空中分解2 #1318の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
そこは、50年ほど前は貧しい淋しい漁村だった。 海を埋め立てて、広 大な土地になった今は、高層ビルが林立するオフィス街である。 清潔で、 静かで、インテリジェンスあふれる街になった。 昼食を終えて、遊歩道を散策する紳士淑女たちが、あちこちに見られる。 小春日和の日光を浴びながら、談笑するエリートたちは、「経済大国」を 満喫しているようだ。 場違いの男が遊歩道に紛れ込んできた。一見してそれと分かる自由人だ。 駅などでごろ寝をしている人種が、どうしてこんなところにやってきたの だろうか。 彼は、店であんぱんをひとつ買った。 汚い千円札を一枚出し て、おつりをしっかり握って、追い出されるようにしてその店を出た。 遊歩道の噴水の水でのどをうるおし、あんぱんを食った。 周囲の人々は 彼を避けて通る。 彼は便意をもよおし、トイレを探したが、初めての街で 見付けることができなかった。 仕方なく、彼は遊歩道の隅っこを探し、そ こでウンコをした。 そこは隅っこではなかった。 アベックたちのメイン 散策路だった。 四方から集まってくる若い男女が、彼の尻とウンコを見て 顔をしかめながら逃げていった。 彼は尻も拭かずにズボンをあげた。 夕方になり、夜になった。 夜遅くなってもビル街のどの窓にも明かりは 点いていた。 昼間の暖かさは嘘のように、冷込みが厳しくなってきた。 深夜になって、冷たい雨も降りはじめた。 さすがにビルの明かりは消え て、人通りもなくなった。 ひとり、昼間のあの自由人が雨に打たれながら 歩いている。 彼は熱を出していた。 めったなことでは人様にすがることはしない彼が あるホテルに入っていった。 ホテルの暖房は暖かかった。 ドアボーイの 手を降り切って、彼はフロントに近付こうとした。 数人の若い男たちが彼 を押し戻しにかかった。 「助けてください! どんな隅でもいいから、一晩寝かせてください」 「だめだ! 出てゆけっ!」 「寒気がするんです。 ぼろの毛布でも貸してくれませんか」 「うるさいっ! ここは、お前らのくるところではないっ」 彼は必死にお願いした。 だが、返事は、げんこつが数回あっただけだ。 弱者にはみんな強い。 鼻血をだし、髪の毛をひっつかまれて、彼はその ホテルから道路に放り出された。 冷たい冬の雨に打たれ、風邪の熱も高く なって、彼は震えながら、あてもなく歩き始めた。 後から、誰かが追ってくる。 ホテルの新米ドアボーイだ。 「おじさん! ごめんね」 「・・・・・・・・・・」 「ぼくは新米だから、何もしてあげられないけれど・・・」 新米ドアボーイは、毛布とビニール布とパンを彼に渡した。 「とっさのことで、これだけしか持ち出せなかったんだ。 ごめんね」 「ありがとう。 助かるよ」 「この辺は、新しい土地で、地下街もないなあ! 困ったね」 「あとは何とかするよっ! どうもありがとう」 「おじさん、熱があるんだろう?」 「うん! でも、大丈夫! ありがとうね」 あたいが、転居したのは、あの時さっ。 ご主人が胸ぐらを掴まれ、髪の 毛をひっつかまれていた、あの瞬間に、ホテルマンの袖にもぐりこんだって わけ。 ホテルは適温で快適そのものね。 あたいはあっちこっちに卵を産 み付けておいたわっ。 暖かくて、とても住心地がいいので、卵はどんどん 孵化していったわっ。 子孫が子孫を産み、今ではものすごい数になってい るはずよっ。 みんな真っ白のふわふわタオルに乗って、ホテルの全室に配 属されたのよっ。 ベッドに入ってくる人間の男女は栄養満点で、食うに困 らないし、男も女も下着の中が住心地最高よっ。 あたい? あたいは「しらみ」。 外見は紳士であっても、会議中に陰部を掻いているエライさんがいるでし ょう。 最新モードで身をつつんでいながら、オフィスの机のしたで陰部を 掻きながらもだえているOLもいるでしょう。 あれ、みんな、あたいの子 孫が血を吸ってるときよっ。 あそこの血が一番おいしいんだから・・・ みんな、あのホテルに泊まったから、こうなっちゃったのよ。 あのホテルは、「ホテル しらみ」って改名すればいいのよっ! かわいそうな、もとの、あたいのご主人! どうなったかな。心配だわ。 1991−12−07 遊遊遊遊(名古屋)
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