空中分解2 #0832の修正
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★内容(1行全角40字未満、500行まで)
榊は菜緒と美那の方に歩き出し、そっと冷たい木のドアを触った。 「この中には、美那や菜緒の過去がつまっている。そして、ここからはその過去を全 て捨てた、新しい旅がある…………君達が選び、そして、突き進む。そして、決して 引き戻すことのできない、世界を引き離すドア」 榊は何かを思い出し、静かに黙った。 菜緒はしばらくドアを見つめた。 「それが………未来と過去をつなぐ扉………ですね」 榊はそっとドアから手を話し、託す様に菜緒の方を向いた。 「どうする?」 菜緒はしばらく榊の目を見ていた。 やがてドアの方に向き直し、鍵に手を掛けた。 「いい過去もありました。素晴らしい両親もいました……。でも、もう、帰ってきま せん……。だから…」 菜緒は鍵を回した。 ドアからカチャリと金属の寂しい音がした。 「私は、鍵を閉めます」 ゆっくり、本当にゆっくり、菜緒は鍵を抜き取った。 榊は温かい手で、優しく菜緒の頭を撫でる。 やさしく、温かく。 「おーい、まだかー」「はやくー、何してるの?」 外から斉藤と美那の声がした。 榊はそれを聞くと、まだドアの前で立ち止まっている菜緒の背中を叩いた。 「さあ、じゃあ、新しい旅立ちだ。行こう」 菜緒も笑顔で、ぱっと顔を上げた。 そして、元気よく。 「はい!」 二人が出て行くと、旅の道連れの二人が、優しく待っていた。 ACT 5 −−−榊邸 広大な庭にはサーチライトが光り、そのずっと先に建物がある。 3階建ての豪邸の2階の一室には、まだ光りがともっていた。 榊の自室。 少し広めの部屋は、結構きちんと整理され、清潔な感じがした。 本が横の壁いっぱいに広がり、榊は反対側のベットの近くにいた。 「まさか、これを着る羽目になるとは」 榊はぶつぶつ言いながら、自室で着替えをしていた。 肌に密着する黒皮の服を着、黒の皮手袋をはめる。 黒のブーツを履き、布を頭に卷く。 どれも、これも格闘技の練習のときに使う代物である。 動き易く、ショックを和らげ、防弾にもなっている。 榊はぶつぶつ言いながらも服を着終ると、窓を開け、二階の部屋から飛び降りた。 そのまま、かなり大きい庭を駆け抜けると、車庫に行き自分で作った750ccバイ クにまたがると、始めから付いているキーを回した。 すぐ、バイクは吹き上がり、目の前のシャッターも上がった。 「いくぜ!」 一声残して、榊はエンジンの音も高らかに、闇の中に消えていった。 −−−学校 「いつのまに、こんな物を作ったのかしら」 「それよりも、サイズよ。サイズ。ぴったりよ」 美那と菜緒は、斉藤がいつの間にかに作っておいたパワードスーツを着ながらぶつぶ つ言っていた。 美那が赤。菜緒がピンクである。 ちょっと可愛いらしいその服は、とても斉藤が作ったとは思えないものだった。 しかし、さすが斉藤と言うか、厚さは3cmほど。しかも間接部をうまく作ってあっ て、着ていて全く不自由がなかった。 しかも、筋力は数十倍になるという。 倒れそうになってを手を付いた机が、まっぷたつに割れて初めてそのスーツの威力に 二人は驚いた。 そして、あらためて斉藤の凄さを感じた。 「天才どころじゃないわね」 「うん。天才を通り越した馬鹿の部類だと思う」 隣の部屋で、斉藤はおもいっきり、くしゃみをしていた。 「だれか、噂してやがんな。まあいいか」 斉藤は理科の先生等がよく着ている白衣をまとっていた。 そして、うれしそうに何等かの試験管を取り出し、胸にしまっていった。 試験管の中の液がその度にゆれ、音を立てる。 斉藤はその液を見ながら、満身の笑みを浮かべ、こう言った。 