空中分解2 #1721の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
マリコ抄(1) 『ハブさん、大丈夫。ハブさん、頑張って。』 それは何年ぶりに蘇み返ってきた君の言葉だろう。あれは中二の頃だからもう十二年も前のことになるだろう。あの日、文化祭が終わった3日後の水曜日の日に僕は久 しぶり学校に出てきた。正確には9日休んだことになることを僕は記憶している。 二週間、僕の躰は布団の上で39℃の熱を出して燃え続け、僕は色は青白くなった 。別人のように痩せて僕は久しぶりに登校してきた。文化祭で英語の先生の役をする はずだった僕はその役は有吉(ザンパン)がしたと聞いた。僕にはできなかった。ノ ドがおかしくて大きな声が出ない僕にはできなかった。そしてもう休むよりほかに方 法はなかった。 その久しぶりに登校してきた僕に優しい言葉をかけてきてくれた君は(僕はクラス のみんなから非難されると言うか…とてもとても学校に来にくかったのに…。)天使 さまのように僕にそう囁いてくれた。あのうつむいて机に座っていた久しぶりに登校 してきた僕に優しく声をかけにきてくれた君の声と姿は十二年経った今も僕の脳裏に 鮮やかに思い出される。君のあの姿と声。優しく僕を慰めてくれた君の優しい言葉。 君は中二の頃の僕をその優しい笑顔で救ってくれた。今度は僕が救う番だろう。で も僕の顔はひきつってしまう。僕は人と一緒に居るととても緊張してしまい、君は僕 をおかしく思うだろう。また、僕のひきつる頬はとくに女の子を傷つけてしまう。僕 は迷う。君とは会えない。君を傷つける。君をますます不幸にしてしまう。 あれは中二の文化祭のときだった。僕は先生役に選ばれて…でもノドの病気で大き な声の出ない僕は文化祭の一週間前から高熱を出して休み始めた。熱は39、5℃ま で出た。でもこれは心因性の高熱だった。学校を休むための魔術のような高熱だった 。 二週間ほど、僕は熱を出し続けた。僕は骸骨のように痩せた。そして色も青白くな って学校へ出ていった。それまで日焼けして健康そうだった僕が幽霊のようになって 登校してきたとき君は言った。『ハブさん…大丈夫…。ハブさん…大丈夫。』 階段を、よろめくように登る僕をそっと脇から支えてくれた君。あの頃の君は美し かった。僕にとって眩しすぎるぐらいの存在だった。 君と目が合ったとき、君はにっこりと微笑んだ。僕は最初君が誰だか解らなかった 。でも美しさは変わってなかった。そしてその美しい声も。 …でも僕は強度の対人恐怖症だから、僕はそっと目をそらした。君に気づかなかっ たように。 僕はうつむいて歩いていった。いつもの哀しい別れの時のようだった。 僕は亡霊のように歩いていった。そして君が見た僕も、そして君が優しく『ハブさ ん』と中学時代そのままに声かけてくれた僕も…。でも僕はもう亡霊の僕だった。 僕は廊下をすたすたと歩いていった。亡霊のようにすたすたと歩いていった。 僕らのあの和やかな幸せな二年一組のクラスのことを思うと(みんなみんなとても 仲の良かった)僕は毎日のように君を訪ねていって昼休みなんかに30分ぐらいはお 喋りしなければならないのだろうけれど、対人恐怖症の僕は、顔のひきつる僕は、却 って君を傷付けてしまいそうで隠れている。 ぽかぽかと陽の当たる中庭で午後になると君と毎日のようにベンチに座って語り合 わなければならないのに…。僕の顔はひきつるから。こわばってしまうから。 …僕らの思い出の中学2年の頃のあのみんないい奴ばかりだった2年1組のクラス のことを思い出すと、本当に僕は毎日君を訪ねて行って中庭で30分ほどお喋りをし なければいけないのに。 留年を繰り返す失意の僕に微笑んでくれたのは鉄格子のなかの君だった。中学の頃 のクラスメートだった君だった。中学の頃、みんなが憧れていた君だった。 君が発狂してこうして精神病院のなかに入れられているなんて僕にはとても想像で きなかった。 (宗教遍歴しているとき僕は君の名が『病気平癒』の名前のなかに書かれているのを “成長の家”に行ったときその礼拝堂で見た。年はたしか僕より一つ上に書かれてい た。同姓同名だろうと始めは思った。でも同姓同名にしては年も同じ頃だしマリコは やっぱり何か病気しているのかなと思った。僕の誕生日は11月の終わりだった。そ して僕が“成長の家”の長崎本部道場に行ったのは9月頃だったと思う。君は早生れ だったと思う。だから君の年が僕より一つ年上に書かれていたのだと思う。それから 2年ぐらい経ってやっぱりそのとき書かれてあった名が君の名だったことを…それも みんながとても怖れている精神の病だったことを知った。) 僕は中学の頃、喉の病気や言語障害などのため苦しんでいた。でも君はあの頃幸せ そうだった。 君は精神に変調を来たし入院し、僕は対人恐怖のため3年留年してどん底の医学生 だった。もう僕は卒業して医者になってると僕らの中学の頃の同級生は皆思ってるら しいけど、僕はこうやってここでアルバイトをしているまだ学生だ。死のうとも思っ ている進級できないでいる対人恐怖症に陥っている学生なんだ。 いつも教室の片隅で一人ぽつんと俯いていた僕にときどき声をかけてくれていた優 しかった君は何処に行ったのだろう。 