空中分解2 #1447の修正
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想い出 由枝は色が白く、体は痩せていた。また、身長も今どきの女性に比較すると、けっ して大きいほうではなかった。容姿はどちらかというと、「日本的」な繊細な顔だ ちをしていた。少し切れながの眼に、ととのった小鼻、小さめな口。また、栗色の肩ま である髪は、後ろで奇麗にむすび、常に清楚な感じがする女だった。また、濃紺の制服 をまとうと、より洗練された女になる。まぁ、そんな女だが、俺が惚れたのは由枝の 心優しい−−、そぉ、母親が子供を思いやる「母親の愛情」を由枝に見たからである。 由枝は、若くして母親を亡くし、父に厳しく育てられた女だ。むしろ、母親がいなか ったために、その母親の愛を受けた幼児の体験を自分の心に深く刻み、より、女の美 しさ、優しさを身につけていた。いや、母親に理想の女性像を持っていたのかもしれ なかった...。 俺は、3本目のタバコを吸い終わると、由枝の寝顔に自分の頬を近かずけ、女の甘 い香りを吸った。女の微かな香りと、香水の臭いが入り混じり、俺を刺激した。俺は 女の頬を手で引きよせ、その濡れた唇へ、自分の唇を重ね、その軟らかな感触を楽し んだ。由枝は軽い吐息をつき、深く眠っているようだった。俺はふっと、現実に戻り、 ボ−トの上でのことを思い出し、由枝に呟いた。 「ごめん....、こめん....、俺は死ねないんだ。娘のことが....」 恭平の目からはとめどもなく涙が、流れた。 伊豆には、由枝との最後の想い出を作るために来た。伊豆は3年前、始めて2人が 結ばれたときの忘れられない場所だ。あのときはちょうど、妻に逃げられ、子供の こともあり、どうしてよいのかわからず、途方に暮れていたときだ。でも、由枝はそ んな俺を励まし、俺のグチまで呑み込んでくれた。由枝は俺に離婚歴があり、子供ま でいたことを告白していたが、由枝はなにも言わなかった。また、俺が逃げられた妻 のグチをこぼす度に「やめて、奥さんだった人のことは...」と、言い、耳を塞いだ子供にも優しく母親を演じてくれた。そんな、女だった。 だが、そんな2人の関係も、俺の求婚でもろくも崩れ落ちてしまった。由枝は父親 と、2人暮らしであった。その父親は酷く頑固者で、俺に離婚歴があり、子供までい ることがわかると、酷く激怒した。 「おまえのような男には、可愛い娘はやらん!まして、ふしだらな女が生んだ 子供までいるんだろ!2度と、娘の前には顔を出すな!」 と。さすがに、俺も子供のことまでをいわれ、頭に血が登り、その場を去った。 この父親に合うまでは、父と娘という同じ環境を経験しているだけに、俺のことを 内心、理解してくれるのではないかという、甘い考えを持っていたが、もろくも、そ の甘い考えは崩れ落ちてしまった。その後、その父親は由枝に縁談話しを持ってき、 なかば強引に由枝を説得した。由枝も、60を過ぎた父親のことを考えると、俺とは 一緒になれないと、泣いた。俺も由枝のことを理解した。表面上は....。そして、今日、由枝との最後になるであろう想い出の場所に来た。 今日、俺は東京駅に由枝を向かへに行った。由枝はいつものように、中年のおば さんが、買物のときに引きずっているようなバックをひっぱていた。俺はよく、その 姿を見て、笑ったものだった。その度に由枝は目尻に化粧シワを寄せて、苦笑してい た。 俺をみつけると、由枝は俺にいつものように手を振った。だが、由枝はいつものあ の明るい笑顔ではなく、目には光るものを貯め、悲しそうな目をしていた。
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