「いやー、こんな機会に実験ができるとは」 南無阿弥陀仏 ACT 6 辺りは闇に包まれ、何一つ物音はしなかった。 昼間の喧騒が嘘みたいに静かな学校の正門。 校名の彫ってある石が、冷たそうな黒い反射光を放つ。 静かな住宅街に、エンジンのアイドリングの心地よい振動音が響いた。 やがて、そのエンジン音も消え、また、静寂に包まれる。 榊は足を振り上げ、バイクから降りた。 バイクは軽くバウンドし、また元の状態に戻る。 闇の中の黒装束の榊は、ヘルメットを取った。 軽く頭を振ると、闇に汗が飛び散った。 榊はヘルメットをバイクのハンドルに掛けると、正門の中に入って行った。 街灯の明りも遠くなり、中心街を通る自動車の音も、ますます小さくなる。 暗さを増した運動場を、榊は歩いて行った。 一路、制作部へ。 「用意はできたかー!?」 榊は明りの洩れているドアを開け、大きい声で言った。 ピンクと赤のスーツをまとった美那と菜緒がこちらを見た。 ヘルメットは取ってあり、驚きの表情が見える。 榊は美那達の驚きの表情の意味が解らないまま、聞いた。 「斉藤は?」 美那と菜緒はそのままの表情で、いま榊が開けたドアを指さした。 「え?」 榊はおもむろにドアの反対側を覗いた。 突然、ぬっと斉藤が現れる。 明らかに額には傷があり、怒りの表情を浮かべていた。 「てめーは……」 榊はおもわず後ずさりながら、斉藤をなだめた。 「ちょっと、ブレイク! たんま! 謝る!」 「今日という今日は……。榊、これで何回目だ!」 榊は人差しを指を立ててみせる。 「めでたく100回」 斉藤は怒りに笑いを込め、指をパキポキと折りながらにじり寄った。 「正解。御褒美に拳骨をやろう」 「と言うわけで、斉藤のバイクに菜緒。俺のバイクに美那が乗って、研究所に向かう。 いいか?」 榊が頭のこぶをさすりながら言うと、一応みんな、うなずいた。 「ちょっと、さっきのは痛かったな…………まあいい……。よし! じゃあ行くか」 榊は先にドアから出て行くと、みんなも後からついて行った。 正門前で、もう一度集合し、それぞれバイクに跨った。 美那と菜緒はスーツのヘルメットを、榊は元していたヘルメットを被った。 榊と斉藤はそれぞれ鍵を回し、エンジンをかけた。 軽い振動と共に吹き上がる。 榊は用意が済むと、斉藤の方を向いた。 「それじゃあ、出発するが……。斉藤」 「? なんだ?」 斉藤が榊に聞き直すと、榊はピンクのパワードスーツに身を固めた菜緒を指さした。 「後ろに菜緒ちゃん乗っけている事、忘れるなよ」 斉藤は笑って答えた。 「大丈夫だ、まかせろ」 榊は何かしらの不安が残っていたが、なにはともあれ、ヘルメットのガラスを降ろし、 エンジンをふかした。 榊は少し動き、斉藤に向かって叫んだ。 「行くぜ!」 4人は、静かな住宅街を抜け、一路、研究所に向かった。 「はっ、はっ、はっ、はっ」 山の道にはいると、途端に車の通りは無くなり、少しずつ速度が増していった。 斉藤は初め不気味な笑いを浮かべているだけだったが、榊が気付く前に、大きな声で 笑いだした。 「しまった!」 榊が思ったときには既に遅く、斉藤は速度を上げ、カーブの続く山道をことごとく抜 けて行った。 とうとう出てしまった。斉藤の病気が。 もうこうなると、止めることはできない。 小回りが多い道をまるで無視するかのように斉藤はエンジンをふかして行った。 注意し、止めようとするが、斉藤は更に速度を上げていって、とどまる事を知らない。 榊が追いかけることは、まるで逆効果のように、斉藤の速度は増していった。 榊の必死の追跡にも関わらず、斉藤は逃げる様に走って行く。 既に、恐がりの菜緒を乗っけている事は、すっかり忘れている。
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