空中分解2 #2137の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
春男と安男はぶつぶつ言いながらも木須山の宅の前で自転車を止めた。 自転車を家の横に止めて、すぐには玄関に入らず汗を拭いていた。 春男は安男に、暑いなあ全く暑い、言いながらにこにこしていた。安男も割合気分 良さそうな顔をしてにこにこして居た。 「こんにちわ こんにちわ」 「先生は居ますう? 丁度前を通り掛かったものですから」 「あああ今朝来た、あの春男君と安男君、いらっしゃい」 「先生、居るかなあっと思って」 「ああうちのひとっ、そこで遭いましぇんでした?」 「いえ、遭いませんでした」 「さっきそこらを、キャンプの会合が有るとか準備があるとか言ってね」 「一足違いだったかな、それにしても何を誉めれば好いんだ。」 「主人はそこいらに潜り込んで居るんでは無いかい。」 木須山の奥さんは案外乱暴に春男達に答えていた。それにしてもガランとした 家の中を見て二人は何を誉めていいのかすぐには思い付かなかった。 「しかし、何ですね、こんなに何も無い家ってのは無いですね。何か有るもの ですよ。人間の家には何か置いて有るものです。全く感心です。」 「何が・・・えっ・・・」 「大抵の家には箪笥とかテレビとか扇風機とか有りますよ。それに畳、タタミが こんなにまんべんに擦れ切れるまで使われているのは凄いです。」 「ほんとにまんべんに擦れ切れています。これは表彰ものです」 「大抵は絨毯を敷くとか畳の上だけでも替えるとかするものだけどねえ」 「辛抱強いと言うか我慢強いと言うか、春男では真似できないだろうなあ」 「うんうん、きっと安男だって出来ない。」 「6畳間が6畳に使われているのも真似できないね。普通は家具などで4畳半に 成ってしまうんだけど、ここは並の努力じゃ無いね。」 「あっ、安男君、あそこにゴキブリがいるじゃあ、動いているよ。」 「ゴキブリも養っているんですか。それも丸まると太っているよ」 「うひゃあ、ゴキブリに艶が有るねえ。何喰わせて貰ってんだろう?羨ましいよ」 「君達、何をもたくそ言っているんだよう」 「何をって・・・ええええっと・・・」 「ここは好いとこだなあって」 「何をバカなこと言っているんだよう、肩で息しているだよう、肩で・・・ 」 「えっ・・・」 「よく見ろよ このからだ・・・」 「えっ、はああ・・・」 「来月ねえ、飛び出すんだよ。」 「飛び出すって? えっ」 「ああ、子供産むの? 」 「ああ、そうですか、お宅の大将働き者ですね」 「いえ、これは家の旦那の働きじゃ御座いませんの、若い衆が寄ってたかって 作ってくれたようなもの」 春男と安男は一瞬笑いそうになったが、何だか理解できない気分のまま、暫く ぼおっとして居た。 「はあ、よおく解りました。ご主人に宜しくお伝え下さい。またの機会にでも 来ますから」 「そですか、じゃあまた何時でも寄っていって下さい。」 「じゃあお大事に。」 春男と安男は狐に摘ままれたような妙な気持ちに成ったが、無事木須山の願い を果して宅を後にした。両方とも少し酔っているのか、公園の中に自転車を引っ 張りながら歩いて入って行った。 二人は公園の中の大きな木の下で休んでいると、安子が通り掛かった。 「やややあ、安子ちゃんじゃ無いの、何処行くの」 「春男君と安男君か、二人揃って何しているんじゃん、顔が赤いじゃん。」 「少し、ビールを飲んだんだ。」 「少し休んで行けよ、風が吹いて涼しいから。」 「あのね、社長の家の庭で夕方から、あいのバーベキュ大会をするんだって」 「おっ、それで」 「今から炭を買いに行くとこなの」 春男と安男は自分達も参加しても好いのかどうか不安に成った。 「それでさ、どんな連中が集まるんにゃ。」 「勿論従業員労働者だよ、今頃社長等一団は九頭竜川であい釣ってるよう」 「そなら、夜さりに成る前に行くわ」 風が木の下を通り抜けて涼しい。あいの塩焼を思い浮かべるだけで、すきっとした 食欲が出て来て・・・、ビールをううう・・・たまらんなあ。 春男と安男は別人になったような爽やかな気分で家に戻って行った。 ***** 完 ***** この作品は角川文庫の古典落語(2)落語協会編の中の「町内の若い衆」を 参考にして書きました。
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