空中分解2 #1870の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
ご入会は18歳以上ならどなたでも。 ご入会手続きは、とってもカンタンです。 日本で海外でお気軽に、らくらくキャッシング。 まとめ買いにとっても便利で安心なリボルビング払いもOK! さらに、メンバー様だけの使って楽しい特典がいっぱい! ワンランク上をめざすあなたを応援します。VIP「ハサン・カード」。 中谷美和は、そんな広告に釣られて尺八短期大学在学中の19歳の年、大手信販会 社の「ハサン・カード」を取得したのです。友人達も学生とはいえ、クレジットカー ドの1枚や2枚は常識となっていました。 しかし短大在学中はそう頻繁にカードで買い物をする事もなかったのです。服やア クセサリーなどを揃えるのに、ごくたまに利用する程度でした。むろん、友人達との つきあいもあるにはあるのですが、しょせんは学生。気のあう仲間でミナミに出て騒 ぐ程度でした。そしてカレと食事に行けば必ず払ってくれる。ホテル代だって当然! だから、毎月の支払額はチキンを専門に扱うファーストフード・ショップ「オタッ キー」でのアルバイト収入(時給820円で月60000円ほど)で十分まかなえる のでした。 去年の春。彼女は無事に短大を卒業し、「ラブリーデパート」に入社。就職を期に 彼女は、両親の出資でマンションを借りました。しばらくはなれない一人暮らしと、 新人研修とで毎日忙しい日々をおくっていたのですが、6月にはいると会社の雰囲気 にもなれ、親しい友人も何人かできました。 「中谷さん。佐藤さんと町田さんとかと、おいしいイタリア料理を食べにいくんだけ ど。一緒にどぉ?」 このように誘われると断れないたちの中谷美和は、よくつきあいます。女どうしの 場合は、彼女が全員の分を支払うこともしばしばありました。誘われたい為の見栄も 手伝ったのかも知れません。 彼女はアフター5をハッピーにエンジョイするために、服も次々に揃えました。短 大時代と違って、通勤時も制服というわけにはいきませんので、毎日の洋服代も自然 とかさみます。 「いつも同じスーツでいい男の人がうらやましいわ」 と、思いながらも洋服を揃えることに余念のない彼女でした。一人暮らしになって、 いままで使っていた家具を運び込んだのですが、少々古くさい。そこで彼女は思い切っ て新しい家具も揃えました。新人OL風情には、身分不相応な消費です。 しかし、今、彼女には有用な武器があります。中谷美和のウェポン。それは「貢ぐ 君」ではありません。その名は、クレジットカード。今や彼女の加入するカードは 「ハサン・カード」一枚ではなく、「キケン・カード」「アブナイ・インターナショ ナル・カード」「ヤリマン・カード」「エイズ・カード」「デス・カード」とうなぎ 登りに増えていくのでした。 しかし、信販系カードを使えばリボルビング払い(なお、リボ解禁によって現在は 銀行系カードにも認められています)が可能なため、限度額以内ならば次々に買い足 すことができました。 そのような彼女にも少々、負担が重く思えるようになってきたようです。月額一定 で3万を支払っているのですが、それが2枚・3枚となるとさすがに苦痛です。現在、 彼女のひと月の返済額は12万にまでふくれあがっていました。ちなみに中谷美和の 手取りは17万5000円。ほぼ、ぎりぎりの生活であります。 しかし、彼女にも当然算段はありました。ボーナスです。夏にはボーナスが支給さ れる。それで生活は楽になるだろう、と彼女は期待していたのでした。だが、本当に そんなにバナナのように甘い考えで世間を渡ることができるのでしょうか? 中谷美 和は、かわいい顔をして世間をなめきっているのではありますまいか? 読者諸君! 話を進めることにしよう。結論からいえば世間は、バナナやホルモン焼き、はたま た肝油のように甘くはありませんでした。6月の下旬、彼女は同僚から、 「ねぇ、夏休みさぁ、紀子や恵子さそってフランスに行かない? 私のカレが旅行社 にいるから格安で行けるのよ。どぉ?」 彼女がこのような言葉に弱いのは、前述のとおりです。今回特に彼女の胸に響いた のは「格安」という言葉でした。彼女は、その場の雰囲気もあり快諾しました。 「ホント? ステキ! 一度行ってみたいわぁ」 ところが、帰宅して彼女はふと金の算段を思いだしたのです。現在でも支払でぎり ぎりの生活です。そのうえ旅行。・・・ボーナスといっても入って間もないのだから 大して出ないし。・・・貯金なんてあるはずもないし。・・・住宅ローンにぴーぴー いっている親に頼むわけにもいかないし。・・・まさか、サラ金なんて。・・・と、 悩む彼女にひらめいたある宣伝文句。 「そうよ! カードキャッシングを利用しよっと! あれなら安心して借りられるし、 大丈夫よね。きっと」 中谷美和は、次の日さっそく駅のキャッシングコーナーで50万円を「キャシング」 しました。カードをいれて、機械を操作するだけ。簡単なものです。 「よかったぁ簡単に借りれて。でも、冬のボーナスで返せるようにしないとヤバイなぁ 」 律儀に返済の算段(とらぬ狸の皮算用って奴)をするかわいい彼女。抱きしめたく なる。 ところが、短大まででたのに彼女は、大きな誤りを犯していたのです。「キャッシ ング」という軽い言葉についつい、借金をしてしまいました。そう、「キャッシング」 といっても所詮「借金」。利息がつくのは明白。彼女がもう少し、「これは借金なの だ」という自覚を持ち、計算高かったならキャッシングの利息が、一般的な「サラ金」 の利息よりも、むしろ高いということに気づいたはずです。