空中分解2 #1018の修正
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鏡の中に男が映っている。男は髭面で、頬骨と鰓が張っていること 以外は、うまく表情が読み取れない。時々充血した目を見開いて、鏡 の向こう側の風景を眺めている。 男の後ろには白いタイル張りの壁しか見えない。男の姿と一緒に、 薄靄の中で影を潜めているように輪郭がはっきりしない。温室の中に でもいるような、湿度の高い空気が充満している。 咳払いを何度かしたように見えるが、音声が存在しない。顔色が青 冷めている。唇が変色している。 鏡の中に腕が生える。白くぼやけてはいるが、薄く不健康に血管の 浮きだした細い腕は女の物だ。体温のない掌で男の顔を撫で回す。男 は身動きしない。鏡の中に女の顔が現れる。細く釣り上がった、狐目 だ。顔は人形のように表情がなく、唇の端で笑っているようにも見え る。 男は自分の顔に触れる。他人の物を値踏みするような几帳面な触れ 方だ。時々手を止めて、忙しなく鏡の向こうの風景を眺め回している。 女の存在を気にも留めない。 男の首に白い腕を絡めて、女は目を閉じる。それだけ描き忘れられ た瀬戸物の人形のようだ。薄い唇を両側へ引っ張るように笑い、だら しなくよだれを流す。男に纏わり付く腕が白い蛇のようだ。女は鏡の 中を見ようともしない。 男が太い両腕を振り回す。女は跳ね飛ばされて鏡の中から消滅する。 鏡の中に男が映っている。男は髭面で、頬骨と鰓が張っていること 以外は、うまく表情が読み取れない... 《’91.7.11筆》
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