空中分解2 #1955の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
第1夜 目覚まし時計は朝7:00きっかりに鳴り始めました。軽快な“ラバーズコン チェルト”を奏でるはずの電子音は、電池が足りないので緩み、捩れ、速度を 変えながら狂った旋律を巻散らしました。アラーム音は20分も狂い続けて他 人の手で消されました。それは突然の侵入者で、目に残る黄色のワンピースを 着た年をとった女で十分に狂っていました。袈裟掛けにしたバッグから汚い手 でごそごそと新札で1万円の束を取り出し、寝ている私のほうを叩きました。 ぱしゃ・ぱしゃ・ぱしゃ・・ 札束がほうに当たるたびに、ぷわんとお金の 匂いがしました。目覚めると女もお金もなくなっていましたが、狂いに狂った “ラバーズコンチェルト”はまだ続いていました。 第2夜 その夜。黒いコートを着た、丸坊主の女に追われていました。 私はデパートの2階に逃げ込みました。吹き抜けの店内だったので、階下から 私の姿をみつけた彼女は、エスカレーターでこちらへ来ました。でもそれは下 りのエスカレーターだったので、彼女はぶざまにひっくりかえりました。その 拍子に脱げたコートの下は、すっ裸でした。 追われている私も、逃げたらいいのに目が離せないのです。彼女は脱げたコ ートを気にもとめず、またこちらに来ようとして、先程と同じようにまた激し くひっくりかえっていました。今度は彼女の丸坊主の頭が、首の半分あたりか らスパッと切ったように落ちてしまったのです。女はマネキンでした。女のカ ラダは素晴らしく均整がとれていましたが、手、足など、体の部分にツギメが あって、つるつるした、白いマネキンなのでした。頭を失ったマネキンは、も う狂ったように下りのエスカレーターを、駆け登ろうとしてはひっくりかえり、 半ばまで登っては転び、また駆け登ろうとしては転び、すぐ立ち上がり足をか けてひっくりかえり、こんどは四つんばになって登ろうとして落ち駆け登ろう としてはひっくりかえり、半ばまで登っては転び、また駆け登ろうとしてはこ け、すぐ立ち上がり足をかけてひっくりかえり、こんどは四つんばになって登 ろうとして落ちて・・・・・・・ 第3夜 海も空も燃えるようなオレンジに潤む夕暮れ時に、私たちの潜水艦は壊れて沈 みかけていました。艦内はショートして真っ暗で、“非常口”のグリーンの明 かりだけが空しく光っているのでした。警報ブザーが鳴り響く中、泣いたり駆 け回ったりしている私たちは、なすすべもなく閉じ込められたまま絶望的に沈 んでいくのでした。艦内には窓がなかったのに、私は目覚める前の一瞬、夕焼 けを見たような気がしました。(どの辺が悪夢かというと、その警報ブザーの 音は職場で使用している呼び出しブザーの音だったというトコです。) 第4夜 谷を吊り橋で渡っていました。吊り橋の下は恐ろしくでっかいトゲトゲの、い ばらが茂っていました。谷は闇といばらで、一番下まで見えないくらい深いの でした。 「下を見るなよ。足がすくむぞ。」 先頭を若い男性、次に中年の女性、それから私、中年の男性、最後にもう一人 の6人で吊り橋を渡っていました。全員私の知らない人でした。吊り橋はとん でもなく古い代物で、綱はぼろぼろになっていました。足元だけに気をつけな がら、歩きました。 突然。“ばりぃ”と凄い音をたてて、私の前の中年の女性が橋を踏み抜きまし た。木が腐っていたようでした。あっと思う間もなく、彼女の体は谷底へ転落 しました。「下を見ちゃだめだ!」 先頭の男性が叫びましたが、私は見てしまいました。 女の人は1メートルくらい下の、いばらの刺に引っ掛かってそこにいました。 そこらじゅう血だらけにして、ほほ笑むような懇願するような目で、その人は 私を見ました。思わず私は手を差し伸べました。女の人が私の方へ手を伸ばそ うとした途端、彼女は数メートル下に落ち、また刺に引っ掛かって止まりまし た。もう誰にも助けることはできませんでした。見ているうちに、ぱきり ぱ きりと、いばらの刺に引っ掛かりながら、闇の中に落ちていきました。ほほ笑 むような懇願するような目で、谷底に消えるまで、その人は私を見ていました。 第5夜 ある日、南の島。私と友達はトウモロコシ畑の真ん中の、窓が6つあるプレハ ブ小屋に立てこもっていました。時々窓から、ニューギニアの面のようなもの をつけた土人が、こそこそと中を覗きこんでいました。しばらくすると兵隊が 10数人なだれ込んで来ました。 「ここは軍で使用することになった。民間人は外にでなさい。」 武器をもった彼らに、女2人では抵抗もできません。私たちは土人の待ち受け る表に出ました。 プレハブ小屋からでた私たちが見たのは、たった5人の土人でした。5人は遠 まきに私たちを見つめていました。彼らは槍をもち、腰蓑をまとい、例のニュ ーギニアのでかい面をつけ、昔の漫画の“人食い人種”そのままのいでたちを していました。しかし、その目は血に飢えるでもなく、興味深々というわけで もなく、何を考えているのか全く分かりません。ふと見ると私の足元に同じよ うな土人が1人、転がっていました。「死んでるのかな」と思ったら、突然私 の足首を掴んだのです。驚いて引っ張ると、すぐ手は離れました。かれもやは り何も考えない目をしていました。3人の土人が寄って来ました。いっそその 槍で私たちを脅して、縄で吊して運んでいったなら、どんなに良かったでしょ う。私たちに近寄ったものの、槍を突き付けるでもなく、ただただ近寄っただ けのようでした。私たちは困りましたが、彼らが攻撃してこないので、とりあ えずこのトウモロコシ畑から出ようと思いました。かれらに背を向けて、私た ちはトウモロコシをかき分け、歩きはじめました。すると5人の土人も私の後 をついてくるのです。無言で、私たちのあとをついてくるのです。友達は泣き ながらトウモロコシをかき分けて歩きます。うしろをべそをかいた私と5人の 土人が無言で、一列になって、えんえんと歩いていくのでした。 おわり
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