそれは私をじっと見つめていた。いや、見られてい るのを感じたと言った方がいい。なぜならそれには定まった形なぞなかったし、 仮にあったにしても私には認識すべくもなかったから。 七色の異様な色彩のいり交じった光を放つ。私は恐ろしくも奇妙な親密さを おぼえた。 やがて不可思議な光は私を包み込み、徐々に全身が麻痺していっ た。それと同時に身体のうちから奇妙な戦慄と興奮が沸き上がってきた。これ は、一体。私は・・・ 私は・・・ いざという時のため腰に下げていた登山ナイフを取り出した。そしてゆっく りと足を踏み出す。キースはいまだに呆然としていた。低い声で奇妙なたわご とをつぶやきながら。哀れなキース。いみじくも自ら呼び出した恐怖の前に、 理性を失っていた。狂気が蔓延する。 光に導かれるように身体は自然に動いていた。そして、キースのすぐ後ろま で来たとき、私の左腕は彼の首を絞めあげていた。ナイフがゆっくりと確実に 咽を捉えた。横一文字に、深く、掻き切る。鮮血が飛び散った。 ああ、私は・・・ 血まみれの手、血まみれのナイフ。切り込み、ねじり、 指先に骨をまさぐる。どす黒い血液がまだ動く鼓動のリズムに合わせて溢れだ してくる。ついにキースの身体は二つにわかれた。歓喜が私を包む。死と恐怖 と。原初の邪悪なる欲望が。 ・・・・・ 血まみれの手でかつての友人の首を取りあげる。光に掲げる。仔山羊たちが 緑色のよだれを滴らせながら、嫌らしい喚起の声を上げ、黒い身体をのたうち 踊り狂っていた。外なる神。シュブ=ニグラス。今ではわかる。全ては大いな る意志によって定められていた。私は新たなる司祭として選ばれたのだ。闇の 森の奥深く、邪悪なる女神を崇拝するために・・・ イア・イア・シュブ=ニグラス! 千の仔山羊を孕みし森の黒山羊よ!! ああ、シュブ・ニグラス! 我が女神よ! 我がいけにえを照覧あれ・・・ brass −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 何年か前に地元BBS用に書いたのを若干修正したやつです。RPGの最初 のネタふりに使いました。 ほとんどなんかのパロディみたい。
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「空中分解2」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE