空中分解2 #1193の修正
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CORE 〜中心の行方〜 時はたえず流れている。それは我々人間の為だけにA存在しているのだと思う。 川の流れとは違い、何にも止められず、何にも束縛される事はない、我々が言う、「 自由」と言う、その概念にあたるからだ。 しかし、それが(時間)と変わると人間が(人)へと変貌して行く。 相反する、見えない意識が、この世の存在をやがては消えていく未来を占っている。 ‥‥‥‥何かが叫び、何かが見守っている。‥‥‥‥ 1............................................................................忠は、今日で15歳になる。 夏の夜は突然、一人の人間を悪魔に変えた。なんの前触れもなく。 忠の母は、スーパーでパートタイマーとして働いていた。この日は、早く帰宅をし、そ れでも午後の8時を回っていた。玄関を開けて、靴箱の隣に忠の夕食だったランチセッ トの皿が洗って置いてあった。「〜っはぁーあ、ただいま」 台所に入って買い物篭を テーブルに下ろすと、冷蔵庫からミネラルウォーターをコップに注ぎ、ゆっくりとそれ を口にした。「忠、そこにいるの」母がそれを飲み干し水切り棚に戻していると、忠が 台所に入ってきた。 左手にはタバコをはさんでいる。 「外で吸ってないでしょうね」リサイクルのビニール袋から、いろいろなお菓子や、ジ ュースを取り出した。もう1つの袋からは、忠が愛喫のセブンスターが覗いて見える。 「ほら、これでいいんでしょ、ゆっくり使ってよ、すぐ使っちゃうんだから。」母は整 髪剤の高圧縮ムースを手渡した。 「うん、わかってるよ」忠は立体ビジョンゲームの続きをやりに自分の部屋へ戻ろうとした。 すると、忠の顔から血の気がなくなり、その場で立ったままもうろうとしていた。 しかし、片手には、タバコが挟まったままである。 忠の母は、はじめは、急に立ち止まった忠をみて気など留めなかったが、それから数秒 の間を置いて、次に忠の振り返った顔を見たとき、なにか不思議な、まるで自分の息子 を初めて見ているかの感覚にとらわれた。そしてその直後、母に感動がこみあげた。と うとう忠にもこの日が早くも訪れたのだ!それも15歳の誕生日になんて!! しかし、その感動も次の瞬間、不安に変わっていった。ーーどうして忠に、まだ15の 未熟な忠に、この大切な事がこんなに早く訪れてしまったのだろうか?ーー それはひじょうにまれなケースだった・・・・この時代、この人間進化的段階に至るま でノは、早くとも20歳代の半ば位が常識であった。だれもがこの段階を迎えると、れぞれ個々の持つ、性質に沿った、完全な人格形成が完成されるのだ。 10年程前からそれは中国から一般的な常識に迄定着し、ついで日本、イギリス、アメリカへとこの現象が認められ、数年のうちには世界中でほぼ8割の若者がこの、「S・H ・P」ースーパー・ヒューマノイド・プログラムーに覚醒、変貌されて行ったのである。 SHPを迎えると、誰もがあたかも「脳」というソフトウェアを新しいものと入れ換えられ様に、気力に満ち、記憶も鋭く、何といっても、「自分」という人格を最大に出せるの だ。20世紀でこの様な人間はさぞ、「魅力的な人!」ともてはやされたことだろう。 しかしこのSHPになる者の約0.001ラには、「悪魔」と言われる非常に恐ろしい人と変貌するものもあった。セが、ほとんどの人にその見分けをつけることは不可能でった。SHPとなった者でもある!。なぜならば、「神」的要素も兼ね備えているから である。だからといって、いわゆる「神」的なSHPに対してにも旧人類的な、SHP の親にあたる世代の者にとっては、それは「悪魔」でもあった。いまや各経営者のオウナーちは、こぞってまだ20代後半のSHPを見つけてきては、その完全な人格を目の当た りにして、いきなり幹部候補になる者も少なくなかった。なにしろ、やる気に満ち、頭 も良い、中には4・50代のエリートたちでさえ、心を預けることのできるSHPもい たからだ。それまでその会社の中堅にいた者にとってその存在は驚異そのものだった。 なかには自分の出世を見失って、自殺する者さえ出はじめていた。それはまさに、新時 代への調整期であった。突如として人類遺伝子の進化によって出没してきた《SHP》 2068年 8月 東京 2........................................................................... 東京の真夏は、気温が高い程、道行く人々に色とりどりの心が浮き彫りにされてゆく様 だ。晴天に届く程の超高層ビル群は、青々と輝くこの街のシンボルだ。その下には、欝 蒼と繁った公園の木々が今日も心地よい風を生産している。 新宿の環境整備には誰の目にもわかるほど、隅々まですっきり整っている。幅の広い車 道の脇には何百本にも及ぶ高級な木々が平行して続いている。ダスト・ボックスはの 根元に2本に1個の割合で設置されていた。ゴミの大半は地下のコンベアを渡り、1箇 所の集積場所へと送られ区分けされ、比較的大きなものは、区の新人警官によって地下 道を通って国営集積場へと運ばれていった。 SLカー(ソーラーカー)・電気自動車で溢れている車道の上空には、ジェット・ローターホバー車)が浮かんでいる。まだ日本ではパトロール車や救急車、国会議員か観光車でしか認められてはいないのであった。それらは全てコンピータ制御されてあり、万一非常事になると、酸素の調合されたヘリウムガスが自動で車内に蔓延し、さらに車の外脇につ いたゴム管へと送られ、気のなくなった風船の様に降下するという寸法だ。しかしいま だかつてそういった事はなく100パーセントの確率で事故を未然に防いでいた。それは実以前に20年もの研究をされた賜であるのだろう。 原色を着飾った人々に年齢の区別はなかった。若者の身長は益々伸びてその分、体はな えている様に見える。年輩であろうご婦人もしばらく前の時代とはちがって美しく装っ ていた。どこかのSHPによるテクノロジーの成果だろう。50歳台を越えてはいるであが、それ以上の見分けるのはだいたい難しく、何か見極められる術が必要な位であった。地価も益々限界な程跳ね上がり、この辺の地主はたいてい大手銀行か、大企業であった。実際、この街はもはや、“企業の庭”であった。しかもそう思っても優越に浸りながら ここに足を踏み締める者いた。地上げの見積額に躊躇する者もいなかった程だからだ。 しかもここは“楽園化”していた。外気には有毒ガスなどなく、大雨が降るものなら、 ホバー車道用の天井バリアが張って、雨水を専用貯水池へ流していたからである。しか も治安を維持するため、各個人にはIDなるカードを持つ事を義務付けられ、定期的に 検問をしていたからである。これは東京都内では常識であった。赤ン坊であれ、ペッあれ首や手に提げさせられていた。しかしこれを不服とする者はいなかった。誰もが願 っていた街造りの為だからだ。それをむしろ誇りにとも思うかのように。 3...........................................................................忠自身、それは予期せぬ事だった。あの日以来、自分に《SHP》なる覚醒症状は感じ られた‥‥‥しかし、医学のマニュアルとは‥‥‥自分の考えていたものとは、それは 明らかに事を異していた。あれから、精神的に何かがおかしいのである。 母は、いつも喜んだ様子で、早かったせいよと言っていたが、翌朝になっても〔何か解 らないもの〕が忠の心から離れないでいた。 「IDを書き換えるから近い内に、S・HP〈Sホスピタル〉へ行くのよ!」と、母。 「母さん、ちょっと様子がおかしいんだ‥‥」 「だから平気よ、もしその事が気になるんだったら、あそこは病院も兼ねているんだか ら大丈夫よ」――――――――――――――――――――――――――――――――― その夜忠はベッドの上で考えていた。あの問題を思考する度に視線が移り、体も動く。 そして、その動きをセンサーが読みとっては、身体・重心に合った窪みを造っていった 。時計の針は21時にさしかかっていた。外で庭の石粒が鳴る音が聞こえたかと思うと 、赤外線センサーが察知して液晶ガラスの曇りがさっと退いた。隣の家で飼っている三 毛猫が窓に映ったが、忠と目が合うとすぐに姿を消した。ボリュウムを下げてある防犯 ブザー音をリモコンで止めると、TVから着信ベルが鳴った。手に持っているリモコン のフック・キーを押すと亜紀の全身姿が映し出された。白いパジャマを着て、鏡を見な がら、長い髪を結っている。 「なんか、用でも?」と、忠。さっきから彼は不安になり苛立っていた。 亜紀はびっくりしてTVに振り向いた。 「あっ、珍しく早く取ったのね・・っもう、はずかしい!」亜紀は、素早くリモコンを 取り、ボリュウムを調整した。 「ったく、人を呼んでおいて覗き魔扱いかよ」忠はベッドに寝ころんだまま、頭を肘 立てしていた。 「ちょとなによ、タダシ、そっちの姿が見えないわよっ、これじゃほんとに覗き魔じゃ ないの!」 忠は、画像伝達キーを押して起き上がり、上半身を設定カメラに合わせた。 「ごめんセ・ツ・ヤ・クだよ、節約!…なんて‥ほんとはちょっと考え事してたンだ忠は上機嫌に装って言ったが、亜紀がそれを逆なでる様に言った「タダシが考え事ねぇ」「ちぇっ、用が無いならまたにしてくれよ」忠は自分の言葉使いの悪さに反省を促した。「なによ、人がせっかく心配…さっきタダシのお母さんから聞いたのよ、せっかくSH Pなったのに、1日中悩んでるって」亜紀は顔をしかめて、しばし忠の言動に困惑した。忠は亜紀から視線を逸らすと、薄いページの〔SHPの知識〕という本を取り、パラパ ラとめくった。そして、苛立った言動を詫びる替わりに真剣な表情を浮かべて言った。 「確かに、なにもかも自然に、新鮮に感じられるんだ。今までの記憶もより簡単に思い 出せるし‥1歳の時のこともだぞ。それに‥いつでも勉強も捗るし‥睡眠時間も3時間 あれば十分なんだ…」 「それなのにどうして悩んだりなんかするの?SHPでしょ?」 「SHPになったって誰でも悩むことはあるさ」忠は、悩みの種が何であるか理解でき ない自分に腹をたてた。〈誰もがみな、そうなるのだろうか?いやちがう…〉 確かに初めはあまりの‘事の重大さ’にためらいはあったが、忠の心には、このなにも かも輝いて見える〈時間までも!〉世界に入ったような感動で、一時は誇大妄想さえ、 よぎった程だった。しかしそのようなものはまるで、コンピュータ制御でもされたかの 様に、〈天然の、と言うべきか〉強力な理性で鎮められた。肝心な事は、何か得体の知 れない、生き物の様な《何か》が、忠の頭から離れなかったのだ。 忠は言葉を詰まらせて言った。「でも…考えても解らない…悩みなんだ」 亜紀は初めて見る、忠の苛立ちや苦しんでいる姿をみて、言った。 「2日くらい待ってて、知っている人紹介するから」――――――――――――――― 忠の家は、まだ半分、旧式な造りであった。それは忠の父母による考案からであった。 玄関扉も旧式のままで、取っ手の所にセンサーがあって、登録された指紋をもつもの以 外はその家人の許可済みナンバーを備え付のキーに入力しなければならないものだった。そして、台所・トイレも同じく、半手作動形式で出来ていた。この時代、寿命年齢は例 年のごとく縮み、女性でも70歳代前半であった。いくら科学が進んでも、ほとんどが 機械任せでは身体は老化へと進む。そしてその身体を造る食物も、企業策略による加工 物が至るところで延びこっていた。今や10代の成人病率は数年も前から世界中でトッ プクラス位置をづけている程で、他の国々からは「毒食い虫、世界の鏡」などと罵られ末だった。国民の多くもこの現実を知ってはいたが、『安くて、栄養満点!』の宣伝文 句に呑まれ、「それよりも」と個人ゝの趣味や娯楽、装飾品へと金々は交換されていた 。こういつた自業自得の習慣は、集合的無意識の進化とも言うのだろう。 忠の場合にも少なからずそのような環境生活で占められていた。忠の部屋はいわゆる〔 今風〕で、オールラウンド・リモコン、100インチ全運動通信式IC内臓TV、瞑想 カプセル、天井開閉式ドーム、センサー・ベッド、衛生通信式無線、赤外線感知液晶出 窓、携帯式小型発電機などであった。しかし中2階に増築した部屋には、オ-ルスポ-ツ・トレ-ングル-ムが置かれ、毎日、母の買ってきた新鮮な野菜や肉を食べ、米には麦も含まれていた。