空中分解2 #0823の修正
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★内容(1行全角40字未満、500行まで)
こからは見えないところに連れられてしまった。 ゆうは心配そうにお父さんの裾を引っ張った。 お父さんはゆうに気づき、持ち上げ、だっこした。 お父さんの黒い顎髭がゆうの頬にあたった。 「ゆう、心配しなくても大丈夫だ。お前だけは絶対にお父さんが守ってやるよ」 ゆうもお父さんの首に抱きついた。 その時、銃の音が響いた。 しかも、お母さんが消えた方向から。 お父さんの表情が変わった。 「まさか…………」 お父さんは、ゆうを抱えたまま、走りだした。 「おい、こら! 動くな!」 しかし、それぐらいでお父さんが止まるはずがなかった。 脱兎のごとく走りだしたお父さんは、一直線にお母さんの消えた路地に入って行った。 そして、路地を曲がる。 そこで、お父さんは止まった。 ゆうも顔をあげて見た。 そこは、おそらく死刑場だったのだろう。 かなり広い広場いっぱいに、死体が転がっていた。 まだ、新しいのもあれば、腐りきった頭蓋骨も転がっていた。 腐敗臭が広がり、鼻をつんざく。 そのまん中に、崩れかけていたお母さんがいた。 「かすみーーーー!!」 お父さんは大声を出して、お母さんの方に走り寄った。 いくつも死体を蹴り散らし、走りきった。 お母さんはスローモーションでこちらを向き、一瞬笑ったかと思うと、そのまま倒れ た。 「かすみーー!」 お父さんはお母さんの前で止まり、ゆうを降ろした。 そして、崩れるように足を折った。 「か……す……み……」 お父さんは膝の上で握り拳をつくり、大粒の涙をこぼした。 初めて流した涙だった。 その時、ゆうはただつっ立っているだけだった。 −−− 何も悪いことをしてないお母さんが殺されるはずない! −−− あんな幸せそうなお母さんが死ぬはずない! ゆうの頭の中でいろいろなことが駆け巡り、混乱していたのだ。 ただ、お母さんはゆうの目の前で死んだ。 「くそーーー!」 お父さんは立ち上がり、お母さんを殺した二人に走って行った。 「くそーーー! この野郎!」 しかし、お父さんが走りよるより先に二人の銃が火を吹いた。 広場に高い爆発音が響いた。 ゆうが振り向いたとき、倒れかけたお父さんに銃の弾が連発で突き刺さった。 倒れることなく、一歩一歩さがる。 ゆうはその時はっきり見た。 男達の笑っている顔を。 男達は、殺しを楽しんでいたのだ。 銃の音が止まると、その数秒後、お父さんの倒れる音がした。 ゆうは意識を取り戻し、お母さんの上に覆いかぶさる様に倒れているお父さんを見た。 ぴくりとも動かないお父さんを見たゆうは、走り寄ることもできずに膝を折った。 ゆうの目から涙がこぼれた。 お父さんとお母さんの姿がぼやけて見えた。 大声を出して泣きたかった。 全ての物を忘れるぐらい、大声で泣きたかった。 しかし、いくら悲しくても声はでなかった。 何か喉に蓋でもあるかのように出なかった。 それが、また悔しくて涙が出る。 後ろにいた男二人はゆうの方に歩み寄り、すぐ近くに立ち、ゆうに銃を向けた。 その顔はさっきと同じく、笑っていた。 ゆうは顔をあげ、空を見上げた。 −−− 涙なんかでなくてもいい! ただ、みんなに知らせる声を出したい! 涙を止めるように、きつく目を閉じ、歯を食いしばった。 そして、喉に使えているものを取り除くかのように、空気を漏らした。 「ぅっ……ぅっ」 思いが通じたのか、小さい、小さい声が口から洩れた。 男は引金に手をかけた。 その時、ゆうの何かが弾けた。 喉にあったような、心にあったような何かが弾けた。 「うわぁ−−−−−−−−−ん!!!」 声が出た。 その声と同時に、ゆうを中心とした放射線状に、あった物全てが消えていった。 まず、男達が。 そして、草木が。 死体が、家屋が、車が、人が、武器が。 全てが、消えていった。 その様子は、さながら原爆を落とした後の様子を、ゆっくりにして見ているようだっ た。 その放射線状の波の早さは、時速50km/hぐらいだった。 だか、町を飲み込むのに、一分とかからなかった。 その間、ゆうの声は止まらなかった。 その声はいつしか地と同調し、風と同調した。 地も風も彼女の声に合わせるように揺れた。 風が吹き荒れ、地が揺れた。 放射線状に延びる見えない波は、全ての物を消しさった。 町が消えてもなお、ゆうの声はやまなかった。 何もない慌野に、ゆうの悲しい泣き声だけが響いた。 「こちら、CZ−1。こちら、CZ−1。今のところ、異常なしだ」 「ザザー、……ピッー。了解」 救助及び、調査のため出されたヘリの中の男は、何もない大地を見おろした。 「ひえー、ほんとにねぇーなー。いったい、なに落としたんだ」 横の席の男は双眼鏡をゆっくり動かした。 「うわさじゃー、USAのミサイルらしいが、誰もその姿を見てねぇーつぅしな…… ……」 「きわもんだなー」 「…………おい、なにかあるぜ」 「なに! どこだ」 「南西の方向」 男はスティックを回し、進路をかえ、下降しだした。 「ほんとだ、なにかいるぜ…………」 「二人、いや、三人だ」 助手席の男はマイクをひっつかんだ。 「こちら、CZ−1、CZ−1。人を発見。数は3。救助に向かいます」 「……ピッー……了解」 ゆうは、しゃくりあげながらも、なにか音のする空を見上げた。 白い雲と重なっていた黒い点は、やがてヘリと解るぐらいまで近寄ってきた。 空にローラーの軽い、風を切る音が響いた。 やがて、二つの死体の前で泣いているゆうの近くに、砂煙を立ててヘリがゆっくり降 りてきた。 ゆうの殺伐とした心にも、そのローターの音がしみる様に響いた。 私の夢は、お母さんのようにきれいな声で歌い、お父さんのような写真をとること なんです。 いつの日か………… FIN
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