空中分解2 #1398の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
その奇妙な集会は、毎月一回欠かさず行われていた。集会の名は、黒こげ熊の会。 歴史はたいして古くはない。アシモフが『黒後家蜘蛛の会』を描き始めた頃、この会も 自然に出来上がっていた。要するに会員達は、黒後家蜘蛛の会を真似した集会をいつも 開くようにしたと言うわけである。この会では、いろいろなよもやま話を会の席上で話 す。また、お互いの教養なんかも披露しちゃったりなんかしてー。 ……思わず私の思考回路が、広川太一郎の語りを入れてしまった。これが、筆がすべる と言うやつなのかな、なんて思っちゃったりなんか、しちゃったりなんかしたりしてー。と、いつまでも無意識の世界に頼るのはやめよう。 さて、この会のメンバーは、毎回一人はゲストを連れてこなくてはいけないのがしき たりとなっている。今回のゲストは、松金太郎が連れてくる予定となっていた。 彼は売れない作家で、どちらかと言うと幻想的な文章を得意としていた。 松金はゆっくりといつも集まる場所に入って来た。 「やあ、遅れてすまない。」 「遅いぞ、松金。君はいつも人を待たせるな」 「そうかたい事を言うなよ、富岡。今日は素晴らしいゲストを連れて来たんだから」 富岡聡はパイプをくわえ、ぼんやりと煙を見つめた。彼の職業はルンペンであった。 ルンペンとは言うものの、その利益は莫大なものであった。月に三千万円は稼げると言 う。だが、富岡は控え目な性格なので、そうした事を自慢しなかった。 「紹介します。猿と人間のあいの子、猿田キキ男さん。」 「ウッキー。よろしく。ぼくの母親はサルですが、国籍は日本です。」 「これはこれは、猿田さん。今年はあなたの年ですね、おめでとう。」 富岡の隣に座っていた山田太郎氏が丁寧に挨拶した。彼は天文学者で、天動説をなんと か証明しようとやっきになっている最中であった。 「ありがとう、山田さん。さっそくですが、私に関する問題を解決していただけません か」 「解決出来るかは分からないが、聞いてみますか」 富岡はぼんやりとつぶやいた。昨日さんざんやったヤクが効いているらしい。 どこで手にいれたかは知らないが、多分どこかのドラッグストアだと思われる。 「では、話します……。実はですね、私の家内の様子がおかしいんです。妙にそわそわ している。何か隠し事でもあるんじゃないか、と思うんですが、なかなか尻尾を出さな いんですよ」 「まず考えられるのは、浮気だな。それとも妊娠したか」山田は言った。 「私もそう疑って、調査してみました。しかし、浮気ではありません。妊娠については まだ分かりませんが、これも違うでしょう」 「浮気ではないと確信しているのかい」 「そう、浮気ではない。その考えは頭からはずしておいて下さい」 「どんな風にそわそわしているんだい?」富岡が尋ねる。 「何かを待っていると言う感じです。あと少しで、と言った感じなのです」 「何かを待ってる、ねえ?何をだろう?何か注文したという事は無いのかい?何か大人 のオモチャを頼んだとかさ」山田が言う。 「ううん、そう言う風にも見えますが、私の家では特に困っているものはないと思いま すが……。幸い親父の遺産がありますから、買えないものはないし、御存知の通り私は 猿の血を引いていますから、夜の生活だって充実しています」 松金は、飲んでいたワインをブッと吐いた。 「……失礼。思わず想像してしまった。」 「いえ、構いませんよ。しかし、彼女は何をそんなに待ちこがれているんでしょう?」 「ううーん、状況がまだよくつかめないんだ。一目彼女を見れば解答が出るかも知れな いんだがな」松金は頭を抱えこんだ。 「あの、失礼ですが、奥様は人間ですか?」 ウエイターの上板和雄がワインを注ぎながら言った。 「えっ?人間ではあるが、どうしてだい?」 「もし奥様が宇宙人だったりしたら、宇宙からの指令を待っているかもしれないからで す。また、奥様が海底人であれば、海底からの指令を待っているでしょう。もし地底人 であれば、地底からの指令を待っていると言えます。また、ただの危ない人でもどこか からの電波の受信を待っている可能性が高い。」 「……誰か、彼をつまみだしてくれないか」 松金はあきれて言った。 「いや、ちょっと待てよ……。そうか、そう言えば、彼女は指令がどうとか言ってたな。どこからの指令か知らないが、寝言でそんな事をつぶやいていましたよ」 「なんて言ったんだい?」 「そう……そうだ。作戦ナンバー0268、地球爆破計画とか何とか。そうだ!確かに そんな事を言っていた。ぼくも寝ぼけていたから、すっかり忘れていた」 「それだ!それですよ」 上板は手を打って喜んだ。 「彼女は宇宙人です、これで確信しました。早いところ奥様を捕らえて拷問してみましょう。きっと正体をあらわしますよ」 「そうか、彼女は宇宙人か……。それで辻褄が合うな。」 「いいのか、そんな辻褄あわせで?もっと大きな謎はないのかい?」 山田は心配そうな顔をしてつぶやいた。 だが、猿田はにこやかな顔で言った。 「事実とは、そうしたものですよ。」 END
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