空中分解2 #1130の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
飛ぶ人間シリーズ 3 修行すれば空を飛べるようになる。そう、チラシには書いてあった。 街頭で配られていたチラシを何気なくうけとった会社帰りのS氏は、その内容に驚いた。「あなたも飛べる」と、でかく書いてある。本当かなと思いつつも、さらに読み進んだ。 あなたは飛びたいと思った事はありませんか。私はあります。 大空に向かってピョンピョンはねて、飛ぼうと思った事はありませんか。 私はあります。 では、傘を利用して高いところから飛べば、フワフワと落ちてくると思って実行したところ、大怪我したといった事はありませんでしたか。 私はあります。 さらに、念力で念じれば飛べると夢想して、実際「飛べ、飛べ。」などと念じた経験はありますか。 私はあります。 普段から、飛びたいな、と思っているあなたに朗報です。今回インドから来日したイラン人修行僧、オマル=デ=ンコスールさんの講義を聞けばもう安心。たちまち空を飛べることうけあいで、近所でも評判になることでしょう。しかとあなたの目でお確かめ下さい。講義は分かりやすく、親切丁寧に指導いたします。あなただけに、破格のお値段でご奉仕いたします!!あなただけに!! …ううむ本当だろうか? S氏は思った。本当に飛べるのか?どうもうさん臭いぞ。だいたい、どう言う原理で人間が飛べるのだ。そのへんをはっきりさせて欲しいなあ…。でも、俺は昔から空に憧れていたわけだし、本当に飛べるんだったらそれにこしたことはない。ここはひとつ、だまされたと思って行ってみようかな。インドから来た修行僧だ、ひょっとしたら本当に飛べるのかもしれないぞ。なにしろ、相手はインドだ。東洋の神秘もかなう相手ではない。これは、ひょっとしたらひょっとするぞ。どうせ帰り道なのだから、ちょっと寄り道してみるか。 S氏は、そのチラシに書かれた道をたどり、ぼろっちいビルの前に到着した。 「ボロビル」と、入口には書かれていた。 それはひどい、ほとんど倒壊しそうなほどのオンボロビルであった。窓ガラスはほとんど割られていて、さらに暴走族が書いたのであろう落書きがあちこちに書かれていた。 なぜ彼らは「みなごろし」(ワープロにも無いようだ)なんて言う難しい字をしっとるのかな?永遠の謎だ、などと思いながら、S氏はボロっちい階段を昇った。腐ったコンクリートは、S氏が階段を昇るごとに崩れていった。 「ボロビル」の12階。 「一緒に飛ぶ会」と言う看板が、ドアの外にでかでかと掲げられていた。その文字は実に下手な文字で、ミミズが爆発してコナゴナになったような文字であった。つまりそれほど下手な文字だったと言うことだ。 下手な字だなあ!と思いながらS氏は呼び鈴を鳴らして、ドアを少し開けた。 「すみませーん。誰かいますか?」 誰もいない。だが、しばらくして、返事があった。 「はい…」 その声は、上の方から聞こえた。 「ひょ、ひょっとして…。」 S氏は恐るおそる上を見た。 やっぱりだ。 そこに、スーツを着た男がいた。 その男は、天井にへばりついていて、S氏をじっと見ていた。 「ワーッ、ワーッ!!ワーッ!!浮いてる、浮いてるうー!!」 S氏は、正気を失って大騒ぎした。 「お客さん、静かにして下さい!何をびっくりしているんですか!」 「ウ、ウウー…。だって、だって、あんた浮いてるじゃないの!!」 「ああ、これですか。大したものでしょ。あなたも是非、講座を受講してみて下さい。きっとあなたにも出来るようになりますから。」 「本当?本当に出来るのですか?」 「ええ、簡単なものです。きっとあなたにも出来ますよ。」 「や、やります、やります!!飛べるためだったら、何でもやります!」 こうしてS氏は「一緒に飛ぶ会」に入会した。入会金は異常に高かったが、S氏はなんとか払った。貯金をほとんどおろしての入会であった。入会と同時に苦しい特訓が待ち受けていた。S氏は何度も死にそうになったが、なんとか耐えた。講師のオマル=デ=ンコスールは、飛ぶ原理や心構えをわかりやすく教えてくれた。 要するに、オマル氏はチャレンジ精神が大事だと言うことを説いた。 「やれば、出来る。」 そう何度も言われた。 S氏は、本当に飛べるような気がしてきた。 「アナタハトベル。アナタハトベル。」 「俺は飛べる!むおおお!俺は飛べるぜ!飛ぶぜ!イヤーッ!」 「オオ、チョトマテクダサイ!」 S氏は、窓ガラスを突き破ってビルから飛び降りた。 「おおー、飛んだ、飛んだ!」 彼の体が上昇していった。 S氏は、飛んだのだ! 「ソ、ソンナバカナ?」オマル氏は、飛びまわっているS氏を見てそう思った。 しかし、事実飛んでいるのだから仕方がない。 S氏は思った。やれば出来るものだな。だが待てよ。どう言う原理で飛んだのだ?なんで飛んでるの?あれ、これはおかしいぞ。 S氏の高度がどんどん落ちて行った。 「やばい!」 と思った時にはもう遅かった。 地面はすぐそこだった。 「ぐわあああ!!助けてくれえ!」 S氏は、堅いアスファルトに思いきり激突した。 頭蓋骨は割れ、脳漿が周囲に飛び散った。 それを見た通行人は悲鳴をあげた。 一発で即死であった。 「いい素質だったのに、残念な事をした…。若者よ、なぜ死を急ぐ…。」 オマル氏はそう思い、下を見た。 大空への夢を抱きつつ死んで行った若者は数多い。S氏もその一人となった。 残念な事をしたものだ。 だが、S氏は根性の人だったので、そのあとすぐに生き返った。たいした生命力だ。 要はやる気だと言うS氏のモットーがよく現れている。 「イテテテ!おお、痛かった。失敗失敗。 でも、ちょっとだけ飛べたから良しとしよう。」 S氏は、脳漿をかき集めながらつぶやいた。 通行人はびっくりしたようだったが、S氏の「大空への情熱」をかいまみて、なかなか立派な若者が現代社会にもいるものだと感心したようである。 END
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