空中分解2 #1115の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
○ 同・屋上 屋上でバレーボールをしたり弁当を食べたりしている 社員達。その中でグループから離れて北室と阿倍野が 二人で話している。 阿倍野「ところで北室、お前の名古屋の出張はいつだったっけ?」 北 室「一か月後。まだ少し先の話だ。それがどうした?」 阿倍野「いやあ、それは別に……いいんだ」 北 室「ほう……」 二人、黙り込む。白けた雰囲気。 阿倍野「この前、何かあったのか?」 北 室「何かって?」 阿倍野「ほら、この前の『ソールトレイン』の時さ。何か彼女と言 い争ってただろう?」 北 室「ああ、その事か」 北室、阿倍野を怪訝な目付きでみる。 阿倍野「何か彼女を怒らせるような事でもしたのか?」 北 室「そんなんじゃないよ。じゃあな」 帰ろうとする北室の前に、阿倍野、立ちはだかる。 阿倍野「とにかく何かあったら何でも相談しなよ。俺に出来る事な ら力になるよ」 北室の阿倍野を見る目が険悪になる。 北 室「お前に出来る程度の事で俺の問題が解決するってのか?」 阿倍野「……何を怒ってるんだ?」 北 室「お前の考えが見え透いているからだよ」 阿倍野「何の事だ?」 北 室「とぼけるな! お前、真知子の事どう思ってるんだ?」 阿倍野「(驚き)なんでそんなことを聞くんだよ?」 北 室「大概他人のもめ事に首を突っ込みたがるのは下心がある証 拠さ」 阿倍野、一瞬うろたえるが、すぐに笑ってごまかす。 阿倍野「その……何て言うのかな……(照れながら)俺の理想のタ イプだったりするんだよな」 北室、阿倍野に背を向けて立ち去ろうとする。 阿倍野「(慌てて後を追いかける)おい! ちょっと待てよ!」 阿倍野、慌てて北室に追いつく。 阿倍野「そう気を悪くするなって。別に彼女をお前から盗ろうなん て思っちゃいねえよ」 北室、阿倍野を見る。 阿倍野「俺はただ……その……忠告してやってるんだ。彼女はあの 通り美人だしさ……いつなんどき俺みたいなやからに狙わ れるかわからない。大切にすべきだっていいたいんだよ。 それだけだよ」 北 室「有り難いお言葉」 阿倍野「女には誠心誠意尽くすべきだよ。彼女を怒らせるような事 はしない事だ」 北 室「肝に銘じておくよ」 阿倍野「(非難めいた口調で)なんで彼女を怒らせてたんだ?」 北 室「……」 阿倍野「まあ大体想像はつくけどな」 北 室「なんだよ」 阿倍野「ありふれた理由だよ。お前は彼女の心を踏みにじったんだ。 白状してみろ。例えば他の女と二股かけててそれがバレた とかだな……」 北室、呆れ、そして段々と怒り出す。 北 室「(阿倍野の襟首を掴んで)あてずっぽうもいい加減にしろ よ、この野郎!」 阿倍野「違ったかな?」 北 室「(阿倍野を離して)もういいよ。それより浮気はお前さん の方だろう」 阿倍野「何だよ、それ」 北 室「社内の噂ではお前さんは年上で人妻の彼女がいる事になっ てる。俺はこの前、その事実を確認した」 阿倍野「(うんざりして)その話は止めろよ」 北 室「俺の方こそ忠告しといてやるが人並の恋をしたかったら、 あんまり乱れた事は慎んどけよ。じゃあな」 北室、去って行く。 ○ ラブホテル「ロマンス」・外観 派手なネオンの立て看板。 ○ 同・客室 北室と真知子がベッドで愛し合っている。 二人、やがてお互いの身体を離し、真知子、ため息を つく。 ○ 同・翌朝 北室、目覚めてベッドから起き出す。真知子はもう既 に起きて着替えている途中。 ○ 道路 二人、歩きながら話している。 北 室「提案があるんだ……」 真知子「なあに?」 北 室「俺達、しばらくの間だけ少し距離をとって付き合ってみな いか?」 気まずい沈黙。 真知子「……本気で言ってるの?」 北 室「このままじゃあ埒があかないよ。一度やり直すつもりで別 れた方がいいんじゃないかな」 真知子「本当にやり直そうと思ってるの?」 沈黙が流れるが、先に北室が口を開く。 北 室「やり直すっていうのはだな、何も二人がやり直すわけじゃ ない」 真知子、不思議そうな表情で北室を見る。 北 室「……二人が……それぞれやり直せるかも知れない」 真知子、キッとした表情で北室を見る 北 室「(真知子の心を見透かしたように)そういう事もありえる っていうだけの話だよ」 真知子、黙って北室を見据えているが、やがてため息 をついて言う。 真知子「貴方のいう通りかもしれなしわね。このまま続けてて埒が あかないんだったら……」 北 室「……でも……まあ、また仲直り出来るとも限らないしね… …だからある意味でこれは賭だ。二人が本当に仲良くなれ るかどうかの」 真知子「それで……いつまで別れてるの?」 北 室「それは……明日までかも知れないし、九十年先かもしれな い」 真知子「どっちなの?」 北 室「もし別れててもお互い寂しさを感じず、相手の方を必要と しなかった場合は九十年だ」 真知子「明日の場合は?」 北 室「とにかく二人の内どちらかがどうしても会いたくなって相 手を必要とする時。その時には連絡をとって会おうじゃな いか」 真知子「愛を再確認する訳ね」 北 室「いい考えだろう?」 真知子「いかにもアメリカかぶれの貴方らしい合理的な考え方だわ」 北 室「君は俺のアメリカかぶれなところが嫌いなんだろう?」 真知子「そういう訳じゃないけど」 北 室「俺がアメリカに引かれるのは…その…自由だからさ。前に も話したろう。俺はアメリカでいろんな職を転々とした。 そして自分の気に入ったいい仕事をした時にはすぐに実力 を認められて重要な役目を任されたんだ。そうなるのに周 りの何の抵抗や妨害も感じなかったな。その自由な気質が アメリカに引かれる一番の理由さ」 真知子「日本だって自由よ」 北 室「そうだけどまだ完全とは言えない。例えばだ……前に俺は ある仕事を任されそうになった。これ以上俺に合った仕事 はなかったし、俺以外にこの仕事を出来る者はいないと思 う程だった。俺は俄然張り切った。しかし、重役の一人が 俺はまだ若すぎると言った。(吐き捨てるように)結局仕 事は、歳は俺より上だが実力はNo.2の男が選ばれた」 真知子「その話は知ってるわ。でもそのおかげで私達こうして一緒 にいられているんじゃないの」 北 室「俺は完全な自由が欲しいんだよ」 真知子「でもそれが日本の風習なんだから仕方ないじゃない」 北 室「そうだな。俺には古い日本の風習は合わない。弱い国の風 習は合わないんだよ」 真知子「…………」 北 室「古い風習に従って弱い人間同士が集まってできてる。だか ら自分より優れた者を見ると驚異を感じ安いんだろうな」 真知子「アメリカは強いの?」 北 室「他人の実力を認める勇気があるのさ。俺は自由で強い者が 好きなんだ」 真知子「貴方がアメリカが好きな理由はよくわかるわ」 北 室「…………」 真知子「でもね、進悟。自由って一つ間違えれば利己主義に変わっ てしまうのよ。例えばアメリカが自由貿易を押しつけてく るとその影響で苦しむ人々だってきっといるはずよ」 北 室「まあそういう人々がいる事は認めるさ。でもそんなのは極 小数だろう?」 真知子「そうね。極小数ね。でも苦しみは苦しみよ。誰が味わうに したって苦しみがある事にはかわりないわ」 北室、立ち止まり、先に歩いていく真知子を眺める。
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