あの中学二年のとき、僕らが同じクラスだったとき、輝いていた君は… あの頃の君は戻って来ないのだろうか? あの頃の優しかった君はもう… ----僕らが駆けている。日見中学校の運動場を力いっぱいにテニスボールを追って駆けている。 ----『僕は何のために生まれてきたのだろう。そして君も何のために生まれてきたのだろう。』 ----僕らは風に吹かれて揺れ動く。僕らは哀しい風に吹かれて揺れ動く。 風が哀しい風が吹いている。冬の冷たい哀しい風が吹いている。 風はあの中二の頃の寒く冷たかった冬の風に似ている。僕が喉の病気になったのは 中二の春か夏だったと思う。それからの辛い日々。寒い一人ぼっちの日々。誰とも騒 げず哀しく送ったそれからの日々。 『ハブさん、あの頃なぜハブさん元気だったの。もうあのころ喉の病気に罹っていた のでしょう。でもあの頃のハブさんは明るかったわ。明るくて光り輝いていたわ。』 『信仰をやめたからさ。あの頃していた創価学会の信仰をやめたからさ。それから僕 は人格が堕落していった。自分のことしか考えない自分になっていった。』 『信仰をしたら。もう一度、信仰の道に戻ったら。もう一度、創価学会に戻ったら。 』 『人を救えるのは… 真実とは…』 僕には解らなかった。今も解らない。僕は信仰の道に戻れない。戻ってあの頃のよ うに元気いっぱいの僕に戻れたらいいのだけれど…。 ----『ハブさん。元気を出して…。』 …久しぶりに聞えてきた君の声だった。中学二年のとき以来の君の声だった。憂愁 に陥りがちの僕を、また救ってくれる優しい声だった。入院患者の君が失意のなかで アルバイトをしている僕をまた励ましてくれているようだった。あの頃、中二の頃、 僕には夢があった。苦しかったけど僕は明るかった。今の僕はその頃していた信仰も 忘れ、自分のことばかり考えるような僕になっていた。僕は以前の僕ではない。以前 の僕は喉の病気のために苦しんではいたけれど明るかったし、みんなの人気者だった 。僕の心はその頃とても美しかった。毎日毎日、クラスじゅうのみんなの幸せのため に題目を一日2時間近くもあげていたと思う。元気だったあの頃の僕。心がとても純 粋だったあの頃の僕。みんなから好かれていたあの頃の僕。いつも笑顔をたやしてな かったあの頃の僕。 元気だったあの頃の僕。君と同じテニス部に入っていたあの頃の僕。 君は言うだろう。『ハブさん。元気だったハブさん。とっても優しかったハブさん 。あの頃のハブさんはどこへ行ったの。とっても明るくて人の良かった私が好きだっ たあの頃のハブさんはどこへ行ったの。 あの頃の僕は戻って来ない。僕は信仰を大学一年の11月にやめた。それからの僕 はエゴイストになっていった。今の僕はエゴイストだ。僕は以前の僕ではない。中二 の頃の明るくて元気だった僕ではもうないんだ。 僕はエゴイストなんだ。自分の殻に閉じ篭ったエゴイストなんだ。 『ハブさん。あの頃のハブさんには戻らないの。私が好きだったあの頃のハブさんに はもう戻らないの。』 もう戻ろうたって戻れないんだ。僕は以前の僕ではない。僕は信仰を棄てたんだ。 もう戻れないんだ。 『戻って、ハブさん。あの頃のハブさんに戻って。』 僕を苦しめないでくれ。僕はもう以前の僕ではないんだ。以前の僕の心は本当に美 しかった。網場や春日の海のようにあの頃の僕の心は青かった。でも今の僕の心は汚 れている。もうどうしようもないほど汚れている。 『青い海のように綺麗な心だったあの頃のハブさんに戻れないの。もう戻れないの? 』 『ハブさん、頑張って。ハブさん。元気な頃のハブさんはどこに行ったの? 中学校 の頃の明るかったハブさんはどこに行ったの?』 思えば僕は中学時代、やはりノドの病気や言語障害などに苦しんでいた。しかし僕 には篤い宗教心があった。創価学会の信心を純粋にひたむきに信じ続け、僕は広宣流 布のため、人のため、にとものすごく頑張ってきた。ああ、あの頃の中学時代。でも あの頃もとても苦しかった。君には明るそうに見えたかもしれないけど僕にはとても 辛かった。 そして僕らは疲れ果て、白い砂丘に呑み込まれてゆく。僕らは疲れ果てて白い砂丘 に呑み込まれてゆく。白い砂丘のなかにあったのは魔の世界だった。自殺した者たち だけが行く魔の世界だった。そこは怖ろしくて怖ろしくてまっ暗な寒い世界だった。 寒くて寒くて僕らはお互い抱きあって震えていた。 『…ハブさん…私たちがさっき着ていた暖かい暖かい着物は何処へ行ったのハブさん … ハブさん…どこへ行ったの… 』 『ハブさん。寒いわ。何故こんなに寒いの。ハブさん。何故ここはこんなに寒いの。 』 そして僕は泣いていた。マリコもそれにつられて泣いていた。 僕は中二の頃の春を想い出した。なぜかその中二の頃の春は赤く染まって見える。 僕の中二の春は赤く彩られている。赤く赤くどこまでも赤く彩られているようだ。 スズメやツバメの声も聞えてくる。そして風にそよいでいる木の葉も…。 遠い遠い12年も前のことだけど、僕にはありありと想い出されてくる。もう暖か くなりかけた中庭で午後日なたぼっこをしていると…
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