空中分解2 #1068の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「まいったなぁ………もう………あたしは迷路が苦手なんだからね……と言っても どうにかなるわけじゃないか…………」 たしか、あたしは学校から帰る途中だったはず。いつもの通学路に見慣れた景色 、迷うなんて事はないと思う。だけど………ここはどこ?いつの間に道路工事をやっ たんだろう? そこはもう迷路といってもいい通路だった。周りは住宅地のようなもので囲まれ 行けども行けども広い通りに出やしない。そうよ、だいたい十字路が見当たらない んてどうなってるの? 「あーあ…これじゃあ、この前行った巨大迷路思いだしちゃうわ。あんときは最悪 だったものね。5、6時間歩いて結局出口にたどり着けずリタイアしたし。」 あーあ、やだやだ。知らないうちに独り言言ってる。誰もいないのに変よね。 疲れてくると何か喋りたくなるなんて、欲求不満なのかな? もう何時間歩いたんだろう?そう思うと疲れがどっと出てくる。 そんなふうにくじけているあたしのもとへ流れてくる爽やかな風。 心の窓辺へフワリと舞い込んでくる優しい風。 あなたは何を運んでくるの? 時?………それとも魔法? きっと誰かの胸も踊らせているんだろね。 「うーん……いい風………」 あたしはおもいっきり背伸びをする。ついでに両手を広げて大きく深呼吸。 なんか、いい気分。久しぶりの爽快感。 それになんだかウキウキする、小さい頃男の子に混じって冒険ごっこをやったあ の時の感じ。忘れてたわけじゃないんだけどね、どうしてだろう?今頃思い出すな んて。 「あれれ?いつのまにか室内迷路になっちゃった。ずいぶんご都合主義の空間ね。」 夕暮れの空はオレンジ色の天井。 ブロック壁は真っ白な仕切り板。 アスファルトの道は星の輝くミルキィウェイ。 あたしもそうとう鈍よね。変わったのにぜんぜん気がつかないなんて。 でも、不思議。どこかに閉じ込められてるのに、ぜんぜん息苦しさを感じないの。 出口はどこだろう?このままいるのも悪くない気がする。 でも、出口を探さなきゃ。このままじゃいけないもんね。 「あった、出口………」 しばらく歩いて見つけた出口。それは黒い平凡な扉だった。 そこを開ければ出口だという事を、なぜか感じとっていた。 まだ、道は分かれて続いていたけど、出口である事に間違いはないようだ。 あたしは、そっと扉に手をかける。なんのさしさわりもないただの扉だ。 あたしは、その扉に何か期待していた。 たかが扉よ。なんで?……… 少し戸惑いながら扉の前に立つあたしは、ふいに漂ってくる香りに懐かしさと心 のトキメキの両方を感じてた。 香りの方向は、分かれて続いている通路の方からだった。 誘惑?一瞬そう思う。 だけど違う。あれは無理矢理あたしを誘ってる香りではない。 「まっ、いっか。」 出口を出る方が重要だもんね。 そう割り切って扉を開けようとすると、どこからともなく声が聞こえてくる。 『ほんとうにその扉でいいの?』 どこかで聞いた事があるようなまっすぐなソプラノヴォイス。心の中で違和感を 感じさせる何か引っかかるような声。 誰よ?こんな所で。出口はこれじゃないの? いいわ、開けて見ればわかる事だもんね。そう思って扉をしっかり握るあたしに 向かって、またあの声が聞こえてくる。 『いったん開けたら戻るのに苦労するのよ。』 その声はおっとりとした口調であたしに忠告する。 なんだってのよ………出口を知ってるなら教えてくれたっていいじゃない。あな たは何者?何様のつもり? あたしはなぜか、その声に対し嫌悪感さえ抱くようになっていた。 何なの?この感じ。 「何か知ってるなら出てきなさいよ。あなたがあたしをここに導いたの?あたしは ね……あたしはね……迷路が大嫌いなのよ!」 実際、迷路は苦手だが大嫌いというところまではいかない。ただ、声に対する嫌 悪感があたしの感情を逆なでさせているみたいだ。 あたしの言葉に反応したのか、足音がコツコツとこちらへと向かってくる。 そして、通路を曲がって声の主があたしの視界に入った時、思わず出た言葉。 「あらら………あたしってロングも似合うんだわ………」 人間、驚き過ぎるとわりと冷静に物事を見てしまうものだ。怒るのを通り過ぎる とかえって呆れてしまう、というあの感覚に近いものだった。 目の前に立っているのは、紛れもなくあたし。ただ、髪型はショートのウェーブ ではなく、ストレートのロングなのだ。双子の姉妹が居たらこんな感じなのかな? うーん、秋になったら伸ばそうかな………そうすれば、お正月に髪も結えるしね。 そんな、たわいない事を考えている間も、彼女=あたしの分身はこちらへとだん だん近づいてくる。 『あたしはその扉じゃ満足しない。そうでしょ?』 「えっ?」 あたしは彼女の言葉にびっくりする。 どう考えても、それは他人が言うセリフじゃない。まるで、あたし自身の言葉み たい。 ほんとうにあなたはあたしなの? 時がかけた魔法の力? 自分自身に出逢うほんとうの意味は? そう、たしかに彼女の言う通りだった。開ける前からその扉に物足りなさを感じ ていたのは確かだった。でも……なぜそうなの? 訳のわからないまま扉を開けるのを諦めると、彼女は微笑みを残して目の前から 消えた。何処かへ去ったのではない。忽然として空間から消えたのだ。 「そっかぁ、あたしって超能力者だったんだ。」 と、友達がいればウケそうな事を口走る。 しばらくの間、あっけに取られながらも、心の奥底ではある答を見つけだしてい た。 そうよ……そうね。出口を探したって駄目なんだ。 入り口を探すのよ。きっとそうに違いない。 でも何処にあるんだろう? 「で?それでどうなったの?」 隣の席で自製のそぼろ弁当をほおばっているクラスメイトの純子が、話の続きを 興味深く聞いてくる。 「どうなったと思う?」 純子の興味津々な顔を後目に話をじらす。 「とにかく、扉を開けて出てきたんでしょ?」 あたしはその質問に、薄ら笑みを浮かべて答えてあげた。 「ううん………まだ、扉は見つけてないのよ。………あたしはまだ、迷子の途中… ……」 時がかけた 魔法の答えは何処? 風のゆくまま 歩いてみようかな。 (了)
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