空中分解2 #0831の修正
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美那は正座したまま、うなずく。 「俺も知らなかったなー。斉藤が俺の事をそんな風にみていたなんて…………」 みんなぱっと声のした方を向いた。 土間に一番近いふすま。出て行ったところに今、榊は立っていた。 榊はそのまま、中に入ってきた。 「冷静な感情なし人間って、所か」 榊はぶつぶつ言いながら、斉藤の横にあぐらをかいて座った。 「と言いながら、お前は俺の事をどう思っていた」 斉藤も取って返して、言った。 「お前の事? そうだな、さしずめ……」 少し悩んだ後、斉藤と榊は同時に、声を合わせて言った。 「気違いマッドサイエンティスト!」 「やっぱりな」 「なんだ、知っていたのか」 「自他共に認めている……。まあ、いいだろう」 「それよりも……」 榊は美那と菜緒の方を向いた。 「どこをどう間違えて、こいつと俺が友達になったんだ…………。評判通り、若き日 の過ちだったかな…………」 榊が不平を漏らすと、菜緒がそれに答えた。 「そんな事ないですよ。ほら、言うじゃないですか、“類は友を呼………ぶっ」 言っている途中で、美那に口を閉じさせられた。 「ひとこと多い妹ですみません」 もごもご言っている菜緒の横で、美那が代わりに謝った。 「類が友か…………そうかも知れんな」 榊はじっと斉藤を見た。 「“完璧生徒会長”と“気違いマッドサイエンティスト”の共通点て何だ?」 斉藤がぼそっと言うと、1秒ほどの空白の後、菜緒が元気よく言った。 「変人!」 また美那に口をふさがれ、菜緒は閉じた口の中で何か、もがもが言っていた。 しかし、美那の行為に反して、榊と斉藤はうなずき合っていた。 「やっぱりそうか………」「そうだろうな…………」 「あっ、あのねー」 美那は同意している二人に呆れた。 「俺も小学の時代は、異端児扱いだったな…………」 斉藤は片手を顎に当て、昔を思い出していた。 「俺は同窓会に行って初めて友達がいなかったことに気付いた……」 榊の表情はどこか悲しげだった。 「私達は…………」 美那が口を聞いた。 その沈黙で4人ははっと気が付いた。 美那と菜緒には友達どころか、親類縁者がいなくなってしまったのだ。 過去は楽しかっただろう。 だが、これからの人生は辛いことが度々あるはずだ。 榊は落ち込んでいる二人を見、真剣な面もちになった。 斉藤はその榊のやや暗めの顔を見、不信に思った。 「何か知ってるな? 言え、この野郎」 斉藤がにじり寄ると、斉藤の事など気にせず、榊は二人に話し始めた。 「美那、菜緒。御両親は事故で死んだんじゃない。殺されたんだ」 榊が断言するような強い口調で言うと、美那と菜緒の顔がゆっくりこっちを向いた。 「殺され…………たんですか………」 美那も気付いていたようだ。絞り出すような、つらそうな声で答えた。 「…………」 榊は無言でうなずいた。 斉藤は腕を組み、考え込むようにしながら、榊に聞いた。 「殺した奴は?」 榊が何か言い出すより先に、美那が言った。 「月治製薬会社の関係ですね」 「はあ?! おまえの両親の働いていた会社じゃないか!」 美那は斉藤の質問にうなずくと、榊の方を向いた。 「そうなんですか?」 切実な目で、榊に問う。 榊はそれに対し、無言でうなずいた。 「そうですか……」 美那はそのまま、うつむいた。 斉藤は榊に向かって乗りだした。 「何故、殺されたんだ? 恨まれるような御両親じゃなかったはずだが……」 榊は真剣な顔で斉藤の方を向いた。 一段と表情が厳しい。 斉藤は思わず息を飲んだ程である。 「軍事産業だ」 「?」 斉藤はいまいちピンと来ず、悩んだ。 