空中分解2 #1937の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「老けてるなー!」 シジュウカラは、鏡を覗き込んで、そこに映った自分の姿に思わずそうつぶ やいてしまった。頭は真っ黒で、頬がまるでホオジロのように白く、胸から腹 にかけて黒いネクタイ状の縦線があった。シシュウカラは哀しくなって、シー シー、ジュクジュクと鳴いた。 俺の人生ってなんだったんだろうか。シジュウカラは自分のこれまでの半生 を振り返った。幼い頃は本当に楽しかった。毎日、街で元気に遊んだものだ。 歌もよく唱ったものだ。よい子が元気に遊んでる楽しい楽しい歌の街、電気は ピカピカピッカリコ、時計はチクタクボンボンボン。おててをつないで野道を 行けば、みんな可愛い小鳥になって、歌を唱えば靴がなる。もっとも、野道を 行かなくても小鳥だったけれど。 しかし、学校時代は勉強をなまけてばかりいたから、よく教師たちに叱られ たものだ。鞭でビシバシひっぱたたく先生もいたが、あの先生は本当におっか なかった。えーっと、あの先生は誰だったかな。あっ、思い出した、スズメの 先生だった。スズメのガッコのセンセーはムーチを振り振りチーパッパだもん な。俺はなまけもののくせに、将来への希望だけは大きかった。いろんな夢を 抱いたものだ。でも、どの夢もすぐに消えていった。夢は飛ばずに消えた、生 まれてすぐに壊れて消えた。 シジュウカラは自分の半生を回顧しながらちょっと反省した。自分の半生そ のものだけでなく、手許の童謡の歌詞に安易に頼って回顧している自分の態度 をも反省したのである。そうなんだ、いつも既成のなにかに頼って生きている んだ。自分の目で見ること、自分の頭で考えること、自分の言葉で語ること、 そして自分の足と手で人生を創っていくことをすっかり放棄してしまっている んだ。シジュウカラは、鏡の中の老け込んだ貧相な自分の姿を見ながら、また シーシー、ジュクジュクと鳴いた。 シジュウカラは、その進むべき道を予め神の意志によって定められ祝福され てはいなかった。自ずから光り輝くような非凡な才能などなかったのである。 明確な目標など持てない段階で選択と決断を迫られ、しかたなく「既成の極め て限定された実現可能な選択肢」の一つをなんとなく選び取るようなことを何 度も何度も繰り返してきた。選択肢の枠を広げて考えることも、より高い目標 に向かって懸命に努力することもしなかった。 いま、シジュウカラはある会社に勤務している。この会社を選んだのもなん となくであった。職場での毎日の仕事はとても単調なものであった。毎日、仕 事のために枝先にぶらさがったり、逆さまになって虫を追いかけたりの単調な 繰り返し。鳴呼、なんて単調な毎日なんだろう。もっとも、それは仕方のない ことであったけれど。だって、彼の会社の経営者はタンチョウヅルだもの。 シジュウカラは現在の生き方にすっかり嫌気が差した。一度しかない人生を もっと充実したものにしたいと思うようになったのである。そんなとき、カッ コウがシジュウカラに脱サラして一緒にレストランの経営をやらないかと持ち 掛けて来た。シジュウカラはこの話にとても心を動かされた。彼は、そのとき ちょうど40才になったばかりだった。シジュウカラは、「四十から一旗揚げ るか」なんて考えたりした。 しかし、資金繰りのめどはなかなか付きそうもなかった。それにレストラン の経営なんて、シジュウカラ自身はもとより、相手のカッコウも全く未経験で あった。家族は猛烈に反対した。シジュウカラとカッコウ(別名は閑古鳥)が 経営するお店に客が来るわけがない、いつもガラガラに決っていると言うので ある。そして、この物語の駄洒落はまだ続いた。優柔不断なシジュウカラは迷 いに迷ったが、孔子の「論語」を読んだ結果、その迷いが吹っ切れた。えっ、 どうして「論語」を読んだら迷いが吹っ切れたのかですって。論語にこんにな ことが書いてあったんです。「三十にして立つ。四十にして惑わず」と。三十 代のときならともかく、四十にもなってあれこれ迷うのは止そうとシジュウカ ラは考えたんです。 脱サラを諦めた日、シシュウカラはなんだか哀しくなって、シーシー、ジュ クジュクと鳴きました。そして、独り寂しく口ずさみました。シャボン玉消え た、飛ばずに消えた、生まれてすぐに壊れて消えた…。
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