空中分解2 #2156の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
俺はいいものを持っている。自慢の逸物だ。太さ長さともに申し分ないが、いち ばんいいのはその堅さだ。やはり若いせいだろうか。悲しいことだが、これもおそ らく、歳とともに軟らかくなっていくのだろう。それならば今のうちにうんと使用 しておくべきだと思う。そして、俺は毎日それを実行している。 どれくらいの数をこなしたかははっきり覚えていない。相当な数ではある。こん なにこなしていると、そのうち妖怪とか吸血鬼みたいなのにぶつかるかもしれない、 と思ったりもする。噂では男の精気を吸い取って何百年も生きる魔女が存在するそ うだ。 まあ、相手が誰であれ俺のを見て同じように驚く。そして、うっとりと眺めるの だ。俺はそんなとき最高にいい気持ちなのさ。 ところで、これが変化したときのことを「怒張する」と表現することがある。つ まり、怒っていると感じているわけだな。俺のにその表現はぴったりだ。だれか言 ってたっけな。 「こわーい」 「まあな」俺は得意になっているが、それを顔には出さない。俺のニヒルな横顔 には気怠ささえ漂っているはずだ。もっとも、俺が有頂天になっていることは、こ れを見れば一目瞭然だろうけどな。 「睨んでるみたい」 その子は恐がってみせた。実際は舌なめずりしているくせに。ふっ、だからいい んだけどな。 「ふっ、そいつはいいや。俺のは睨んでいるかい」 「ええ、怖あい。ギロリって睨んでるわ」 その子は本当にほんの少しだけ不安になっているようだった。まずい。 「ふっ、ばかだな。睨みはしないさ。目なんかないだろ」 「そうね、でも、あたしに大丈夫かしら」 「大丈夫だ」 俺はそう言ってその子の肩を抱き寄せた。 「あん」 その子はそう言って嫌がるふりをした。大丈夫だ。さあて、と。 それから俺はこいつに名前をつけて呼ぶようになった。これだけ愛着のあるもの だし。何しろ極上品だから、名前ぐらいついてても不思議はないだろう。名前は、 もうお分りですね、「ギロチン」である。我ながらいい名前をつけたもんだと思う。 うむ。この名前には勢いが感じられる。 それからというもの、俺は独り言を言うようになった。ように思われているが、 とんでもない話だ。俺は独り言など言っていない。俺はギロチンと話しているので ある。 話す、というくらいだから、もちろん一方的な会話ではない。ちゃんとギロチン も意思表示をする。さすがに口数は少ないが。基本的には上下運動での返事だ。下 の方に垂れているのが上にグインと一度起き上がるとイエス。垂れたままだとノウ だ。後は膨らんだり萎んだりだな。ゆくゆくはモールス信号を教え込んで高等会話 にチャレンジしたいと思っている。したがって、現在のところ、会話の内容は単純 なものに限られている。主に異性関係だな。いい、わるい。できる、できない。イ エス、ノウで十分間に合う内容だ。ギロチンはその種の会話に実に的確な判断を下 してくれる。頼もしい。理性に縛られている俺より、ギロチンの生理的な判断の方 がよっぽど正確なのだ。 「なあ、あのこいいじゃないか」 俺がそんなふうにギロチンに話しかける。 ギロチンは微動だにしない。 「そうかなあ、いいと思うけどなあ」 無反応のままだ。 「それじゃあのこはどうだい」 ギロチンが少し反応した。何かしようとしている。 「なんだい。いけそうかい」 ギロチンが雄々しく立ち上がった。 「よし、わかった。声をかけてみるか」 ってな具合。 ある夏の日、俺はその女に出会った。ギロチンの意見はノウだった。だが、俺は 珍しくその意見を無視した。それほどとびきりの女だったのだ。まあ、失敗しても 不思議はなかったが。だが、その女はにっこり微笑んで頷いたのだ。オオ、ハレル ーヤ。俺たちはホテルに直行した。だがだが。 「まあ、すごい」 その美女も、俺のギロチンを見て、やっぱりそう言った。だれでも同じだ。 「まあな」 「こんなのはじめて見たわ」 やはりな、かなり知っているのか。 「そうかな、睨んでいるようだろ」 「本当ね。睨んでるわ」 「まあな」 で、いつもと同じね。 その途中、女は不意に目を開け俺を見た。さっきとは別人の鬼のような顔だった。 俺はおおいに狼狽えた。なんでそんなに平然とした顔をしているのだ。なんという ことだ、俺のギロチンが効かないなんて。ショックだ。 「ど、どうしたんだい」 「ふふ、あたし魔女なの」 「なんだ、魔女か」 俺はほっとした。ギロチンが効かないのも無理はない。驚く気持ちよりは安堵の 気持ちの方が大きかった。 「じゃあ、切るわね」 そう言って魔女は陽気に笑った。 「え、なにが」 「なにがって、あなたギロチンなんでしょ」 「なんで知ってるんだ」 「あたしは魔女だって言ってるでしょ」 魔女はそう言って俺に何か呪文をかけた。 「がんがんがんがんがんがんがんがんがんがんがんかん゛かん゛かん゛がががか ん゛が゛がががん゛かん゛゛んがん゛んかん゛ん゛かんんがん゛んがんん゛んかん んが゛がん」 俺は大ショックだった。 「鳥ょ鳥ょ鳥ょ鳥よ、鳥の歌、」 「切っちゃえ、チョッキン。切っちゃえ、チョッキン。チョッキンな」 「はー、チョッキン、チョッキン」 何だか分からない。 「あっそぉれ、はい、はい、はい、はい」 「はいやっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、」 「はいやっ」 「ほいっゃ」 言われてみると、たしかに首があった。ギロチンできる。 そして、俺のギロチンは本物のギロチンにかけられることになった。判決は死刑 だったからだ。興奮した民衆が叫んでいる。ギロチンの死を願っているのだ。お前 えはそんなに悪い奴なのかい。俺のギロチンは、顎の下の首のところをしっかり固 定された。チョッキンな。スッパリ切断。ギロリと睨むのさ。ギラリと閃くギロチ ンの刃。落下音。ガラガラガラ。はー、チョッキン、チョッキンな。 というわけで、俺の逸物は普通サイズになることができたのである。俺はさっぱ りしてニコニコだ。サンキュー、魔女さん。 おわり
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「空中分解2」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE