空中分解2 #0830の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
斉藤は自分の体を指さした。 「俺の体には、26ヵ所、おかしな所がある。それでも、俺は好きなことを止める気 はない…………間違えるなよ。お前に実験台をやって欲しいと言っているわけじゃあ ない………おい! 逃げるな!…………そうだ。ちゃんと座っとってくれ…………も っとも、やって欲しいのは山々だが………おい! どこに行く! 話を聞け! 話を。 ただな、もっと人と話したり、好きな事しろって言ってるんだ………それだけ、完璧 に揃っていながら、もったいないぜ」 「……………」 「いいたかったのは、それだけだ。邪魔したな」 「いや………授業は?」 外に出て行こうとした斉藤に榊が声をかけた。 「実験があるんでな。興味あったら見に来い」 「お前に、あの気がなくなったら行こう」 斉藤はクックッと笑うと外に出て行ってしまった。 榊は、何か考える様に汚い天井を見ていると、教室の前あたりの運動場がうるさくな った。 「また、飛び降りるのか………体、大丈夫かな………」 榊は、涼しい風の入ってくる、開けっ放された窓を見た。 その時はまだ、初めて人の事を心配したことに、榊は気付いていなかった。 外が、一際うるさくなったと思うと、急に静かになる。 飛び降りる直前のようだ。 そして、落下音。 2秒ぐらい続いた落下音は、地面衝突の音で止まった。 「終ったか………」 榊が呟くと、外ではいつもと違う反応が起きていた。 いつもなら、失敗であろうと歓声が吹き荒れるのに、どこか違う。 榊も心配になって窓を見ていたが、その時、サイレンの音も高らかに、救急車が駆け つけた。 同時に廊下を集団が駆け巡り、何か叫んだ。 「斉藤が失敗した! 大怪我だ!」 榊は、それを聞いて外を見ると、ちょうど救急車が出て行くところだった。 その頃、授業のチャイムが鳴り、先生の呼び込みもあって生徒達はちらほら教室に入 ってきた。 殆ど、授業になっていなっかた中でも、榊は勉強を始めた。 シャカシャカとシャープが動く。 だが、みんなの話している噂は、知らず知らず耳に入ってくる。 斉藤の落ちた様子。怪我。そして、様態。 榊は飛び降りる寸前に斉藤が言った言葉を思い出した。 “俺の体には、26ヵ所、おかしな所がある。それでも、俺は好きなことを止める気 はない…………” 榊のシャープはいつの間にか動いてはいなかった。 「ええい、少しは静かにせんか!」 噂が噂を呼び、4時間目にもなると生徒のうるささは最高潮に達し、先生がたまりか ねて叫んだ。 「ちょっとはこの榊を………」 「先生!」 榊が先生の言葉をさえぎった。 「なんだ? 榊」 「ちょっと、気分が悪いんですけど、早退してもいいですか?」 「あっ、ああ………いいとも………大丈夫か?」 「はい、大丈夫です」 確かに大丈夫そうだったが、榊は先生からの信頼は厚い。 元気な榊は、そのまま早退となった。 榊が教室を飛び出すと、今度は教室は榊の噂でうるさくなった。 先生は諦めて、黒板に何か書き始めた。 生徒は、それを機会に更にうるさくなる。 「早退って言っとたけど………カバン、忘れていってるぜ」 「それに見た? 教室、走って出て行ったわ。初めてじゃない?」 「確かあいつ、皆勤だろう………もったいない」 「先生の話している途中で言ったのも聞いたことない」 「どうしたのかしら…………」 「しらんよ」 榊は、廊下を駆け抜け、運動場を横切っていた。 なぜ、そんな事をしているのか、榊は考えもしなかった。 ただ、初めての不安が心の中に広がっていた。 初めての。 だから、走って行った。 交通法規を半分無視し、話しの端々で聞いた病院名を思い出し、榊は走って行った。 榊は斉藤の運び込まれた病室を見つけると、息を切らしながら札を見た。 まだ誰の名前も書いていないが、確かに部屋の番号はあっていた。 