ただ、簡単に借り入れが できる、というだけで泥沼に落ち込んでいく中谷美和。 無事にボーナスも出て、旅行もいってきました。パリ、コートダジュールと旅行を 満喫した彼女の借金はすでに100万を越えていました。外国でブランドもののバッ クやアクセサリーを買いあさった結果でした。 来月の返済額は、30万を越えるでしょう。中谷美和は、旅行から買えるとさっそ く新しい「ヤバイ・カード」に入会し、そこからキャッシングをして毎月の返済の穴 埋めにあててゆきました。ところが、穴埋めをすればするほど借金は増え、ついには 毎月40万以上の返済です。いくら借金しても足りません。足りるわけがないのです。 クリスマスも近づいたそのころになってようやく彼女は、自分の立場を理解しまし た。新聞を見れば「自己破産急増」の記事。人事でないようで不安を隠しきれません。 当然、冬のボーナスも返済にあてるほかありません。 しかし現在、もう彼女の返済額よりも利息の膨らみの方が大きくなってしまってい るのでした。つまり、このままではいくらたっても完済できないのです。 中谷美和は、魅惑的な唇を震わせながら考えました。 考えて、考え抜きました。 やがて、あった、いい考えがありました。彼女は駅前でもらったティッシュの広告 を思い出しました。 短期先物投資・・・わずかな資金でがっぽり回収。景気の減退する今だからこそ、 狙う! キャリア豊富な専門スタッフが逐一情報と指示をさしあげます。さらに、元 金保証保険もあって、経験のない方でも安心! 有限会社ドロン商事 「よし、これよ。これでいくしかないわ。競馬なら何度かあてたことあるし、わたし 結構投資には向いているかも。・・・」 彼女はさっそくドロン商事に電話をかけました。 翌日、営業マンが彼女のマンションを訪れ、いろいろと説明をしました。彼女はそ んなことは上の空で、とにかく短期にまとまった金をつくりたいと営業マンにはなし ました。 「任せてください。われわれのデータと技術を最大限ご活用くだされば、一カ月で3 倍や4倍は堅いです。えーと、それでは信用取引の保証金としてとりあえず、200 万円を納めていただけますか?」 彼女は契約書に署名・捺印をすると、新しくつくったカードや、アクセサリーを質 入れしてなんとか200万をつくり、ドロン商事に支払いました。 さて、一週間がたちました。情報誌もおくってきません。あれ以来電話一本ありま せん。 「おかしいなぁ。相場に変動がないのかしら」 そう思いながらも彼女は待っていました。しかし、ある日の夕刊に「信用取引に必 要だと偽り、保証金を詐取・ドロン商事会長を逮捕」という大見出しがデカデカと出 ていたのです。彼女はめまいを覚えて、その場に倒れ伏してしまいました。 とうとう年貢の納めどきかと彼女はもう精神的に参っていました。会社にもあれ以 来無断で欠勤しています。そんなある日、一人の若い男が訪ねてきました。 「私、弁護士の銭山好夫と申します。実は、ドロン商事の件でおうかがいいたしまし た」 弁護士。そう聞いただけで、中谷美和の心は、浮き立ちました。そうだ、弁護士に 頼んで何とか200万だけでも回収してもらえないだろうか。 「ええ、私も何とか被害者の方に救済をと、数百人の被害者の方とお話して回ってい るのですがね。あなたも被害額は200万ですか。わかりました。全額回収に向けて 努力してみます」 彼女は藁をもすがる思いで、お願いしますと叫んでいました。 「ときに、それには若干の費用がかかります。手付けとして、30万いただけますか? それから回収のあかつきには、その15%をいただきますが、よろしいですか?」 彼女は「はい!」と返事をして、先ほど最後のキャッシングをしてきた30万を弁 護士先生に手渡しました。 「わかりました。あなたのお気持ちに報いるためにも、きっと全額回収します。期待 していてください」 そういって先生は、帰っていきました。 ところが、いつまでたっても弁護士から連絡はありません。そうです。彼女はまた してもだまされたのです。よくよく考えてみれば、ドロン商事といい、弁護士先生と いい、ふつうの人間ならばまず引っかかりません。追いつめられた彼女は、もはや冷 静な判断力さえ欠いていたのです。つけ加えていいますと、ドロン商事はかわいそう な被害者からかき集めた金をすべて先物取引に勝手に利用し、そのほとんどすべてを 失ったということでした。もともと全額回収などはかない夢でしかなかったのです。 偽の弁護士先生に30万を支払ってから、数日後。彼女は両親に泣きつきましたが、 成人した子供の500万からの借金を肩代わりするほど、酔狂な両親ではありません で、見事に断られました。 そして、とうとう膨大な債務を抱えた中谷美和は、泣きはらしながら警察にかけ込 んだのでした。警察から弁護士を紹介された彼女は、裁判所に自己破産と免責の申し 立てをしたのでした。先月、破産宣告と破産手続きの廃止は、同時に下されました。 しかし免責が認められるかどうかは、まだわかりません。 今の彼女は拒食症に陥り、あのかわいさ、愛らしさは見る影もありません。中谷美 和の人生は、ここでいったんピリオドを打たれたのでした。 所詮人間なんて、いちど味しめたら弱いもんなんやねぇ。 <了> 弾正(だんじょう)
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「空中分解2」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE