空中分解2 #1113の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
○ 今内商事・外観 北室の勤める一流の商事会社。北室が中へ入っていく。 ○ 同・1Fフロア ソファーにロングスカートにカーディーガン姿の女 (坂本真知子・24)が腰掛けている。誰かを待って いる様子で時々時計を眺めたりしている。廊下の方に 目をやるとそこに薄い灰色のスーツを着たある男の後 ろ姿が見える。真知子、にやりと笑い、その男に足音 を立てないようにして近づき、男の背後に立つ。 真知子「進悟!」 真知子、男の背中を両手で押す。 真知子「(怒って)遅いじゃないの!」 男、びっくりして振り返る。その顔は北室進悟ではな く、その同僚である阿倍野耕一(24)のもの。 真知子「(びっくりして)ご免なさい! 人違いでした!」 阿倍野「ああ、びっくりした」 真知子「どうも失礼しました」 阿倍野「(真知子を輝くようにみて)いえ、いいんですよ。どうぞ 気にしないで」 二人、しばらくそこに佇む。 阿倍野「(真知子に)待ち合わせですか?」 真知子「ええ、三時に約束してたのに……」 阿倍野「忘れてるのかもしれない。誰だか教えて下されば呼びに行 きましょうか?」 真知子「いえ、もう来ると思いますから」 北室「(真知子の背後から)どうしたんだ?」 真知子、振り返ると北室の姿。 真知子「(微笑んで)進悟……」 阿倍野「北室君の知り合いですか……」 真知子「(二人を交互に見てから北室に)知り合い?」 北 室「同じ営業三課の同僚だよ。俺と同期で名前は阿倍野……何 だったかな?」 阿倍野「耕一だよ。阿倍野耕一。よろしく」 北 室「こいつは坂本真知子。俺の高校時代からの付き合いなんだ」 真知子「よろしく」 北 室「(真知子に)何があったんだい?」 真知子「この方の後ろ姿を貴方と間違えて押しちゃったのよ。恥ず かしかったわ」 北 室「(苦笑して)こいつの後ろ姿と間違えたのか?」 真知子「でもよく似てたわよ」 北 室「(冗談めかして)どうせならもうちょっとマシな奴と間違 えろよ」 阿倍野「(笑って)今の言葉そっくりそのまま返してやるよ」 三人、笑う。 阿倍野「でも北室ったらこんな素敵な彼女がいるなんて全然教えて くれないんだもんなあ」 真知子「あら、いえ、そんな……」 阿倍野「北室がもうちょっと来るのが遅かったら友達になるいいき っかけが出来たところなのになあ……。惜しい事した」 真知子「あら、それってひょっとしてナンパ?」 阿倍野「まあ有り体に言えばね」 北 室「まったくいい加減にしろよ、この女たらし」 阿倍野「(冗談めかして)またこの次に会う機会があればまた背中 を押して下さっても結構ですよ」 真知子「(笑う)まあ!」 阿倍野「さて、邪魔者は消えるとするか」 阿倍野、その場を去る。 北 室「(皮肉っぽく)随分と楽しそうだったじゃないか」 真知子「貴方が早く来ないからよ」 北 室「別に悪いとは言ってないぜ」 真知子「そんな話をしに来たんじゃないわ」 北 室「何の用だい?」 真知子「今日の九時にいつもの『ソールトレイン』に来てほしいの よ。それだけよ」 北 室「(呆れ顔で)それを言う為にわざわざ待ち合わせたのか?」 真知子「(ため息混じりに)たまに会ったのにそんな言い方するの?」 北 室「たまにしか会えない程忙しいんだ。そんなつまらない事で いちいち呼び出すんじゃない。電話で済む事だろう」 真知子「とにかく会社が終わったら『ソールトレイン』に来て。九 時よ」 真知子、呆れ顔の北室を残して去ってゆく。 ○ 同・営業三課室内 北室、入室する。同僚の青田直子(22)が北室に声 をかける。 直 子「あっ 北室さん。部長が、部長室まで来て下さいって」 北 室「あ、そう。わかった。すぐ行くよ」 直子、好意的な目で北室を見る。 ○ 同・部長室 部長の増田(41)が北室にお茶を勧めている。 増 田「仕事ぶりはなかなか順調じゃないか」 北 室「恐れ入ります」 増 田「ところで、君は前にアメリカのサンディエゴでの事業計画 の主任に任命されかけた事があったね」 北 室「ええ、しかし私にはまだ大事業の仕事は早すぎるという事 で二課の前田さんが行く事になりました」 増 田「君は行きたかった?」 北 室「あの時は。でも今となってはこっちの仕事の方にやりがい を感じてますよ」 増 田「その君のやりがいに水を差すようで悪いんだがもう一度あ の仕事をやりたいとは思わんかね?」 北 室「(驚く)しかし前田さんは……」 増 田「……彼は辞表を出したよ。……ロサンゼルス支社でな」 北 室「!……」 増 田「彼にやらせたのは間違いだった。彼は辞表を出すと逃げ出 すようにして日本に帰ってきたんだ。かなりひどいホーム シックとノイローゼだったらしい」 北 室「……」 増 田「二課の課長に言わせると彼は仕事も出来るし、単身赴任の 経験もある。英語も出来るから適任だった。もっと骨のあ る男だと思っていたのに……」 北 室「英語が出来るのと海外で暮らせる事とは違います」 増 田「ふむ」 北 室「前田さんの場合、英語を覚えたのは英会話スクールでした。 それだけでは生きた英語は話せませんし、第一外国で暮ら せるとは限りません。私に言わせればアメリカで暮らせる 人種は二種類しかいません。一つはアメリカそのものが好 きである事。あのアメリカの自由で若々しい精神が好きな 事です」 増 田「で、もう一つは?」 北 室「アメリカそのものもそうですがアメリカに知人がいてその 人の事が好きな事です。親や兄弟、或いは……」 増 田「恋人か夫婦?」 北 室「そうですね」 増 田「君は学生時代にアメリカで暮らした事があるそうだね」 北 室「高校の時、子守とピザの宅配のアルバイトをしながらの無 銭旅行でした」 増 田「君もアメリカに恋人がいた口かね?」 北 室「……えっ、ええ、まあ……」 増 田「それでどうかね? 一つやってみる気にはならんかね」 北 室「……はあ」 増 田「まあ確かに一度降ろされた仕事をまたやってくれなんて言 うのは、いろいろ勝手を言うようで悪いとは思ってる」 北 室「いえ、そんな事は……」 増 田「しかし君はアメリカにはあんなに行きたがってたじゃない か。(笑って)ひょっとすると昔の恋人にまた会えるかも しれん」 北 室「今は恋人は日本にいます」 増 田「私が勧めたお見合いを断らせたあの恋人の事だね」 北 室「……」 増 田「別に強制的な事じゃないんだ。君が適役だと思ったから言 ったまでだ。返事はすぐにでなくてもいい。じっくりと考 えて欲しい」 北 室「……はい」 増 田「アメリカに行くからって何も恋人と別れろだなんて言って おらんよ。一緒に連れて行けばいいじゃないか。本当に仲 のいい恋人同志で信頼しあっているなら、女は男の後に付 いて行くもんだ」
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