空中分解2 #1135の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
四方を壁に囲まれた、チリ一つ落ちていない畳二枚ほどの部屋であった。よく 見ると、天井がいやに低い。もっと注意深い人は、それがまるでサイコロのよう な部屋であることに気がつくだろう。 天井に、十センチほどの四角い囲いのようなものが取り付けてある。マイクロ ホンかスピ−カ−のようにも見えるが、それは飾りにすぎない。天井の隅にテレ ビカメラが据え付けられているが、これも見せかけだけのものである。 この部屋に入ったものが驚かせられるもう一つのものは、その部屋の中で発生 したすべての音を吸収してしまうという、壁や床に仕掛けられた特殊な音響装置 である。それは、90%以上の音を吸いこんでしまうという。 ぼそぼそと口に出した声など、わずか1メ−トルも離れていない相手の耳に届 かないうちに壁や床に吸い込まれてしまうのであった。なにしろ自分の発した声 ですら、頭蓋骨を通してしか鼓膜に届かない、という寸法である。 そればかりではない。あることばに敏感に反応するように仕掛られているとい われ、現に、「ハ*」と大声で叫んだにもかかわらず、それはむなしく壁や床に 吸い込まれていくばかりである。 髪の薄いことを気にしておられる向きもあるが、あれは、好きになった人が出 来たときにその思いが髪の毛一本に託されて相手のところに飛んでいく、のだそ うだ。なんともうらやましいことではないか。 むかし、チョンマゲの頃、「さかやき」といって額を青々と剃る習慣ががあっ たが、あれも゛わたしの心はあなたにあります゛という告白(君主に対する絶対 の誓い)の表れであった、という説もある。女性が眉を剃ったのもその例に習っ たものに違いない。 で、「ハケに毛はありハ*に毛はなし」などと、その部屋で大声で言ったとし ても、それは間違いなく90%以上は吸収されてしまう。 あるいはまた、沖縄県の那覇というところに万湖という中州があるが、これを その部屋で「マンコ」と唱えたところで、その部屋にいる誰の耳にも「マンコ」 と聞こえるが、お上品にも「お」などを頭につけて「おマ*コ」などと言ったら 、たとえそれがささやくような声であったとしても百パ−セント壁や床に吸収さ れる仕組みになっている。ちなみに「ブ*」も百%聞こえないそうである。 さて、この部屋のドアに掛けられている表札には、いかめしい字で次のように 書かれてある。 『論争のための部屋』 イス一つ置いてない、サイコロのような四方壁ばかりの部屋で、どんな喧嘩腰 の論争が出来るものか、想像力の貧困なわたしらに想いも浮かばないが、それ以 上にわたしがいま胸を痛めているのは、その部屋が結局のところ、男女あるいは 男同士の密会のために使われるのではないか、ということである。 昨今の若者たちは、あの行為のあとを拭った下着を平気でそこに捨てていくと いうし、なかには避妊のためのあれをむきだしのまま、放り出していくツワ者も いるという。 わたしは、やはり管理人として百戦錬磨のオバタリアンを雇う必要があるのだ ろうなあ、と本気で心配しなければならないのであった。 おわり
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