空中分解2 #1749の修正
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イラク南部、ユーフラテス川下流域の低湿地帯。 ここで、発掘された奇妙な生き物の化石に、学会は騒然となった。 体長約1700ミリ、頭部頂上と背中に甲殻が見られるのが特徴である。その他に エラをと肺を装備し、この生物が両性類の仲間ではないかとの見解も窺えた。 だが、その他は、まったくといっていいほど人に類似していたのだ。 『オアネスではないか?』 ある学者の中からあがった言葉だ。 オアネスとは、チグリス、ユーフラテスの下流域に発達したシュメール文明を導い た伝説の生き物である。海から現れ、人の言葉を喋り、文学、芸術、科学、を与え、 建築、法律、幾何原理を教え、植物の区別、果実採集の方法を授けたと言われている。 発掘年代でいえば、およそ六千年前。紀元前四世紀頃と推定される。 果たしてこれが、シュメール文明を導いた伝説の生物『オアネス』なのだろうか、 との議論が学会において活発に論議されていた。 「道具を自在に扱える手足、そして、異常に発達した頭部から、これが知的生物であっ たことが推測できます。実際に、同時に発掘された加工金属片から、この生物がかな りの知的レベルと有していたことがわかると思います。」 学者の一人がそう発表すると、別のところから声があがった。 「同時に発見された『オーパーツ*1』が、その生物のものと断言できるのだろうか?偶然同じ地層に眠っていたのかもしれない。」 「だが、それだけで、この生物との関連を取り除くことには少々無理があるのではな いか?」 「それよりも『オアネス』というところから離れて考えたほうがよいのではないか?」 「そうだ!哺乳類とはまったく別の形で進化した生物なのかもしれんからな。」 「しかし、知的生物であることには間違いないはずだ。」 「いや、今はそんなことを議論しているのではない。この生物がなんであるかだ?」 そこで問いで、議論者たちの意見は、一時静まった。 なにしろ、今までにない形状の生物の為、推測は困難に近い。甲殻を持つ哺乳類は 存在する。だが、二足歩行をし、発達した頭部はまさに人間そのものだ。 それに加えて、エラと肺の痕跡が見られるのだから、混乱もするだろう。 「私は、中国でこのような生物の話を聞いたことがある。たしか『KAPPA』と言っ ただろうか?」 ふいに声があがった。 「それなら、私も聞いたことがある。たしか伝説上の生き物で……そうそう『KAP PA』といったはずだ。」 「あの中国の古い物語に出てくる『SAGOSHO』か?」 「いや、あれは『SAGOJO』だろう。」 「するとこれは、『SAGOJO』ということになるのか?ばからしいあれは、空想 の産物ではなかったのか?」 「空想といえども、バカにはできるまい。」 今度は、この生物が『SAGOJO』であるかについて議論が始まった。 「伝説によると『SAGOJO』とは、人間になったらしいぞ。」 「人間に化けられるの間違いだろ?」 議論のレベルは衰退した。もはや、この生物の持つ歴史的価値などどこかへいって いた。 「やはり、これは『KAPPA』の『SAGOJO』なのだろうか?」 「その物語というのは『SAIYUKI』の事か?それなら知っておるぞ。たしか、 『SANZO』というプリーストのお供についていくあれか?」 「しかし、あれは中国の話じゃなかったのか?たしかに中国を離れ『TENJIKU』 までの旅の物語であるが…まさかイラクに『TENJIKU』があったとでもいうの か?私は『TENJIKU』はインドと聞いたぞ。」 この生物が『SAGOJO』であるかというくだらない議論は白熱した。 だが、その時、一人の黒髪の男が立ち上がり皆に向けて発言した。 「彼は、『河童』であるが、『沙吾浄』ではない。」 その意見に一人の別の男が喰ってかかる。 「どうして、そんな事が断言できるのだ?」 その問いに黒髪の男は、落ちついた口調で答えた。 「彼は、私の古い友人の『灯吾浄』なのだから。」 議会の会場からはブーイングがあがった。 (了) 補足 *1 オーパーツ(Out-of-Place-Artifactsの略)、つまり”場違いな出土加工 ということ。
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