空中分解2 #0966の修正
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「まあ飲みなさい」 係長の竹下が、眼を細めながらビ−ル瓶を持ち上げた。 「ええ。でも、私はすぐに顔に出るからまずいですよ」 「なあに、そりゃあ健康な証拠だよ。第一、いくら飲んでも少しも赤くならない なんて、いったい愛敬がないじゃないか」 「じゃあ、ほんの少しだけ」 「なんだね、こんなものは早くにおぼえて、はやくに卒業することだよ」 「あっ、と」 「まあまあ」 「ええっ−、こんなにですか」 「ぐいっと、ぐいっと」 「・・・ぷっ」 「はっはっは、こりゃあいい」 「ふうっ」 「おいおい、もう顔が赤いじゃないか」 いつのまに来ていたのか、横から技術主任の宇野がわざとらしく眼を剥いた。 「本当ですか。どうしよう」 芙美子は、この春に高校を卒業したばかりである。 −−−−− 「どうらい、ビ−ルの味は」 「にがいだけです」 「へっへっへっ、だれれもはじめはそういうんだよ。とろろがそのうち、うイッ」 「だいじょうぶですか。だいぶ酔っているみたいですよ」 芙美子は途方に暮れながら、向こう隣の同僚の顔を伺った。宇野はすでに逃げ てしまっていた。 「係長、もう勘弁してあげなさいよ」 あなたが悪いのよ、という具合いに芙美子をにらみつけながら相変わらず厚化 粧の関本嬢が助け舟を出した。 「ひっひっひ、せきもろさんにかかっちゃかなわん」 「じゃあ係長、ヤボ用がありますんでわたしはこれで」 宇野が竹下の耳元ででささやいた。 「おい、君は車じゃなかったか」 課長の鈴木が手招きしながら聞いた。 「ええ、もう大丈夫すよ。これくらい平気、平気」 「いや、そうじゃなくて。林君を送っていったらどうかと思ってね」 「なるほど。同じ方角だし、いいすよ」 「おいっ、らめ。林くんはこれからぼくと飲みにいくんらから」 竹下が口をとんがらかしながら、とんでもないという具合いに言った。 「わかったわかった、竹下くん」 「さすが、課長。あんらはエライ」 鈴木が口とは反対のことを身振りで示したのを、竹下は見ていない。 −−−−− 「どうしたの林さん。顔色が悪いわよ」 「うう」 「ちょっと横になったら」 「うう」 「気持ち悪いのね。吐きたいんでしょう」 「うう」 同僚の河村清子が肩を貸してあげようとしたが、芙美子は立ち上がれなかった。 「山下くん、ちょっときて」 「えっ、ぼくですか」 「あなた山岳部でしょ」 山岳部と酔っぱらいの介抱とどう関係があるのか。 「いま車に乗せちゃまずいじゃないですか」 宇野である。車の中で吐かれでもしたら、それが本音であることは疑いない。 「そうね。少し横にさせておいた方がいいわね」 あなたはいつもそうよ、というように河村は顔をしかめた。 「だいたい、あいつが悪いのよ。はじめて飲む娘にあんなに飲まして」 課長付き書記さん十年目の菊池照子が、あごを突き出しながら口をひん曲げた。 「あら、あなた顔がまっ赤よ。いいのそんなに飲んで。お腹の児に悪いわよ」 「いいのいいの。鍛えてあげてんだから」 −−−−− 「というわけでそろそろ・・・。ええ、だいぶ盛り上がってきましたし」 訳の分からないことを言ってみんなを納得させてしまうのも、幹事の腕の見せ どころである。 「では例によって三本締めで」 「おいっ靴」 「係長、危ないって」 「なにが非常事態宣言だ。ヒクっ。ええ、そうらろ。非情事態と言ってもらいた いよ。なあ、ウン」 「係長、上着のポケットから何か落ちましたよ。テレカじゃないですか」 「あん、君にやるよ」 そんなことを言うのは、使いきったテレカだからだろうと思いながらも幹事の 務めだとでもいうように二階堂はそれを拾いあげた。 「あれっ、テレカじゃないや。なになに・・・ 【お酒の健康な飲み方10ケ条】 第一条 未成年者、運転者、アルコ−ル依存症者、妊婦は、飲んではいけない。 −無法者・医学無視の無知・胎児への加害者にならぬために− 」 (国立久里浜療養所編ポスタ−より) この項おしまい
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