空中分解2 #2062の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「やめろ! 何をするんだ!」 僕は、寝ていたのだが、その声で目が覚めてしまった。 いや、そんな事は、ほんのささいな……。 それよりも、何よりも、今の僕の現状が問題だった! 今は深夜で、僕はベッドでちゃんと寝ていたのだが、何としたことか、今は僕の胸の辺りに、大男が乗っていた! しかも、いつの間にか、僕の首にその男の手が掛かっていて、ゆっくりとだが、ぐいぐいと確実に締め付けている。 ……道理で息が苦しいと思った。 いや、そんな事、納得している場合じゃなかった! その男はどうも変だった。いや、ここに存在する自体、おかしいのだが、先刻の『やめろ! 何をするんだ!』の台詞は、この男のものだった。 冗談じゃない。『やめろ! 何をするんだ!』の台詞を言いたいのは、こっちだ。 大体、僕自体は何もしていないのだから、このいかつい感じの男にそんな台詞を言われる覚えはない。 そんな理論的な事を考えている間に、その男はますます僕の首を締め付けた。 このままでは死んでしまうのだから、僕もその男に対抗して、そいつの首を締め上げるしかなかった。 妙に面白いので、そいつと同じ台詞を言ってみた。 「やめろ! 何をするんだ!」 こんな状態なら、この台詞がピッタリくる。 僕はそう叫びつつ、男の首を掴み、締めた。勿論、男も手を緩めやしない。 その男、大柄だったけど、指の力は余り強くなかった。 僕は、バイトはやってるしピアノもやっていたので、握力とかは強い方だったから、幸いだったけれど、その男との握力は、客観的に見て、まあ五分五分。 僕も本気にならないと危なくなって、うめき声と例の台詞が交互に口から洩れた。 相手の男の恐ろしい形相さえも、目がかすんで見えなくなって来た。 大体、どうして僕がこんな目に会わなければならないんだ!? 僕は、ほんの少し怒りを覚え、最後の力を振り絞って、手に、指に、節に力を入れた。 一瞬、気が遠くなって…… 「やめろ! 何をするんだ!」 突然、唐突に声が聞こえた。 は? あれ……? 今のは僕の声じゃないか! どうやら、無意識の内に、例の台詞を連発していたらしい。 息が苦しい感じが消えていた。 その代わり、僕は見知らぬ男の胸の辺りに乗っていて、その男の首に手を掛けていた。 僕自身の立場は今や、完全に逆転している。 多分、さっきの僕の叫び声で起きたのだろう。 僕と同い年ぐらいの男−−少年は、今やはっきりと目が覚めているようで、しばし、驚いたように僕を見つめていた。 そりゃそうだろうな。寝てるところを起こされたようなものだし、僕だって驚いたんだから。 −−こいつには何も罪はない。 僕は一瞬、そう考えた。しかし、一瞬だけだった。 先程、首を思いきり締め上げられた時の怒りがメラメラと込み上げてきた。 まだ、首の辺りが痛いし、喉がゼイゼイする。 ……この怒りはこいつの他に持って行きようがない。 僕はその男の首を握っている指、数本に微かに力を込めた。 それに。 これはリレーのようなもの。 いわゆる、繰り返し。 それならば、反則などせずに、ルールを守っていかなくてはならない……。 −−それはともかくとして、僕はさっきの怒りを抑えきれずに、思い切ってその少年の首をゆっくりとだが、ぐいぐいと確実に締め付けた。 リレーのルール通り、その少年の口から、 「やめろ! 何をするんだ!」 と、言う台詞が聞こえてきた……。 end
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