空中分解2 #1061の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
姫は扉の小さな格子窓越しに衛兵に話しかけました、おまえは名はなんとい うの。返事はありません。私が誰か知っているのでしょう。これにも返事はあ りません。なぜ黙っているの。衛兵は口を結んだままじっと立っていましたが 、目は姫を見ていました。一つだけ教えて、私はいつまで閉じ込められるの。 やはり返事はありませんでした。衛兵は彼女と話すことを禁じられていたので す。 エレオノーラは何度も何度も話しかけましたが、彼は返事をしません。姫は 言いました、おまえは口をきけないの?たとえ口がきけなくてもおまえは人間 よね、だから私は話しかけるわ。それに耳は聞こえるのでしょう、話しかけら れるとこちらを見るもの。おまえは私を人間だと思っている?思っているのな ら、口をきかなくてもいいから、首を振ってちょうだい。おまえは私を人間だ と思っている? 思っていますとも、衛兵はついに口を開きました、思っていますとも姫さま 、あなたはエレオノーラ姫さまです。彼は涙を流しながら、扉の前まで歩いて きました。やっと彼が口をきいてくれたというのに姫は何も言うことができず に、その目からは涙がとめどもなく溢れてきました。 エレオノーラは扉の窓越しに衛兵の顔をよく見ました。おまえを覚えている わ、姫が言いました、森番のペドロじいさんのところのホセでしょう。覚えて てくださいましたか姫様、ホセが言いました、むかし森でやんちゃな姫様とよ く遊びました。ふたりは微笑んでしばらく鉄格子の窓越しに見つめ合っていま した。ふいにホセが辛そうに顔をそむけました。姫が言いました、ペドロじい さんは達者でいる?顔を上げずにホセが言いました、はい、でも姫が亡くなら れたと聞いてとても悲しんでおります。私死んだことになっているのね、姫の 口調に驚きはありませんでした。一兵卒の自分には何も知らされてはおりませ んし、たとえ身内でもこの秘密を話してはならないのです、低い声でホセは言 いました。ねえホセ、姫が言いました、憶えている?、むかし、おまえが捕ま えた珍しい蝶を私が欲しがったら、ペドロじいさんが、それはずっと西の蝶の 国から迷い込んできた蝶だよ、きっと何匹か仲間と一緒だ、一夏限りの命だが もしかしたらこの島で子を生むかも知れないよ、放しておやり、って。ホセは 扉の下にくずおれ、その嗚咽は長いこと止みませんでした。 ホセは姫を逃がす決心をしましたが、そのチャンスがないまま2年が過ぎま した。 あるとき、ディランド公カルロスの父フランク国王が亡くなり、その葬儀に 出るために、城の主だったものはすべてフランク王国に行ってしまいました。 この時をおいてチャンスはない、そう判断したホセは、今まで練りに練ってい た計画を実行しました。 エレオノーラは、ロトの祖母から習い受けた薬草の知識を使って仮死状態に なる薬を作り、それを服して寝床に横たわり、ホセは、衛士長のところへ駆け 込んで、姫が死んだと伝えました。訃報を携えた使者がすぐさまフランク国に いる公爵夫妻のもとへつかわされましたが、エレオノーラ姫はとうにこの世の 人ではないことになっていましたから、彼らからの返信は、善処すべし、ただ それだけでした。 塔から逃れ出たエレオノーラは森で暮らすことになりました。幽閉されるま での15年間、引き裂かれたその半生を残してきた城を目にするのは辛く、彼 女はその後ずっと、城の見えない森から出ようとしませんでした。過去の光か ら追放された彼女は、森に棲む魔女レナとして闇に転生したのでした。 レナは森の中で薬草と魔術の研究に明け暮れました。やがてペドロじいさん が亡くなった後は、その跡を継いだホセだけが彼女を知るただ一人のひととな りました。そしてホセはときどきレナの調合した薬を人々に売って歩きました 。 過去を全て捨て去ったレナでしたが、ロトのことだけはどうしても忘れ捨て ることができませんでした。森で薬草を摘んでいると、ときどきロトのことを 思い出しては、彼の母に教わった歌をくちずさむのでした。 ある時レナは、ロトとの思い出が染み付いた薬草の数々を混ぜ合わせそれに ある呪いをかけました。その呪いとは、それを飲んだ者は深い眠りに落ち、全 霊をかけて彼を愛する者にくちづけされないかぎり、永遠に目覚めることがな い、というものでした。小さな鍋の中で泡立つ液体を見つめる彼女の頬は紅潮 し目は熱でうるんでいました。泡立ちが止んだとき呪いの薬は出来上がるので した。そうしたらレナは自らそれを飲むつもりでした。やがて泡立ちが止まり 液体の表面に浮いた泡が一つまた一つと消えていきました。とうとう最後の一 つがはじけて消えたとき、レナは突然笑いだしました。彼女は気づいたのです 、愛する者のくちづけで呪いが解けたその瞬間、呪いをかけた自分は死んでし まうのだということを。 ・・・・・・・ (6)へつづく
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