空中分解2 #1723の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
…天国は白いのよ…ハブさん… 久しぶりに学校に出て来たボクを、その優しい声で迎えてくれた君… 『ハブさん、ハブさん』といつもその美しい優しい声で呼んでくれてた君。優しいク ラスメートだった君。ボクは秘かにあこがれていた。その君が発狂するなんて。11 年ぶりにボクらが出会ったところが精神病院の病棟の中だったなんて。 (白い光る音楽…) 悲しい悲しい音楽が聞えてきた 僕らが情死行するとき僕らを取り巻いているであろう哀しい音楽が 天国から聞えてくる哀しい音楽が… 哀しい音楽が聞えてきた 僕の頭を覆ってきた 僕らが情死行するときに僕らを取り巻いている哀しい音楽が 天国から聞えてくるその哀しい音楽は 僕らが中二の頃から時間のトンネルをくぐりぬけてやってきた僕らの少年少女時代からの音楽 白い白い光る音楽 その日は三日月の夜だった。僕とマリコが死を誓い合った夜は。僕らは茂木の浜辺にクルマを停めて海岸縁りに歩いていってある岩の上に腰かけた。三日月がとても綺 麗に北の空に輝いていた。 少し波の音がしていて塩の香りもしていた。マリコは、久しぶりの海の香りだわ、と言った。僕にも久しぶりの海の香りだった。 浜辺での会話… 波の音がかすかに僕らを覆っている。中学時代のそのままの僕らを波の音と海の香りが優しく包み込んでいる…) 僕らは溶けてゆきたい。この青紫色の海の中に。そしてそこに龍宮城があってそこ で生活したい。』 三日月が微かに僕らを照らしていて、その光が波間に反射してまるでエメラルドのように綺麗だ…) …ええ、溶けてゆきたいわ。私躰がなくなってこの静かな海の中に溶けてゆきたいわ。そして私、意識もなくなってしまいたいわ。狂ってしまった私の意識もなくなっ てしまいたいわ。水の中に溶け込んでしまいたいわ。 海中蛍だろうか… それとも以前母の実家の港で見たことのある砂虫の成虫だろうか。月の光りの反射でない何かが僕らの目の前の海中を横ぎっていっていた。 振り向くとマリコもそれを不思議そうに見つめていた…) 一人で死ぬのは簡単だけど、二人で死ぬのは難しいな、とこの頃嘆いてきました。 二人でクルマの中でクルマの排気ガスを吸って死ぬ…という方法がない訳ではありませんがそれは苦しくて却って死ねないようです。 何かいい死ぬ方法がないかなあとボクはこの頃頭の中を黒い雲のようなものに覆わ れたようにして考え込んでいます。 首を括って死ぬよりも二人でクルマの中で仲良く抱き合って死にたいな、とかこの頃思ってきました。 僕は何かカルモチンか何か…昔よく心中するときに使われていた…クスリを手に入れて君とクルマの中で抱き合って死にたいな、とばかり考えています。 カルモチンはやっぱり無理だから ネズミを麻酔するときに使った麻酔薬をこっそりと生理学の教室から持ち出してきて(そしてボクは注射器を3本ぐらい持ってるか ら…)それでお互いの腕に注射して死のうかな…とも考えています。 でもやっぱり一番手に入りやすいのは家庭用の農薬で(それを飲むと苦しいのかな… だからそれを注射して死ねないかな?… と考えたりしています。 死ぬ方法はいくらでもあります。僕が今一番気にしているのは死ぬ場所です。茂木の浜辺がいいなあ、と考えています。二人で茂木の浜辺で海を見ながら抱き合って死 んでゆきたいな…とばかり考えています。 僕はやっぱり一人で旅立ってゆくことにします。茂木の浜辺で誓ったあの誓いも… あとあとのことを考えたらやっぱり僕一人で死んでゆく方がいいのだろうと思います 。 僕一人で旅立って行ってごめんね。 でもやっぱり僕一人だけで死んでゆくのは寂しいなあと思います。…でもマリコを道連れにして死んだことになると僕の父や母がマリコのお父さんやお母さんたちから 責められそうな気がしてやっぱり僕一人で死んでいった方が一番だと思います。 …でもなんだか罪悪感と言うか、…窓辺から満月の美しい月を見ているとその月の色はマリコの肌の色のようで… …マリコは一人残されてあの満月のように寂しく残 りの人生を送るのかなあ、と思うとやはりあとあとのことは考えず、マリコと二人で 一緒に茂木の浜辺か僕らの思い出の日見中学校のグラウンドで死んでゆくのが一番の ようにも思えます。 (ある日、中庭で) 僕たちの中学時代はもうはかない夢なんだ。 そうでしょうね、もう霞んでしか見えないわ、中学の頃の思い出は、あの頃は楽し かったわ、2年1組はとても楽しかったわ、 ----僕らはそうやって精神病院の中庭でベンチに腰かけ肩を寄せ合って懐しい中学時代のことを語り合っていた。もう煙って見えない。12年前の遠い思い出の日々は 時が雲仙岳の煙のように僕たちの目を遮って見えない。 ----僕らはそして泣いていた。中庭のあちらこちらでもすすり泣く患者さんたちの声が聞こえていた。誰も彼もが嘆き悲しんでいた。 僕らの懐かしい中学時代の思い出は悲しい涙となって中庭の土の上に一つ、二つ、 と落ちていっていた。青く澄んだ僕らの中学時代の思い出ははかなく涙の結晶となっ て、お互いに精神を病み、傷つき果てた心のまま再会して、悲しい涙を流していた。 ぽつりぽつりと、落ちる涙がやがて鳴咽に変わり、マリコは僕の胸に顔を埋めて泣 きだした。 でも、そうしても、どんなにしてももう帰って来ない僕らの過去、あの華やかに僕らの胸の中にまだ光り輝いているあの懐かしい中学時代の思い出。もう帰って来ない 。そして僕らの前には灰色の道だけが横たわっている。 『私たち、戻れないの。昔に戻れないの。私たち、戻れないの。昔に戻れないの。』 『死んだら戻れるんじゃないの、昔に。もしかしたら、戻れるんじゃないの。』 僕らは逃げる。たったったっ、と必死に逃げる。 悪魔が追ってくる。手を繋いで必死に逃げる僕らを悪魔が追ってくる。 僕の魂と君の魂が結び付いた結晶ができて、でもそれはほんの小さな一塊の結晶と して君の死とともに一緒に哀しく死んでゆく。思い出の日見中学校のグラウンドで僕 の左手と君の右手を繋ぎ合ったまま仲良く砂場の横の鉄棒で首吊り自殺をして、哀し く… 僕らの首を吊る白と黒の二組の柔道の帯が夜風に揺れていた。冷たい夜風が僕らの 頬をくすぐっていた。 僕らの躰は月の光に輝いていた。そしてさっきまで薬のために『きつい、きつい』 と言っていたマリコはいつのまにかその薬の呪縛から解放されたのか、中学の頃の美 しいマリコに戻っていた。 僕らは白い砂丘の中に吸い込まれてゆくのだろう。巨大な津波のような砂丘が僕た ちを襲ってくる。僕らはしっかりと抱き合いながらその恐怖におびえている。 僕らは最後、雪の中で、暗い森の中で、散っていった。春が始まる2月の終わりに 散っていった。 完
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