空中分解2 #1496の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
一般的にはあまり知られていないが、北海道の山奥にはまだまだ原住民の住 んでいる集落が点在している。それらの部落はお互いルーツは同じなのだろう が、険しい山で隔絶されているため、現在はほとんどそれそれが独自の生活様 式を持っている。 そのうち、アネコ族とツキノワビト族は山一つ隔てて隣接している。 アネコ族のタケルという若者は道に迷っていた。こういう人種はまず部落付 近の地形は熟知しているし、あまり遠く離れたところまでは行く事はないのだ が、ごくたまにはこういう大ボケ野郎もいる。しかも困ったことにタケルは天 才的な方向音痴であった。四方を山に囲まれた谷間に部落は存在している。と いう事は山を下ればよいのであるが、タケルはずんずん山を登っていく。何故 か? きっとタケルはこう答えるであろう。 「そこに山があるからだ」 三日三晩歩き続けてやっと山頂にたどり着いたタケルだが、さすがにもう歩 く気力はない。体力には自信があったし、食料はその辺の蟻とかクモとかを食 べていたからなんとかなったが、渇きだけはどうしようもない。山の上に川な んか流れているわけはないし、雨も降らない。木ノ実なんかもない。 このまま歩き続けたらおそらく半日も保たなかっただろう。 ここでタケルは全く正しい選択をした。山頂から転がり降りたのである。単 にけっつまづいただけという説もあるが、とにかくタケルはそうした。 気がつくとタケルは小屋の中で藁を積み重ねた寝台らしき物の上に横たわっ ていた。どうやら誰かに助けられたようだ。薬かなんかを塗られたようで、全 身からぷーんとコヤシみたいな臭いがする。それがツキノワビト族の秘薬『糞 尿の炒め物』と知ったらタケルはどんな顔をするだろうか。悪運の強い事に怪 我はさほどでもないようだ。ちょっとわき腹が痛むくらい。実は肝臓が破裂し ているのだが、にぶいタケルはそうと気がつかない。 「み、水……」 とにかく水だ、とばかりにあたりを見回すと巨大な水瓶の中になみなみと水 が満たされていた。タケルは瓶の中に顔を突っ込んで水を飲みまくった。 ふーっと一息つくとそとから異様な声が聞こえてくるのに気付いた。 「オーオーオーオーオー」 悲しげな、詠唱のような声。 「オーオーオーオーオー」 タケルは小屋の外に出て様子をうかがってみた。 この部落の中心部で何かの回りを人が取り囲んで座りこみ、両手をすり合わ せている。どうやら儀式のような物が行われているのだな、とタケルは理解し た。 その中心には十字架のような物が立ててあり、両わきに篝火が焚かれている。 そしてその十字架には半裸の少女がくくりつけられていた。 その少女を見てタケルは強い衝撃を覚えた。なんという形のいい胸なんだろ う。顔とかスタイルとかは関係なかった。ただただ胸が気に入った。 タケルがぼーっと見ている間にも儀式は進んでいるようだ。 「オーオーオーオーオー」 詠唱はますます激しくなっていく。一人のしなびた老人が十字架に歩み寄って いく。ツキノワビト族の長老かなんかなのだろう。その手には剣のような物が 握られている。十字架の少女の顔が恐怖にひきつる。 ツキノワビト族は山の神を信仰しており、毎年この時期になると少女の生皮 を剥ぎ、その生皮を山の神に捧げ、したたり落ちた血をみんなですするという 儀式が行われる。 勿論そんな事をタケルが知るわけはない。 いままさに少女の左胸のあたりの皮が剥がれようとしている。長老の持った 剣が左胸の心臓部に食い込み、どろっとした赤黒い血が流れ出た。 「うおーーーーーっ」 タケルは我を忘れて突進していた。 「あの形のいい胸を傷つけられてたまるかあああっ!」 てなもんである。十字架の前でひれ伏していた人達の頭を踏み越え、長老を突 き飛ばし、少女を十字架ごとひっさらっていった。ツキノワビト族たちは突然 の出来事に唖然としている。彼らには自分達のしきたりが絶対であり、また、 他の世界を知らないため、この儀式を邪魔する者がいようとは、彼らにとって は「ありえないこと」なのである。 タケルは十字架をかかえてただひたすら走っていた。追手がかかる事は間違 いない。とにかく部落からできるだけ遠ざかっておく事だ。 体力の限界まで走ってタケルは十字架を降ろし、いましめられていた少女の 身体を解放した。少女は恐怖の眼差しでタケルを見ていた。左胸の皮膚は5セ ンチ位めくれていた。 「*************************!」 少女がしきりに何か訴えているが、アネコ族とツキノワビト族は言葉が全く 違うため、何を言っているのか理解できない。少女は、 「こんなことをすると山の神様が怒って部落が全滅するわ!」 と言っていたのだった。でも、それとは別に自分の命が一応は助かったのだか ら、多少感謝の気持ちがあったのかも知れない。やっぱ、自分以外の部落全員 の命と自分の命とどっちが大事かと言うとやっぱり自分の命だった。今回いけ にえに選ばれたのだって、部落の少女全員の中からランダムに選ばれただけな のだ。 少女は自分を指さし、よく聞き取れない単語を繰り返している。何度か繰り 返したところでタケルはようやく少女が自分の名前を名乗っているのだと気付 いた。アネコ族の言葉にはない発音だが、無理矢理アネコ族の発音に置き換え ると『レモン』とでもなるだろうか。タケルは少女を指さし、 「レモン?」 と聞き返した。少女がうなづくのを見ると、今度は自分を指さし、 「タケル」 と名乗った。 お互いの自己紹介が終わったところでタケルは極度の疲労のためバタッと倒 れて爆睡してしまった。レモンもしょうがないので横に寝た。寝ている間、タ ケルは無意識のうちにレモンの胸をいじくりまわしていた事は言うまでもない。 目が醒めると回りをツキノワビト族に取り囲まれていた。ここら辺一体は彼 らの庭みたいなもんである。見つからないわけがない。しかもタケルは巨大な イビキで私はここですよーと自分の居場所を教えていたようなものだ。 レモンはまだ眠っているが、苦しそうな寝顔だ。脂汗なんか浮いている。そ れもそのはず、レモンの左胸の傷が化膿している。 タケルとレモンを取り囲んだ人達の中から例の長老が進み出て、レモンの傷 口を見て、 「**、***************!」 と言った。何を言ったのかはタケルにはわからないが、実は、 「おお、レモンの皮をめくると膿が見えた!」 と言ったと知ったら、タケルは多分、 「おっさん、『うみ』がちがうだろーが」 とツッコンだことだろう。 − おしまい −
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