空中分解2 #1919の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
一 町田小学校は、市役所の近くで商店街をぬけたところにあった。市役所通り には、5メートルおきくらいにプラタナスが、そして校庭の周りには桜が植え られていた。プラタナスの葉が9月のそよ風にゆれていた。夏休みもあけて、 元気いっぱいに日焼けした生徒達がまた学校に戻ってきた。 四年三組の教室に、受持ちの橋本先生がガラリと戸を開けて入ると、それま で騒がしかった教室はしんとなった。橋本先生は新しいクラスの仲間を僕たち に紹介してくれた。 「広島県の奥からやってきた森本マリオ君です。みんな仲良くしましょう。」 マリオは背は高い方で、がっしりしたからだつきの男の子だった。次郎はマ リオのまなざしにこころひかれるものを感じた。まるで水平線の遠くを見てい るようなまなざし。今までのクラスメートとは全く違った雰囲気があって、次 郎は何かを期待しないではいられなかった。 マリオが転校してきてから一週間ほどたった頃、ゴンタは顔色をかえて 「おい、マリオ、おまえユリコとマリのどっちが好きになった?」 とつめよった。 「どっちもかわいいじゃん。」 マリオは平気な顔で言った。 クラスの女の子達の間で、にわかにマリオの人気が上がり、がき大将のゴン タは不安になったのだった。ゴンタがマリに片思いをしていることはクラスの 誰もが知っていた。 マリとユリコはクラスの男の子達の間では人気の1、2位をしめていた。マ リは海水浴やプールでアンパンのように日焼けしていたが、瞳(ひとみ)が大 きく足の長い、ちょっと妖精のようにも感じられる女の子だった。一方のユリ コはおさげ髪のかわいらしい、ひかえめな子だった。 マリはこの転校生を「まぁ、きらいなタイプではないけれど」くらいの気持 ちで初めのうちはみていた。が、2学期初めにあったアチーブテストでマリオ があっさりとクラスで一番の成績を取ってからというもの、自分の心が穏やか でなくなるのを感じた。マリもそこそこの成績なのだが、自分より頭のよい男 の子に、これほどひかれる自分に意外な思いをさせられたのだ。 一方、次郎は次郎でマリオにますます気をひかれるようになってしまった。 そのわけは2つある。1つはザリガニ。マリオは教室のすみで飼われているザ リガニをよくながめていたが、えさをやるでもないのにマリオが近づくだけで クラスで飼っているザリガニたちが、まるで喜んでいるかのようにさわぐとい うこと。 2つめは教室のすみに立っているはち植えの幸福の木が、マリオが近づくたび に葉をゆらすように思われたことだ。こういうことがあって、次郎はマリオの ともだちになりたくてしょうがなくなっていた。 ある日、マリオが算数の時間にちょっとほかのみんながしないような質問を して先生を少しまごつかせた。次郎はこのときとばかり、休み時間にマリオに 声をかけた。 「ねぇ、教えて」 幸いなことに次郎とマリオは学校からの帰りがぐうぜん同じ方向で、二十分ほ どいっしょに歩いて帰るようになった。 はじめのうち次郎はほかの友達とす るように、にぎやかにおしゃべりをしていたが、2人のあいだで口に出してか わすことばは、だんだん少なくなっていった。一方があることを話すと、2人 とも同じ方向へしばらく考え、その間、2人はそれぞれ考えている。そしてど ちらかがまたしゃべりだしても、2人の間では何事もなかったかのように話が 進むようになっていった。教室でたまたまユリコがそのようすをみて、 「あれーっ、次郎とマリオったら、だまっちゃってどうしたの?」 と声をかけたが2人ともそれには答えなかった。 次郎は、本当はザリガニや幸福の木のことが聞きたくてしかたがなかった。 が、マリオの家をたずねたとき、そこで飼われていた手乗りのセキセイインコ のピースケのしぐさを見て、もうあきれはててしまった。次郎がマリオに貸し た「コータローの冒険」という、最近評判の物語をマリオが読んでいると、か れの左肩にとまったピースケはマリオのまなざしを見つめては本をのぞき込み 、首をかしげてはまたそれをくりかえすのだった。 橋本先生はどういうわけか、しばらくして席替えの時にマリオをマリのとな りの席にした。ゴンタのしょげかえったようすといったらなかった。 次郎に は女の子の気持ちはよくわからなかったが、それまで女王のようにふるまって いたマリはマリオにそのころはもう夢中になってしまっていた。 普通なら授 業はまじめに聞くマリともあろうものが、休み時間と言わず授業中と言わず、 機会を作ってはマリオに話しかけずにはいられなかったのだ。それにマリは自 分が他の男の子たちにとっては「妖精」であることを充分知っていた。。自分 のとなりにいるマリオはそのことに気が付かないのだろうかと、隣の席から 「私いま何を見ているか当ててごらん」などと言ってマリオに自分の顔を見さ せたりするのだった。でも残念なことにマリオは平然としているふうだった。 二人のうしろの席にいたハジメは職員室で橋本先生に 「マリのやつマリオにすっかりまいってる。」と報告したくらいだ。しかし、 マリオ本人の気持ちは誰にもつかめなかった。 .
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