空中分解2 #1047の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
俺は人生に疲れていた。 どうも周囲に馴染めないというか、人間関係というものが厭になったのだ。 まあ、厭になったから周囲が微妙に反応してよけいつらいのだが。 仕事を早々に切り上げると、俺はもうまっすぐアパートに帰った。 ここのところ毎度のことで、働き盛りなんだが会社も仕事もつまらない。 晩飯、風呂、洗濯といった独身生活につきものの些末なことを機械的に こなすと、俺は鏡に向って自分の姿をしみじみと眺めた。 こんなことをして何になるのだろうと自分でも思うのだが、最近無性に おのれの姿を確かめたくなってしまう。 中途半端なまま歳を食ってくたびれたさえない感じ丸だしの自分がいる。 俺はため息をつきながらその姿がなんとかならないか、昔もこうだった のかとか馬鹿な思いを巡らせるまま、やがてうとうととしてしまった。 どれくらい時間が経ったのだろうか。 目を覚ますと相変わらずの自分がいた。 「やれやれ」俺は布団にもぐり込んだ。 次の日は休日だった。 俺は特に予定もなく、午後遅くさすがに部屋にいるのもうっとおしくなって 外へいくことにした。 アパートの階段を降りていると、若い女の子が登ってきた。 まだ自分の人生が始まったばかりで、毎日うきうきという感じの女の子。 俺に比べるとまぶし過ぎる。俺は目を思わず伏せてそんな自分の思いを 見せないように擦れ違おうとした。 ところが彼女も考えごとでもしていたのか、擦れ違い様に俺達は軽く ぶつかってしまった。 「あ」俺は気の抜けた声を出すと、謝ろうと目を上げた。 そこには俺がいた。 「えっ」同時に声がでた。俺達は互いの姿に驚くと、飛びのくように離れ 俺は階段を駆けおりた。 「はあはあ...」 一体さっきは何が起こったのだろうか、女の子が俺になった。 わからない!これは一体どういうことだ! しばらくうろうろとして、俺は念のため実験してみることにした。 人目の少ない道で一人で歩いている人に擦れ違うふりをして軽くぶつかって みる。10人目で俺は事態を納得した。全員俺になってしまった。 俺は調子に乗った。俺になった他人は完全に俺になっていて、以前の 人間の記憶などまったくないようだ。従って俺にされたことで半狂乱に なったり取り乱したりということは皆目なかった。 皆そのままどこかに去っていった。俺は個人主義でアナーキーな性格 だったから。 俺は遊び疲れてアパートに戻った。 大勢の俺が帰っていた。俺達の記憶は同じなのだから当然だが。 深夜になっていたので人目がなかったのが幸だった。 俺は「こう俺が多くてはどもならんな」と思ったが、他の俺もそう 思っているようだった。自分に話しかけるのは恐くて俺達はそこら中に 転がって寝た。 翌日は仕事だった。俺達はくじを引いて一人を会社に行かせた。 そして時間を置きながら一人づつ外へ出た。 俺はなんだか知らないがこうなったらどんどん行こうと思ってどんどん 俺に他人を変身させた。どうせ世間の殆どの人間は俺と言葉さえ交わさずに 関係なく生きているだけなんだ。どうなったってかまうものか。 やがて街のあちこちで俺を見かけるようになった。 どうやらいろいろな俺が精力的に俺を作っているらしい。 やっぱり俺はアナーキーなんだなー。この世界がどうなっても俺は知らん もんね。これは一種の病気みたいなものなんだ。エイズにかかるよりは ましでっせー。(ホンマかいな) しかし、さすがにこう俺ばっかりではまずいなと思って俺はタクシーを 止めると街を出た。運転手は俺が少し遠くの街までというと、喜んだ。 降りる時に当然俺にしてしまったが。 俺はホテルにチェックインすることにした。 フロントの顔が少し緊張していた。俺は待たされた。 ロビーのテレビに俺のさえない顔が映っていた。 レポーターが恐怖におびえながら俺が俺を作っていると喋っていた。 さっきまで賑やかだったロビーに人影が消えていた。 「ばれた!」俺は顔を手で隠してホテルから逃げ出した。 「俺だよ」俺は恋人の美穂に電話した。 「えー、あなた本当にあなた?さっきから何回もあなたから電話があって」 「ちっ、間違いないよ本当の俺だ」 「皆そう言うのよ、まあいいわ、いったいどうしたのよ。あなた指名手配 よ。日本国中いまはパニックよ、大騒ぎなのよ」 「俺にもわからないよ。ただ、俺がきても絶対に体にさわるな、まあ俺達は 美穂を好きだから俺にしたりしたりはしないけど、何かの拍子にぶつかって しまうかも知れないし。外には出るな絶対!」 電話を切ると俺はまた逃げ続けた。 俺達は狩られ始めた。俺達を皆殺しするしかいまや人類が助かる道はない という結論が早々と出され、時限立法で俺に限り発見次第その場で殺害 してもよしということになったようだ。 体に触られる前にやってしまうべく、猟銃から竹やりまでの武器を帯びた グループが街をはいかいしていた。 こうなると見つけるのはたやすい。俺はもう誰でも知っているのだから。 あちこちで俺が見つけられ、射殺、丸焼き、串ざしその他無惨な殺され方 をした。一部の識者は眉をしかめたが人類生き残りの論調の前には無力 だった。 で、俺はつかまったか? いや。実は俺はいち早く美穂のところへ逃げ込んだのだ。 なぜ美穂が俺を俺だとわかったって?愛情ってものをあなどってはいけない。 ドア越しにいろいろ訴えるうちにわかったようだ。他の俺はくるのを 遠慮したようだ。俺はそういうところは潔い人間だし。 俺と美穂とのことを知っている人間はいなかったし、俺はずっと美穂の マンションに隠れていることができた。 俺は美穂とは触れないように気をつけて俺がどんどん発見され殺されて いったり、突発的にまったく別のところで勢力を盛り返したりするのを テレビや新聞で見ていた。なんて冷たい?俺は本家、元祖俺なのだ。 今では俺は「ミラーマン」と言われて世界中で有名だ。まあ、おかげで 「日本人はもともと皆おんなじで個性の乏しい民族だったがそれが高じて こういう現象になった」とか日本叩きの材料にされてしまったりもしたが。 俺はときどきこっそり街に出たりもしている。もし街でちょっとさえない 中年にさしかかった男がいたらそれは俺かも知れない。 顔を隠してあなたに近付いてきたら逃げた方がいい。 あなたは俺になる。 しかし、俺も不幸ではあるのだ。なぜって、あれ以来俺は恋人の美穂を 始め女性とはセックスできなくなってしまったから。 抱きついた途端、女は俺になってしまうのだ。 ミラーマン ..
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