榊は息を整え、面会謝絶の看板を見ながらも、そっと扉を開けた。 少しきしんだ音と共に扉が開くと、榊は音もなく滑り込むように中に入った。 中には広い部屋に一つのベッドと一人の看護婦がいるだけだった。 榊が一歩前に進むと、看護婦も榊の存在に気付き、榊の方をぱっと向いた。 「すいません、面会謝絶なんですけど」 だが、榊は看護婦の事など気にせず歩を進めた。 看護婦は榊の目に斉藤しか入っていないのに気付き、席を立ち榊の前に立ちふさがろ うとした。 「ちょっと………」 榊がそれをも避けようとした時、酸素マスクをつけていた斉藤の目がうっすらと開き、 榊の方を向いた。 「さ………さか……き」 榊は斉藤の意識が戻ったのが解ると、猛然と看護婦を振り払った。 かつてないほどの慌てぶりである。 榊の力にかなうはずもなく、看護婦は横にのいた。 榊は枕元に立ち、上から辛そうな斉藤の顔を眺めた。 「さかき………き…て……くれたの………か…」 「そうだ! 俺だ! 大丈夫か!」 斉藤は微かに笑った。 「だい……じょうぶには………みえな……いと……おもう……けど…ね………」 榊はいかにも辛そうな斉藤を見、悲しげな表情した。 「そうだな…………辛いよな…………だけど」 榊は力強く斉藤を見返した。 「がんばれ………自分の夢を実現したいんじゃなかったのか!」 斉藤はまた微かに微笑むと、急に咳込んだ。 「くふっ……けほっ………さ………さかき………」 「な、なんだ………」 斉藤はいきなりベッドから包帯だらけの手を出し、榊の手を掴んだ。 榊も斉藤の手を握り返す。 「さ…最後の願いを………きいてくれ………」 「なんだ!……」 「これから言うことを聞いて怒らないでくれ…………」 「わかった。約束する………何でも言ってくれ」 「ほんとうか?………」 「本当だとも。さあ、いってくれ」 「そ…それじゃあ……………」 榊が必死に斉藤の手を握り返すと、急に斉藤は元気な笑顔となった。 榊はそれを見て、半分当惑した。 その榊の顔を見て、斉藤は満足そうに言った。 「今までの、ぜんぶ嘘」 「−−−−!」 榊は口を開けたまま呆然としていると、斉藤は一人笑いだした。 いや、隣で看護婦も笑っていた。 看護婦もぐるで、榊をだましたのだ。 榊は意味が飲み込め、急に恥しさが込み上げた。 「このや……」 榊は怒った顔で、おもいっきり拳を上げると、斉藤は榊のほっぺをつねくった。 榊の拳が一瞬とまる。 その時、斉藤はうれしそうな、それでいて低い声で榊に言った。 「やっと、剥したな……この、鉄面皮!」 斉藤は更に頬を引っ張った。 榊ははっと気付き、殴る気力が消え、口を開けて驚いた。 その表情は唖然とも取れる。 斉藤はちょっと、痛そうな顔をした。 「ちょっと、榊は怪我は本当なんだ………手をどけてくれ」 榊ははっと気を取り戻し、手を引っ込めた。 「あっ、ごめん」 だが、まだ榊には、自分の心の変化が解らず、オロオロしていた。 斉藤は笑った。 「どうだ? 初めて喜怒哀楽を人前に見せた気持ちは」 すると、榊の顔がカッと赤くなり、恥しげに口の端を噛んだ。 すぐに後ろを向き、歩き出した。 ドアの方向。 だが、出て行くわけではなかった。 看護婦の座っていた椅子を掴むと、榊はそれにどっしりと座り、斉藤と向かい合った。 その顔は、元通りのあの顔だった。 だが、そこから冷たい感じはもはや感じられなかった。 「何が望みだ? 斉藤」 どこか憎らしげな笑いをしながら、榊は斉藤に聞いた。 斉藤は上を向きうれしそうな顔で考えた。 そして、ニヤニヤ笑っている榊に向かって、斉藤は体を起こし、言った。 「何はともあれ、一緒にクラブを作らないか?」 「……と、それから一緒だな」 斉藤は、話が終ると息をついた。 「そんな事があったんですかー」 菜緒が明るい、少し抜けた声で言った。
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