空中分解2 #1237の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
第十三章 二人だけの世界 虚無の空間を、何日か漂った。EVEとふ たりっきりで、他に誰もいなかったが寂しく はなかった。私は彼女にDOGの使用法を教 えてあげた。通常、私以外の人間にはDOG を使わせないのだが、彼女には特別に許可し た。彼女のために新しいDOGを用意しよう とも思ったが、やめた。DOGは本来コンピ ューターの操作補助の機械なので、今の彼女 には必要はないと考えたからだ。それに彼女 はたくさんの知識を欲していた。それには新 品より、私の使い古したDOGの方が適して いた。私が直接教えてあげたかったが、私に は大事な作業があった。遺伝子が本当に異常 かどうか調べるという作業が。 私はDOGから配線を二本を引き出した。 一本は私が使う回線、もう一本は彼女が使う ものだった。彼女は出航以来、気に入ってい た点灯火をつけた。彼女の一番好きな照明だ。 彼女がコンピュをいじっている横で、私は作 業を進めた。多少実行速度が落ちているはず だが、気にはならなかった。 まず、どの遺伝子を標準とするのか、私は 悩んだ。今現存している人間の遺伝子は全部 異常なのかもしれない。大佐とは一日の決ま った時間に、メールで交信できることになっ ていた。まず、大佐に資料を送ってもらうこ とにした。私はその旨をメールに書き、大佐 に送った。ふと、隣をみると、EVEがコン ピュに熱中していた。 それから、外界から完全に遮断された数ヶ 月が過ぎた。大佐からの報告では、ADAM は植民星に逃げ込んだらしい。ADAMは私 達のいるノア6号を捜したのだろうか? 私の作業は、はかどっていなかった。それ とは裏腹に、EVEの学習のほうは順調だっ た。私は無意識のうちに、彼女の手助けのほ うに集中してしまっていたのかもしれなかっ た。EVEは外見に加えて、内面的にも女ら しく知的に変貌していた。私は彼女の色香に 魅せられて、作業を中断してよく彼女を抱い た。私は彼女を何度も抱いているうちに、彼 女が、少女から大人の少女へと変わったこと に気付いた。私とEVEは昼も夜も肉体的に も深く結ばれていた。精神的にもきっとそう だったように思う。 女色に溺れると、何かを見失うのだろうか? 遺伝子の欠陥はなかなか見つからなかった。 大佐からのメールでは「遺伝子の異常があっ た。」という博士の言葉以外の手掛かりはな かった。いったい何が異常なのか、雲を掴む ような話だった。出生率の低下は紛れもない 事実であり、何が原因があるはずだ。遺伝子 ではなく、生活習慣の変化か何かが原因なの だろうか。それに私は、この作業を続けてい ると、何か違和感のような感覚に陥った。違 和感に似ていたが、それとは少し違った感覚 だった。潜在的な不快感のような、近寄りた くない何か。大事な作業だと思いつつも、な んとなく気分が乗らなかった。一番古い遺伝 子のモデルは、五十年前の輪郭のはっきりし ない物だった。ここ五十年の遺伝子の変化を 時系列的に調べた。が、なにも出てこない。 博士はもっと以前のデータを持っていたのだ ろうか。私は大佐に、これ以上やっても無駄 ではないかとメールで伝えた。 人間を造ることはできた。造ることはでき ても、それは必ずしも、人間の体の謎をすべ て解いたということを意味してはいなかった。 遺伝子を元にして、体を培養し、知識等を埋 め込んでいるだけなのだ。 大佐からメールが届いたのは、その次の日 だった。大佐の声をそのまま、メールの文字 に変換したらしい。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− やぁ、博士!元気かな?いい知らせだ! ADAMが植民星で捕まった。もう安全だ ろう。ADAMはすぐ処刑されるだろう。で きれば、すぐ、戻ってきて、ADAMを検査 して欲しい。頼む。それから、いまどこにい るのかも知らせてほしい。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「とうとう、捕まったのか」私は呟いていた。 ふと、後ろを見ると、EVEがいた。彼女も メールを読んでいた。私は彼女の顔を見た。 彼女はなんとも言えない顔をした。EVEは ADAMになんらかの感情を抱いていた。私 は怒りに震えながら、メールを消した。私は 彼女に対して、暴力をふるうことも話すこと もできず、しかたなく彼女の前に立った。 私は雰囲気に耐えきれなくなり、部屋を出 た。彼女の目に、私はどのように見えている のだろうか。彼女に嫌われたくなかった。彼 女に自分一人を好きでいてほしかった。私の の脳裏に、小さな部屋のイメージが浮かんだ。 白い壁、そこで生活していた。私はそこで気 を取り直して、酒を飲んだ。そして、彼女を 抱いた。激しく抱きながら、彼女の気持ちを 確かめた。学習の成果か、彼女は利口になり、 自分の気持ちを隠そうという行動が可能にな った。ただ隠すのが、へただったので、かえ って逆効果だったが。私はEVEの記憶を探 ろうとも考えたがやめた。いま彼女にそんな ことをしたら、嫌われるかもしれなかった。 EVEはもう昔のEVEではなかった。私は 彼女が利口になったことが怖かった。それに 計画性もなく、人の記憶に手を加えるのは危 険なことだった。 地球を離れてから、三ヶ月もたっていた。 私はADAMのいる地球に向かった。今度は 漂うのではなく、時間と空間を越えて。 半日ほどで、地球にかなり接近した。地球 に近寄ったので、電波を傍受することができ た。EVEが、TVや新聞の情報を欲しがっ たので、私はそれを許した。彼女は最近情報 に飢えていた。彼女は新聞をプリントアウト した。その一面には、こう書いてあった。 【 軍の人間頒布、一億体を超える 】 私はそれを見た瞬間、無意識のうちにそれ をプリンターから破りとっていた。 「いったいっ、なんなんだ!これは!」 私は思わず叫んでいた。その後の文面も、 少しずつ打ち出されてきた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− バビロン計画は、軍の主導で再開されて以 来、順調。爆発的な勢いで、普及している。 しかし、その一方で、人間を有料で頒布し、 兵士、売春婦、奴隷として扱うことに対する 批判・・・ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「何だと、ばかやろう!ばかやろう!」 私の心は締めつけられて痛んだ。兵士なら ともかく、奴隷・売春婦とは。私は意味もな く、部屋を歩き廻った。苛立ちながら。 私は多くの、いたいけな、かよわい女性が 血も涙もない男に辱められているのを想像し た。許せない。そんなことは絶対に許せない。 私がそんなことに直接手を貸したとは。私の 心の中の良心が疼いた。なんとか、なんとか して、こんな酷いことは、止めさせないと。 人間として、許されることではない。 (そうだ。)大佐に連絡すれば・・・。もう 電話が使えるはずだ。 私は大佐に電話をした。自分自身の、そし て世界中の人間の正義と尊厳を守るために。
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