空中分解2 #1775の修正
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彼は山が好きだった。 登山靴のまま、彼は新横浜から新幹線に乗った。 車中は、休日を楽しむグループや家族づれで混雑しているが、どの顔も明 るい。 そんな中で、彼だけが一人旅。 彼は引き付けられるように「ふる さと」の山へ急いでいる。 課長から、連休も出勤してくれと言われて、押問答になった。正月以来、 残業・休日出勤が続いていた。 おとなしくて、真面目な彼は、会社の言う とおりにやってきた。 四国から横浜にやってきた彼には、友達も恋人もい なかった。 恋人が欲しかったが、仕事づけの毎日では、その機会がまった くなかった。 彼は34歳になっていた。 好きな山行きも絶望的だった。 名古屋〜大阪〜岡山 と こだまは 「ふるさと」へ近付いている。岡山 から乗り換えて、列車は瀬戸大橋を渡る。橋の巨大さに、乗客の感嘆の声! カメラのシャッターを切り、ビデオをまわす乗客たち。 彼は自問を続けている。 「俺だって休みたい! 好きな山へ昇りたい!」 「人手不足は俺の責任ではない!」 「無断欠勤にされても仕方がない」 「都会へ行ったが何もいいことは無かった・・・・・・」 列車は予讃線に入って進んでいく。彼の「ふるさと」が、彼の降りる駅が 近い。 母の顔が目に浮かぶ。 兄や兄嫁の顔も・・・・・・・・・・・・ 「逃げて帰ってきたのか?」 「この先、どうする積もりなの?」・・・・ 車窓から、実家を見つめながら、彼は降りなかった。 実家には寄らず、彼は登山口に立っていた。何度も登ったことがある親し い山が、彼を優しく迎えてくれた。 5時間かけて、彼は、ゆっくりと昇っ ていった。 登山口でも、途中でも、誰も彼を見ていない。 山の死神の誘いに乗った。 彼は山から降りてこなかった。 1992−06−07 遊遊遊遊(名古屋)
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