「部長……お父さんやお母さんは、死ぬ前の日ぐらいに、会社を止めるって言ってま した…………『あんな事をやっている会社なんて愛想が尽きた』って言って…………」 菜緒が寂しそうにうつむいた。 最後のか細い声に続き、沈黙が訪れた。 「………月治製薬は、前からうさんくさい噂があったのを知っているな?」 「細菌兵器の話か?」 「それが本当だったんだ。それを、美那達の御両親は偶然知った」 「それで……」 斉藤は首を真一文字にかっ切る真似をした。 「殺されたと」 斉藤の問いに対して、榊はうなずいた。 「おそらく」 やっと意味の飲み込めた斉藤は座り直し、あぐらをかいた。 「陰険な会社だなー」 榊は一段落のついたこの折りに、軽く両手を上げ、伸びをした。 「……いや、そうでもないんだ」 「何だ?」 「創立者は立派な男だったって言う話だ。問題は今の責任者さ」 「責任者?」 「お前なんかより、数段ひどいマッドサイエンィストさ」 榊は少し笑いながらちゃかを入れると、斉藤も乗ってきた。 「何を言う。俺は将来に夢を持つ、純真無垢なマッドサイエンティストだ」 榊は斉藤の言ったことに少し首を傾げた。 「何か矛盾してないでもないが…………まあ、俺もそう思う」 榊がうなずくと、斉藤は美那達の方を向いた。 「それで……。どうする?」 美那達は当惑した。 「どうするって……」 「つまり……御両親は事故でなく、殺された。犯人は月治の責任者。それだけ解って るんだ」 斉藤は乗り出すように前に出た。 「どうしたい?」 二人はしばらく黙っていたが、美那が何かを決意したように顔を上げた。 「部長も、榊さんも、解っていると思います…………私達がどうしたいかは」 斉藤は不気味な笑いをしながら、榊の方を向いた。 「さっかきちゃーん」 榊はおもわず一歩、後ずさった。 「なっ、何なんだ、一体。気持ち悪い」 「いや、頭の良い榊ちゃんの事だから、いい考えがあるんでしょ?」 「罪にならずに、仇討する方法?」 榊が具体的に言うと、美那と菜緒はぱっと榊の方を向いた。 何かを頼むような二人の目に対し、榊は笑顔で答えた。 「あるよ」 「本当か?!」 「嘘は言わない」 美那と菜緒はそれを聞き、二人に言った。 「榊さん、部長。お願いします……。二人の力を貸して下さい」 榊は恥しげに鼻の頭を掻くと、横から斉藤が肩を叩いてきた。 振り向くと、斉藤は手を出し、握手を求めていた。 顔には、すがすがしい笑顔。 「手を握るなんて、久しぶりだな」 「まったく」 榊も手を振り、いきよい良く斉藤の手を掴んだ。 「やるか!」「やらいでか!」 美那と菜緒の顔にやっと笑顔が戻ったのを、榊も斉藤も見逃さなかった。 「それじゃあ、行くか」 榊が立ち上がると、斉藤は訝しげな顔をした。 「こんな時間に、どこに行くんだ?」 榊は至って平然と答えた。 「行くんでしょ? 殴り込み」 「今から?!」 榊は既に土間の方まで歩いていた。 「ほら、早くしないと、置いていくぜ」 斉藤、美那、菜緒の順に立ち上がると、それぞれ榊の後を追って行った。 「ちょ、ちょっとまってよー」 最後の菜緒が慌てて追いかけて来た。 4人は戸締りも済み、玄関の外にいた。 最後に菜緒が家の鍵を掛けようとしたその時、榊は呟くように言った。 「過去との扉か……」 菜緒の手が止まり、榊の方を向いた。 「どういう意味?」 榊はおもむろに振り向き、菜緒の方を向いた。 そして今、菜緒が鍵を掛けようとしているドアを、指さした。 「なにかの本で読んだんだけど……。今までの過去と、これからの未来をつなぐドア って言うのを思い出したんだ」
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