空中分解2 #1828の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「さようなら。今後、あなたとおはなしする事はないと思います。あなたと過ごした 時間はとても楽しかった。どうも有難う。おからだにお気をつけて。さようなら。」 留守番電話に吹き込み、安堵する。あの男性との最後のやりとりとはうって変わっ たうっとりと、にこやかな、用意して置いたような落ちついた言葉。いや、違う。 確かに、既に用意していた。 いつからだろう。 不仲になる前から。いや、最初から仲が良くも悪くもなかった。向こうが一方的に 好いてきただけで、こちらはそれに合わせていたにすぎない。 付き合う前から。それも少し違う。 本当は、気付いていた。あらゆる人と、付き合う前から用意していた。私の事を好 きになる人が、居る筈はない。いつも、全ての人を疑っていた。私の心の醜さを知っ て尚、私の全てを愛する人等、居る筈がないと。近付く男性全てに、均等に、用意さ れた言葉。それが、私の、「さようなら」。 知っている。こんな気持ちで付き合う事は酷な事と。 断れないので、断る事が出来ないので、いつも、断らせる。怒らせる。私を嫌いに させる。それで私は安堵する。今日もそうして、安堵した。 ほら、私の事、嫌いになったでしょう。やっぱりね。 ほら、あなた傷付いたでしょう、やっぱりね。 本当は、私も少し傷付いたのかも知れない。 ふいに、私の部屋の電話が鳴る。 留守番電話がかたかたと、Mahlerの10番、Adagioを奏でる。捨て去 られた交響曲の、愛と死のひとかけらを。あの男性は、私の為に命を落とす事が出来 ると言っていた。もしそれが真実なら、彼の言う愛も真実かも知れない。いきなり全 てを遮るように電子音が鳴り響き、電話線の先から伝言が届く。 「僕の名刺を燃やして下さい。」 私が待っているのは、きっと、私の全てを認める人。 何度でも、留守番電話を鳴らしてくれる人。恋するだけでなく、愛してくれる人。 私はきこえなかったかのように、ベッドに横たわる。 昏々と眠るのならば、少しは、傷付いているのであろう。 1992.05.27.15:55 Ende 楽理という仇名 こと 椿 美枝子
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「空中分解2」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE