空中分解2 #1168の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
平凡なサラリーマンだったT氏がある日突然大変身してしまった。変身 と言うとカフカを連想させるかもしれない。または仮面ライダーを思い 浮かべる人もいるだろう。カフカの変身とT氏の変身とちょっと違うの は、T氏が虫に変身したわけではないところにつきる。もともとT氏は ホモ・サピエンスであるからして、虫に変身する能力なんて最初から持 ち合わせていない。 その点でカフカは科学的に間違っていたと言いたくなるだろうが、そん なことはとりあえずどうでも良い。T氏が変身したと言うのはつまり、 朝起きたら突然脳細胞のどこか大事な部分がなんらかの原因で破壊され ていて、人格的に変調をきたしたと言う事である。 どういうわけかT氏は、自分がチョウチョになったと思いこんだのだ。 「僕は蝶なんだ…。そう、大空を翔ぶチョウチョ、それが僕である」 そうつぶやいた彼は、あたかも蝶がサナギからはいだすように布団から 出た。もうすっかりチョウチョの気分のT氏は、朝の太陽の光を全身に 浴びて生命の神秘を謳歌した。 「すっかりチョウチョになってしまった…。サラリーマンだった私が、 なぜこんな美しいチョウチョになってしまったのだろう!?なぜか不思 議なキ・モ・チ。」 だが、T氏の姿はどうみても人間であった。チョウチョになってしまっ たと思い込んでいるだけの話なのである。彼はネマキを着たまま、フラ フラと外に向かった。 途中、彼の妻と娘がT氏を呼び止めた。 「あなた、そんな格好で何処へ行くの?」 「お父さん、どうしたのよ?」 だが、T氏はその呼掛けには答えなかった。 そのかわりこんな言葉を残して去って行った。 「ヒラヒラ、ヒラーリ。僕はチョウチョだよ。ヒラヒラヒラー。」 妻と娘は、両手をパタパタ動かし去って行くT氏を見送った。 T氏は真面目なサラリーマンだ。突然そんな奇態を演じられて、妻も娘 も沈黙せざるを得なかったのであろう。 「チョウチョだよー」と言いながら去って行く夫を見て、彼女達が一言 も喋れなくなるのは当然と言えた。 T氏は外に出て、チョウチョみたいに手をばたつかせながら進んで行っ た。周囲の人々は驚きあきれ、あれが真面目なサラリーマンのTさんだ よとささやきあった。しかし、そんなささやきもT氏には聞こえなかっ た。なにしろT氏はチョウチョだと思い込んでいるから、人間の言葉が わかるのは不自然なのである。T氏は、ふとこんな事を考えた。 私は、もともと蝶だったのではないのか?サラリーマンのTは仮の姿で、 本来の姿はこの蝶だったのではなかろうか?なんだかそんな気になって きた。そうだ、私は本来チョウチョだったのだ。だからこのようにヒラ ヒラと飛べるのだ。(実際は飛んでいない。)花から花へ、パタパタと …。(実際は飛んでいない。) 「おい、あれはTくんじゃないのか?」 「あっ、本当だ。なにやってんだ?」 T氏の勤める会社の上司が、はばたく彼を発見した。T氏はいつの間に か会社の近くまでやって来ていたらしい。おそらく、習慣と言うやつで あろう。 「おい、Tくん。どうしたんだ?」 「……」 「どうしたんだ、黙りこくって、しかもそんな格好で!」 T氏は黙ったままだったが、しばらくして小さな声で、「チョウチョだ よー」とつぶやいて、来た道を「パタパタ、パタパタ」と言いながら戻 って行った。 「私はサラリーマンのTではない!!チョウチョなのだ!!チョウチョ だ!パタパタ、パタパタ!!」 その後、T氏の妻はノイローゼで自殺、娘もまた神経衰弱で苦しんでい る。T氏はと言うと、宇都宮の病院で療養中との事だ。 END
メールアドレス
パスワード
※書き込みにはメールアドレスの登録が必要です。
まだアドレスを登録してない方はこちらへ
メールアドレス登録
アドレスとパスワードをブラウザに記憶させる
メッセージを削除する
「空中分解2」一覧
オプション検索
利用者登録
アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE