空中分解2 #1311の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「事務長! 変な会社から、葉書がきたんだけど・・・九州の妹の事が書い てある。 見てくれよっ」 「なにっ? 見せてみろっ。 ああ、これは、金貸し会社だよ」 採石場の事務所で、初老の事務長が作業長の相談にのっている。 作業長も 同い年で、ふたりは妙にウマがあう。 事務長が転任してきたとき、粗暴な態 度で、新任の事務長をふるい上がらせようとした鬼作業長だったが、今は猫の ようにおとなしい。 戦時中、アメリカ軍のB29が落とす爆弾や焼夷弾の下 を逃げまわった経験を、ふたりは共有していた。 作業長は、昭和19年の空襲で両親を失い、遠い親戚の家で育てられた。 いや、食料不足の時代を、かろうじて生かされてきたといった方が正しい。 寝小便をした。 おじさんは、そのフトンを彼に担がせて村中を歩かせた。 濡れたパンツの冷たさと屈辱で、体を震わせながら、泣きながら、彼は歩い たことを忘れられないといった。 ろくに学校にもいかず、彼は大人になり、 年寄になった。 子はいない。 それ以後の苦労を、彼は誰にもいわないが、 事務長だけには涙して語っていた。 彼には、売られるようにして引き離されていった妹がひとりいる。 もう、 40年も会っていない。 お互いに、荒れた生活をしており、居所も分からな い。 10年も前に来た葉書で、妹は九州にいるらしい。 九州から届いた葉書は、カタカナの名前の金貸し会社からだった。 妹さん の借金を、兄のあなたに支払って欲しいという主旨が書いてあった。 「事務長! オレ、どうしようかなあ」 「おまえ、500万円もあるのか?」 「ないっ」 「じゃあ、ほっとくしかないな」 「うん」 事務所を出ていく作業長の背中が丸くなった。 老いがしのびよっている。 1991−12−01 遊遊遊遊(名古屋)
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