もちろん、それら新鮮なものには値が張るものが大半であった。これも父母からの 計らいと第2石油対戦で死を免れた祖父の軍事年金のからの賜であった。束の間の戦割には目にも余る金額であった。祖父が亡くなって3年が過ぎたが、未だそれはこの高 q家で活用されていた。生前、祖父は冗談交じりによくこう言ったものだった。「これほどルールのあった戦争は今までにないよ‥なんせ戦時中、重太はクリスマス・パーティーだっもんな!」すると母は、「そのルール戦争のおかげでまだ私たちは生きていられるのよ忠は1人っ子だった。それは別に両親の計画ではなく、たまたまそうなったのだ。 しかし今、忠は頼れる兄が欲しかった。 そうすれば少なくとも、今日の忠より落ちつけていただろう。 亜紀と話してから2日が過ぎた。朝食を済まして、父は部長を務める会社に向かい、母 は友人とテニス・スクールへ行った。あの日以来母は、スーパーをやめ、半年ぶりに家 にいるようになり、時々、「体がなまっちゃう」と言ってはいろいろな所で身体を動か していた。元々忠がそれを薦めていたし、辞めたパートの仕事も喜んで認めたのだった。―――忠の学校での成績は父母も認めていたし、彼自信、気持ちの優しい子であった。 亜紀との交際もそんな彼の人格を知った彼女からのアプローチであった。 中学に入ってから二人は校内では‘ひやかし’の的だった。15歳にしては忠は他の子 と比べて落ちつきがあり…若干ひねくれてはいたが!亜紀の方は早生まれで14歳の割 に自然な色っぽさが備わっており、肉体的に、もう‘女’であった。忠よりも成績も良 く、運動神経も良かった。それに何と言っても、飾りも必要としない美貌を持っていた 。ロング・ヘアの彼女の周りにはいつも{ミーハーな}女生徒がついていた。しかし自惚もしない性格の彼女の人格に忠誠を尽くしていると言った方が合っているのだろう。 彼女は忠の前になると、ある一面も窺えた。母性本能による感情だ。 忠の行きすぎる様な優しさを感じた時、それは尖った言葉で向けられるのだった。 ―――二人はまだ未熟だったが、完全な愛情へと進んで行く様に見えた。――― 4............................................................................「忠電話よ、亜紀ちゃんから」と、母。「うん、回して」と言う忠の言葉を確認して、 母はリモコンを取り、切り替えキーを押した。 忠がTVのスイッチ・キーを押すと、少し微笑んだ亜紀が映っていた。そして忠の表情 を確認すると言った。「おはよう」 「おはよう‥この前kはメン、ちよっと考え事してて」忠は照れくさそうに頭を掻きな がら言った。 「そんな事いいのよ、それよりタダシに会ってもらいたい人がいるのよ。」 「‘会ってくれる人’って、誰に?」 「いやだ、タダシに決まってるじゃない」 「違うよ、誰に会わせてもらえるのかって事だよ」 と忠。 「焦らないで聞いて‥父さんの知ってる人でね、薬師寺さんって方なんだけど、父さん が言うには、なんでもSHPの研究に興味がある、大京病院の精神神経科の先生なんだ って。」 「へぇー凄い、それでいつ会えるのその薬師寺さんとは?」忠はこの会話でこぶりつい ていたものがとれた気がした。そして同時に亜紀への感謝の気持ちでいっぱいになった 。「亜紀、ありがとう。」亜紀が答えようとした時に忠がつけ加えた。 一瞬、亜紀は言葉を呑み、また微笑んで言った。 「今日の午後4時頃に中野の自宅に来るようにってファックスが届いてたのよ。今日は早事が終わるそうなの‥勝手に決まっちゃったけど、大丈夫?」 「大丈夫だよ、ほんとにうれしいよ、じゃぁそれまで時間があるから渋谷にでも!?」 「ほんとに!久しぶりね渋谷なんて!」亜紀は両手を重ねてはしゃいだ。やはりまだ彼 女は少女である。 「今から15分後に駅前{新宿}のT・Tで会おう」――――――――――――――― 忠も亜紀も、徒歩で駅へと向かった。歩道を渡る若者の多くはまだ徒歩だったが、中に
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