空中分解2 #1564の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「……部屋で殺すつもりなんですかぁ」 恐る恐る尋ねる俺。 「何言ってるんですか。ここだとゆっくり話しもできないから、中で話し ましょうと言ってるんです」 「ははっ、中でね。ははははっ、ちっ散らかってますけど」 どうぞと中へ勧める。 散らかった物を掻き分けて居場所を作り、とにかく話を聞くことにした。 「あの……話ってのは何でしょう?」 「姉さんの事なんですが……………」 「姉さんって誰の事でしょう?」 「あっ済みません。舞さんの事です」 姉さんなんて言うから、誰の事かと思えば舞の事だった。偉くなったもん だ。 「実は三代目から伝言があって、それを神崎さんに伝えようとこうして出 向いた次第です」 「はぁ、そりゃ御丁寧にどうも」 「では簡潔に言わせてもらいます。神崎さんは姉さんを取り戻したくはあ りませんか?」 「それは……」 「分かってますとも、連れ戻したいのでしょう?なら明日の式が始まる前 に連れ戻せたら返してやることにしましょう」 悠也は俺の言葉を遮って、話を終わらせてしまった。 「でも……それって何か変じゃない?何でわざわざ俺に連れ戻させるチャ ンスを作らせる必要がある?そのまま結婚させてしまえば、そっちの計画通 りに終わって大団円なんだろう?」 「こっちにも事情があるんです。なるべく早く迎えに行ってあげてくださ い。大丈夫です。かならず成功するようになってますから」 悠也はニッコリ笑って俺の部屋を出て行く。 「そうそう、これは俺からのプレゼントです」 そう言って帰り際に拳銃を投げてよこした。 俺は拳銃を手に取ると、呆れてしまった。 「これ……ライター???」 そうトリガーをひくと、銃口から火が出るって代物だ。 俺はこんな物に騙されていたのか…………情け無い………… 両肩をガックリと落とし、床に崩れるように座り込む。 そういえば……… 「成功するようになってるって言ってたな……。絶対に連れ戻す事が出来 るって事だろうか?」 俺はない知恵絞りだして、考えてみた。 ”騙されるのがオチだって” 『悪い瞬』囁く。 ”それなら先程、あなたを殺しているはずです。それなのにあなたは殺さ れなかった。もう言わなくても分かりますね” 「ああ、分かってるさ。取敢えず飯でも食って一休みしてから、朝方奇襲 をかければいいんだろ?」 我ながら天晴な言い種に、大笑いだ。 俺は早速行動を移しに、冷蔵庫へ急ぐのだった。 * * * 今夜は、ゆっくりと眠る事ができそうだった。 一日で三六五日分の疲れが出た気分がする。 ”あれだけドタバタと暴れ回ったのは、子供の頃以来だな……。周りが見 えず、ただガムシャラに遊び回ったあの頃だ” 「今もあの頃も、俺は変わっていないのかも……しれないな」 総ては遊びの延長線上にあって、決して真剣になろうとはしない。だから 回りの人間は、俺のような奴を不真面目と言う事だろう。 けれどそれも一つの結果であって、間違いではないはずだ。世の中にはも っとコチコチに固まった、エリートの皆様だっている。もちろん彼等も、考 えた末(或いは、そうなる為の努力の末)にそうなったのだから、これもま た一つの結果であるはずだ。 結局は世間がその人本人をどう見ているかで、価値観が決まってしまうと いう事に問題があるのかも知れなかった。 ”俺がこんな事を考えるなんて………” 自分でも考えてしまう。 そう言えば………舞が言っていた。 ”楽しまなきゃ損だって” そういう意味で、舞は何からも縛られずに自由な生き方をしているのかも しれない。 ”今の考え方は舞と出会った事で、俺が失った物を思い起こさせられたの かもしれないな………” ふと、そんな気分にもなってくる。 何はともあれ明日は早い。目覚し時計をセットし………て、はぁ……壊れ てたんだっけ…。壊れてたのではない、壊したのだ。 まぁいい、自力で起きてやる。 多少の不安を抱きつつも、やはり今日一日の疲れのせいでいつの間にか眠 り込んでいるのだった。 * * * 眠りが深かったのか、それ程寝てはいなかったが目が覚めてしまった。 まだ窓からも光は差し込んでいない。時計がなかったので時刻を確認する 術がなかったが、おそらくまだ日の出までには時間があるはずだ。 念のためにテレビを付けてみる。案の定どこの局も放送はしておらず、か わりに快いBGMをバックに画面には放送が終わった後の垂れ幕のようなも のと、左上に現在の時刻を移し出しているだけ。 四時五十六分、テレビの画面はそう映し出している。今から出掛ければ、 日の出と同時くらいに『****ホテル』に付くことができる。寝込みを襲 うには、丁度いい頃合だ。 俺は身支度を整え、完全に目を覚ますために洗面台で顔を二・三回洗う。 タオルで顔に付いた水滴を拭き取り、両手で両頬をパチンと叩いて気合いを 入れる。 「おっしゃあ、お姫さまを連れ戻しに勇者は旅立つってね」 こうしてレベルにして一である勇者は、武器も携えずに単身敵地に乗り込 むのでした。 * * * 交通量ゼロの道路をヘルメットも被らず、バイクで疾走する。この時間に もなれば車も走らず、道路は自分のためにあるような気分になっても仕方が ないだろう。何よりもヘルメットを被っていないことが、さらなる解放感を 与えているのかも知れなかった。 風が耳元を擦り抜け、それに身を委ねる。このときある意味でのバイクと の一体感を覚えるのだ。 