空中分解2 #1209の修正
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第三章 恋する小鳥 1 「いったい昨日はどうしたのよ。いきなり消えちゃって」 麻子が心配そうな顔で聞く。 「ごめんごめん。飲みすぎて気持ち悪くなっちゃって、先に帰ったの」 「周りの人に聞いたら、男の人と帰ったっていうから・・・」 「そうよ、知美と心配したのよ。何か悪いことされたんじゃないかって」 「そんなことないよ。送ってくれるっていうから・・・」 亜紀子の心を嫌悪が包む。 できれば、嘘はつきたくなかった。 だけど、もうあんなことは思い出したくなかった。 もう、悪い夢だと思いたかった。 そんな亜紀子の思いに気づいたのか、二人はもうその話をしようとはしなかった。 それより、亜紀子は、あの親切な男の子にあいたかった。 決して、背も高くないし、美男子でもないけど、とても優しかった。 見ず知らずの私にあんなに親切にして、お金まで貸してくれた。 「亜紀子ったら、また恋の目してる。ね、見て、麻子」 「ほんとだ、あれでもまだこりないのかしらね」 「うん、決めた」 「いきなりなによ、亜紀子ったら」 「あ・・・、ううん、何でもないの」 二人には、あの男の子と再会できるまで内緒にしておこうと思った。 2 次の日曜日、亜紀子はあの時くれた紙切れの住所を頼りに淳の家を捜すことにした。 二時間ほど、いろいろなところをあたって、やっと淳の家を捜し当てた。 「あのー、ごめんください」 「はーい、どなた・・・」 でてきたのは、まぎれもなく淳だった。 亜紀子は準備はしていたものの、いきなり淳が出てきて、びっくりした。 「あ、あの・・・」 「えーと、亜紀子、さんだったよね」 「はい」 亜紀子は、自分の名前を覚えてくれていたことにうれしさを覚えた。 「あ、あの時のお金。どうもありがとうございました」 「大変だったでしょ。ここまで来るの。この辺は家が多いからね」 「はい。結構」 「よかったら入らない?」 亜紀子はちょっと戸惑ったが、せっかく親しくなれるチャンスとあって、入ることにした。 それからの数時間は、あっという間に感じるほど楽しいものだった。 「じゃあ、そろそろ、帰ります」 「うん、駅まで送ってくよ」 そんな心づかいも亜紀子にはとてもうれしかった。 二人は、駅まで歩くあいだ、一言も話さなかった。 そして、駅についたとき、亜紀子は口を開いた。 「あの・・・、また遊びにきてもいいですか?」 「もちろん。いつでも来て下さい」 その一言で、亜紀子はこれからが楽しくなるような期待を抱いた。 3 「で、亜紀子。彼とはどこまでいったの?」 「だからぁ。まだ彼でもないってば。まだ会ったばっかり」 二人に話すと、すぐそっちの方向にもっていく。 「でも、亜紀子はお熱。そうなんでしょ」 知美のいうことはいっつも的をついている。 「・・・そんなことない」 「うそばっかり。だって顔まっかだもん」 そういって、麻子と知美は笑っている。 そういうふうに、話題を明るくしてくれる二人が亜紀子はとても好きだった。 次の日曜日、亜紀子はまた淳に会いに行った。 淳の家の近くに来たとき、亜紀子は淳に見送られている女の人を見た。 「淳くん・・・」 その瞬間、亜紀子は後ろを向いて走りだした。 亜紀子に気づいた淳が、亜紀子を呼んだような気もする。 だが、亜紀子はそんなこともかまわず走った。 見てはいけないものを見てしまった自分を恨んだ。 淳を信じた自分がバカだった。 しかし、それ以上に女の人を連れ込んでいた淳が許せなかった。 同時に、亜紀子は嫉妬している自分に気がついた。 淳に恋をしている自分に。 「どうしたのよ・・・。亜紀子?」 「ううん、なんでもないの」 「何かあったら言ってよね。ちょっとは相談に乗れるかもよ」 「うん。そうする」 麻子は、様子がおかしい亜紀子を見て尋ねたが、何があったのかを知ることはできなかった。 4 亜紀子は、憂鬱さを隠すように外に出た。 外に出ると、夕焼けの光がとてもきれいだった。 青い空と、黄金色の夕焼けが混じり、町全体が光っていた。 夕焼けの光は、亜紀子の体にも届いているのに、その光に温もりを感じないまま、亜紀子は歩いた。 遠くまで歩けば、自分の憂鬱さも薄れるのではないか、と亜紀子は思った。 大勢の人が、亜紀子のすぐ横を通り過ぎているのに、亜紀子には、その人々がすごく遠く感じた。自分が孤独に感じた。 それぞれの目的をもって歩いている人の中で、これといった目的も持たずに歩いている自分がとても場違いに思えた。 そう思い始めたときだった。 亜紀子の横を足早に通り過ぎて行く見たことのある影が見えた。 亜紀子の足が止まる。 そして、その影も止まり、振り向いた。 淳だった。 そして淳は何事もなかったかのように亜紀子に話しかけてきた。 「あれ、亜紀子さんじゃないか・・・」 亜紀子は対応に困っていた。 淳を忘れるためにここまで歩いてきたのに、こんなところで会うなんて。 「この前はびっくりしたよ。ぼくの前に姿を見せたと思ったら、走っていっちゃうんだからね」 そして、淳は黙っている亜紀子を見て、何を考えているかがわかるようにこう答えた。 「どうやら、君は誤解しているみたいだね」 「え?」 「君の見た女の人は、ぼくの姉だよ。血のつながってない・・・ね」 そこまでいわれたとき、亜紀子は初めて自分がとんでもない誤りをしていたことに気がついた。 何も言われてないのに、亜紀子は、淳が一人だと思いこんでいたのだ。 「あ、ご、ごめんなさい・・・」 「いいんだよ。だけど君ってわりとそそっかしいんだね」 そう言われて亜紀子の頬が赤くなった。 「せっかく会ったんだし、何か飲みものでも飲んで行こう」 「はい」 「あの人は、ぼくの義姉。父が違うんだ。だから名字も違う。そして、ぼくが小四の時まで、ぼくは彼女の存在を知らなかった」 亜紀子は、淳のそんな話を聞いて、何を答えていいかわからなかった。 淳はそんな亜紀子の困り果てた顔を見て、あわててこう言った。 「ごめん。変な話をしちゃったね。亜紀子さんには関係ない」 そして、二人はいろいろな話をした。友達のこと、学校のこと。 あっという間に二時間あまりがすぎた。 「あ、ごめん。こんなに遅くなって、亜紀子さんの親が心配するね」 「あ、ほんとだ。もうこんな時間」 「送って行くよ」 「あ、いいです。ここからなら近いですから」 家まで帰る間、亜紀子はいろいろなことを考えた。 そして、知美や麻子にいろいろな隠しごとをしていたことを思い出した。 「あした、二人に話そう。ぜんぶぜんぶ話そう」 END
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