空中分解2 #1207の修正
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メランコリーの小鳥 うぃず(久保 真輝) 第一章 夢の中の小鳥 1 もう雪はすっかり溶け、ふきのとうが顔を出してきた。 いつもよりも早い春の訪れだ。 教室の中に乾いた暖かい風が吹き込む。 そして、淡く柔らかい光が教室に射し込む。 卒業式も近づき、放課後には手紙を持った下級生が3年生の教室の前をうろうろしている。 2年生の上村亜紀子も、3年の男の子に思いを寄せている一人だった。 しかし、亜紀子は気が弱く、実行することができなかった。 ただ密かに思いを寄せているだけだった。 石井知美と加藤麻子は応援してくれるのだが、亜紀子は行動できなかった。 「ねえ、亜紀子、松永君に早く告白しちゃいなさいよ」 「そうだよ、知美の言うとおりだよ、早くしないととっちゃうぞ」 「でもー」 「だいたい亜紀子は気が弱すぎるんだよ、そんなことだから彼氏もできないんだぞ」 二人の説教を聴きながら、亜紀子は別のことを考えていた。 それに気づいた麻子がすかさずつっこんだ。 「亜紀子ぃー、いまべつのこと考えてたろー」 「そ、そんなことないよ」 「嘘ばっかり、ちゃんと顔にかいてあるよ」 「え、ほんとにぃー」 ほんとうに顔をこする亜紀子を見て二人は大笑いしながら、亜紀子のキューピッド役をやることを本気で考えなくてはならないと思った。 2 次の日、まだ陽気は続き気温もきのうよりぐっと上がっている。 授業中もみんな眠気と格闘している。 すでに脱落して先生に怒られてる人もいる。 亜紀子もそのうちの一人であった。 うとうとしかけた亜紀子を見てすかさず先生が攻撃をかけた。 「はい、上村。次のとこ読んで」 「えっ!は・・はい」 はい、とは言ったものの、亜紀子はどこを読むのか分かるはずもなくとまどっている。 しかたがなくまわりに助けを求めようとするが、まわりも全滅。 みんな首をかしげるばかりである。 無理だと分かった先生は、ザマミロとばかりに追いうちをかける。 「上村は、夢の中で俺の授業を受けていたようだな」 みんなから、どっと笑い声が上がる。 亜紀子は顔を真っ赤にしてうつむいている。 ”キーンコーン・・・” 教室のスピーカーから鐘の音が聞こえる。 いつもは、なんの気なしに聞いていたチャイムもこの時ばかりは救いの女神の声のようにも聞こえた。 「亜紀子ぉ、さっきは災難だったねぇ」 と、こぼれるような笑顔をふりまきながら、知美が近づいてきた。 「ほんっと、知美は調子いいんだから・・・、ちょっとは私の身にもなってよ」 「寝ていた亜紀子が悪い!!」 突然麻子が割り込んできた。 「それを言ったら、私の立場が・・」 そこまで言いかけたとき、ふと教室のドアを見ると、なんと松永君がいるではないか!! 見る間に、亜紀子の頬が染まる。 とくん、とくん、と規則的だった自分の鼓動が不規則に激しくなり、胸が苦しくなる。 「亜紀子、どうしたの? 顔が真っ赤よ・・・ 気分でも悪いの?」 知美が心配そうな顔をしてのぞき込んでいる。 「知美、あれよあれ、ほら教室の入り口!」 「え?どこどこ、麻子?」 「だから、もう、松永さん」 「あ、ほんとだ!」 「どうりで様子が変だと思った、ね、亜紀子、亜紀子ったら・・あれ、だめだこりゃ、放心してるもん」 もう、亜紀子には、二人の話は聞こえていない。 今、亜紀子の瞳には、あこがれの松永君しか映っていなかった。 松永は、すでに用事を済ませて教室から出ようとしていた。 いかないで、もっとそばにいて。 そう亜紀子は心の中で叫んでいた。 3 「そうねえ、この亜紀子の小心。なんとかならないもんかねえ・・」 知子も、真剣なカオをして同意する。 「そうよ、亜紀子ったらどうしてそうなのよ。このままでもいいの?」 「・・よくないけど」 「これだもん」 おてあげ、といったポーズで知美が言う。 「しっかりしないと、あたしたちが代わりに告白しちゃうぞ」 「え?そんなあ・・」 「いやなら早く自分からしなさい」 「・・・・・」 「じゃ、いいのね。ね、知美。明日にA計画実行ね」 「OK!」 「待ってよ、待ってったら、わかったわよ。もう・・」 亜紀子が泣きそうな顔でつぶやく。 「じゃ、決まり。で、何にするの?手紙?直接言うの?」 「・・・手紙」 「それじゃ、明日まで書いてくるんだよ」 「じゃあね、知美」 二人は、そう言い残すとさっと帰ってしまった。 「もう、二人とも。いいかげんなんだから。ひとごとだと思って」 亜紀子は、それでも二人がむりやりでもこういうチャンスを作ってくれたことに感謝していた。 「はあ・・。どうしようかなぁ」 亜紀子は、机に向かってつぶやく。 便せんも封筒もペンも用意してはいるのだがいっこうに何を書いていいのかわからない。 「とにかく、はじめだけでも書こう」 と、亜紀子はペンをとり、書き始めた。 「松永君へ。わたしは・・・・・・」 その夜、何時間もかけて亜紀子は心を込めて手紙を書いた。 それは、生まれて初めて亜紀子が異性に心を打ち明ける手紙だった。 「毎日、あなたを見ています。あなたは私に気づいていないかも知れない。だけど、私はあなたの声を待っています。毎日、あなたにあえる日を待っています。」 そのようなことを亜紀子は書き、三年生の松永の靴箱にそっと入れたのだった。 どうしてそんな大胆なことをできたのかわからかった。 そんな手紙を出してからずっと、亜紀子は返事を待ち続けていた。 しかし、松永はそれ以来ずっと亜紀子の前には姿をあらわさなかった。 たとえ、亜紀子の方をちらっと見ても、何もなかったようにそのまま姿を消した。 そんな態度が亜紀子をさらに傷つけた。 亜紀子はそんなことを二人に話すことはできなかった。 松永が一言でも、たとえ返事がどうあろうとも、手紙を読んでくれたことでさえ言ってくれればよかった。 そうしたら、二人に笑って伝えることができたのに。 しかし、いつまで待っても手紙は来なかった。 「ねえ、どうしたの?このごろ、亜紀子、変よ」 と、二人が聞いても、亜紀子は悲しそうに笑うだけだった。 「うん、ちょっとね」 二人もうすうす感づいてはいたが、そんな話をして亜紀子を傷つけるわけにはいかなかった。
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