風になる……まさしくその通りだ。体で感じる、これがバイクの魅力の一 つであり、総てなのかもしれない。 そろそろあの橋の上だな……。俺が指輪を投げた所だ。後悔しても始まら なかったが、未練は残る。 探そうにも、ちょっとやそっとでは見付からないだろう。 小石にすり換えて投げれば良かったと、今更ながらに思う。 そんな想いが沢山ある橋の上を通り過ぎたところで『****ホテル』ま での道程は、あと約三分の一を残すのみとなり、実はその下で舞が一生懸命 指輪を探しているなんて事は夢にも思わない瞬だった。 * * * 「見えてきたな…」 俺の前方二・三百メ−トルほどであろうか『****ホテル』が視界に入 って来た。俺はそこでバイクを停止させ、辺りを確認してから降りる。 ふぅ。俺は溜め息一つついて、『****ホテル』に向かって歩き始めた。 少し歩いたところで気が付いたことなのだが………これはどういう事だろ うか?? 『****ホテル』の全室から明りが漏れているのだ。と、言う事は……。 皆さん起きてらっしゃるわけね……ははっ。俺の心は北風が抜けて行ったか のように涼しくて、凍ってしまいそうだった。 「どうしてくれようか……困ったぁ」 折角早起きして奇襲をかけるはずだった予定が、これで木っ端微塵に砕け 散ってしまったわけだ。やる気が一気に萎えてしまった。 「一筋縄では行かないとはおもってたけど……」 残念ながら良いアイデアが、一つも浮かび上がってこない。何でも良い、 何か思い付いてくれ〜〜。俺は叫びだしそうだった。 「あ〜〜クソッ、仕方がねー。こうなったら正攻法、正面から堂々と行っ てやろうじゃねーか。そうとも、なんたって俺は勇者なんだからなぁ。はは はっ」 余りの無謀さに、切れそうだった。第一、勇者が玉砕なんて洒落にもなら ないだろう。 ”くそ−何とかならねぇのかよ” 意を決して歩き出したのはいいが、足が震えて側から見ればかなり滑稽な 姿に見えるだろう。もちろん瞬の方は真剣そのものなので、そこがまた笑え たりするのだ。不幸ほど、面白い物はないのかもしれない、当事者でなけれ ば……だが。 一歩、また一歩と近付く度に、鼓動が高鳴っていくようだ。 ”このままじゃ本当に心臓が飛び出すか、破裂するかして死んでしまうぞ ……まったく” それでも、まだ悪態がつけるだけマシなのかもしれなかった。 「さ〜てと、どんな顔して入って行ったもんかな?」 今更カッコつけることもなかったが、流石に入り口を目の前にすると緊張 も極限まで達して、いらぬ事まで考え出してしまうものだ。 『****ホテル』の中は明りが付いていて、まるで二十四時間営業中か のようだ。もちろんホテルが完全に眠ることはないにしても、何もここまで 明るくしておく必要もないと思うのだが? ドアの前に立つと、スッとドアが左右に割れて俺を迎え入れる。 ぎこちない足取りで中に入った俺は、中の様子を見て腰を抜かした。 そこには俺が入り口で見た状態とは違い、沢山のヤクザ屋さんが息を殺し て俺を待ち受けていたのだ。なぜ入る前に気が付かなかったのかと言うと、 入り口からはフロントしか見えずヤクザ屋さんはその死角に隠れるかのよう にしていたからなのだ。もちろん隠れているつもりはな いのであろう。な ぜなら、ヤクザ屋さんはロビ−で寛いでいるつもりなのだろうから。 まぁそれは見えなかったことにしておいて、俺はフロントで三代目の部屋 番号を尋ねようとしたのだが誰もいない。入り口で見た通りと言えばそれま でなのだが、せめて職務くらい果たしてほしいと言わずにはいられなかった。 ツイテないときは、本当にツイテないもんだ。こうなったら落ちる所まで 落ちるしかない。 「ちくしょ〜。来てやったぞ三代目、掛かって来るならさっさときやがれ ってんだ」 俺はこのフロアの隅から隅まで聞こえるような大きな声でわめき散らした。 するとどうだろう、ヤクザ屋さん一同が拍手喝采が沸き起こるではないか。 俺はこの状況が理解できずに、うろたえてしまった。 なんだなんだ?この盛り上がりようは??この光景を呆然と見やる俺の肩 に、後ろから手を掛ける奴がいた。俺が振り向くと、そこには悠也が立って いたのだ。 「来てくれないのでは……と、思い始めたところですよ。神崎さん」 そう言ってニッコリ笑う悠也の姿は、とてもヤクザ屋さんには見えなかっ た。まぁ、もともと不向きそうにしか見えなかったが。 「約束通り向かえにきたんだが……これは?」 「まぁまぁ焦らなくても。折角ですから、三代目にあっていって下さい」 「まっ舞は?」 「だから焦らなくても大丈夫ですって。今頃、神崎さんのマンションにい るんじゃないんですか?」 「な……なんだって?」 「だから、必ず連れ戻せるようになっていると言ったでしょう?」 そう言うと、悠也はこちらに来いという身振りをして、俺を促す。 それなら……と、俺も悠也の後をノコノコとついて行く。まだ油断は出来 なかったが。 * * * 「さぁ、ここですよ神崎さん」 言われるまでもなくドアの前に立たされていれば、分かるってもんだ。 「どうぞ」 「どうぞって、俺一人で入るの?」 悠也は『あたりまえだろう』と言う顔をして「そうです」と応える。 俺は緊張した面持ちでドアを叩く。 「神崎さんですね、どうぞお入り下さい」 妙に子供っぽい声をしてるなぁ……どうも拍子抜けてしまう。 俺はノブを回してドアを開け、中へと進んだ。
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