空中分解2 #2014の修正
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十和田湖を源とする奥入瀬渓流は、観光の名所として知られているが、昔は そうでもなかった。昔は景色どころではなく、旅人にとっては難所のひとつだ った。 渓流の中ほどに、「石ケ戸」とよばれる岩屋があって、そこに美女が住んで いた。旅人を遠くに見つけると、彼女は渓流で洗濯を始める。猛暑は北国でも かわらない。半裸姿で布を干しはじめるころ、旅人は近付いてくる。素朴な田 舎ことばで会話がふたことみこと。 汗をふき、渓流の水を飲もうとする旅人に 「休んでいきな!」と彼女 湯茶の支度をはじめる女の白い肌を、ニヤニヤしながら旅人は眺めている。 女の腰巻きがはらりと落ちた。 たいていの男は、若い女の誘惑には勝てない。深い山の中だ!誰も見ていな い! 女ひとり、という油断もあって、ほとんどの旅人は、彼女の誘いに乗っ た。ヌードの美女に男は我慢できない。ひとりとして、旅人は彼女の湯茶を飲 んだ者はいない。 ノドに歯型のついた全裸の男の死体が、一つまたひとつと 渓流を流れていった。 彼女の生計は、男のすべてを奪うことで、成り立っていた。しかし、永くは 続かなかった。行方不明者が増え、下流に死体が15〜6も流れつく頃になっ て、彼女は捕らえられて、磔になった。 彼女の名は「鬼神のお松」という。 1992−08−02 遊 遊遊遊(名古屋)
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