空中分解2 #0820の修正
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★内容(1行全角40字未満、500行まで)
遼はゆっくり歩き出し、丘の緩い斜面を登って行った。 登りきると、そこから街の全望がのぞめた。 西の空には、赤い太陽があった。 少し涼しい風が、体を通り抜けて行く。 「ここの場所、好きなの?」 「うん」 沙羅は小さくうなずいた。 遼も赤く染まる街を見おろした。 「きれいな所だね……」 しばらく二人は黙ってその景色を見ていた。 「ねえ、お兄ちゃん……」 沙羅は遼の顔をのぞき込んだ。 「何だ?」 「また……。来てくれる?」 「また?」 「うん」 喧嘩ばかりしている遼だが、どういうわけだか、今日は素直な気持ちになれた。 「よし、これから毎日来てあげるよ」 「本当!?」 「約束するよ。その代わり、4時から5時の1時間だけ。それぐらいしか時間が開い てないから…………それでいい?」 沙羅は今までの中で最もいい笑顔を浮かべ、大きくうなずいた。 uうん!!」 この時から、沙羅は髪をのばし始めた。 理由はごく簡単なものである。 髪をのばしている時に入院し、遼に出会い、 退院してときに髪を切り、遼にあえなくなった。 そして、また髪をのばそうと思ったときに遼にあった。 ただ、それだけである。 遼に出会ったその夜から、沙羅は髪をのばすことを決めた。 遼に会えるように、願いをこめて。 そして、沙羅は今に至ってもなお、前髪以外は切ることはなかった。 それから二人は毎日、約束どおり会った。 沙羅は笑顔をよくみせる、可愛い女の子になっていき、入院することもなくなった。 遼も喧嘩することがなくなり、友達から明るくなったと言われるようになった。 そんなことが一ヶ月も続いたある日。 遼の家に一通の手紙が投げ込まれていた。 これから沙羅に会いに行こうとしていた遼がそれを見つけ、読んだ。 その手紙の内容はこうだった。 お前の妹はあずかった。4時までに桜川公園に来い。 桜井 総 この桜井総と言うのは遼の学校の総番で、いつも遼が喧嘩していた相手である。 それはいい、しかし……。 「妹ったって、俺には妹なんか…………」 しかし、すぐ答えは見つかった。 「沙羅!」 遼は手紙を握りつぶし、家から木刀を取り出し、公園に走って行った。 「沙羅−−−!」 遼は公園に入り、3人に囲まれている沙羅を見つけると叫んだ。 その声で気づいた沙羅は遼の方を見た。 「お兄ちゃん!」 遼が立ち止まると、沙羅の周りにいた3人の中の一人が遼の方に歩いてきた。 桜井総である。 残りの二人と違って、リーゼントをしたり、学らんを着たりしているわけではないが、 その体格の良さと威厳は、誰もを圧倒させるものがあった。 遼の前に立ち、二人はしばらくにらみ合った。 話しだしたのは、桜井の方だった。 「木刀、すてろや」 桜井は木刀を視線でどかす身振りをした。 遼は視線は桜井をにらみつけたまま、木刀を投げ捨てた。 桜井の顔が笑う。 「そんな、恐い顔せんと。まあ、おちつけ」 完全に桜井の方が立場が上になると、桜井は余裕のある行動をとった。 遼の方は、はぎしりするだけだった。 いつもなら、こんな奴など敵ではないのだが………。 「お兄ちゃん…………」 沙羅は横の二人に刃物で脅かされ、心配そうな目で遼を見ていた。 「望みは……。なんだ」 遼はうなる様な低い声で聞いた。 「解ってるねー。なに簡単なことよ。ただ黙って俺達に殴られ、そんで、これからい っさいはむかわないと約束してくれゃいいんだよ」 「それでいいんだな」 「こちらは、それで十分だ」 残りの二人もうなずいた。 すると遼はそのまま腰を降ろし、地べたにあぐらをかいて座り、腕をくむ。 「好きなようにしろ」 覚悟は始めからできていた。 桜井達の顔がほころび、まず桜井が指を鳴らしながら、遼のすぐ近くまで寄ってきた。 「歯ーくいしばれよ−−−」 そして、頬をおもいっきり殴り飛ばす。 遼はふっとばされはしなかったが、殴られた後、口から血がしたたり落ちた。 すると、残りの二人もやってきた。 「それじゃあ、いかせてもらぜ!」 一人目は逆の頬を殴った。 もう一人は、そのすぐ後に腹に蹴りをいれた。 遼の顔から血が滴ることはあったが、うめき声をあげるどころか、姿勢を崩すことも なかった。 それが遼にとっての、せめてもの反抗だった。 3人で寄っててたかって遼を殴り、蹴るのが3分も続くと、さすがに桜井達も満足し たようで、だんだん殴る回数が減ってきた。 最後は、桜井の蹴りだった。 その蹴りで、遼がとうとう倒れた。 しかし、桜井達の息も完全にきれていた。 「へっ、ざまーみろ……はぁ、はぁ、……今度、反抗したら、……。はぁ」 桜井は一度息を大きく吸って、言葉を続けた。 「また、こう目に合わせてやるぜ」 呼吸はいまだ乱れていたが、桜井達は笑い、公園の出口に向かって歩き出した。 最後の一人が、遼に唾を吐き捨てた。 「じゃあな」 桜井達の笑い声を、遠くに聞こえる。 桜井達が見えなくなった頃、遼は大の字に寝転がり、大きく息を吐いた。 土がいやに冷たく感じた。 そこに沙羅が走り寄ってきた。 沙羅は遼のすぐ近くまで来て、立ち止まり、膝をおった。 いたそうな顔を、震える手でそーっと触ると、突然泣きだした。 「ごめんなさい! ごめんなさい! 私のために! ごめんなさい!……」 沙羅は、泣きながら必死に遼に謝った。 遼は、泣いている沙羅の頭にそっと手をおき、傷だらけの顔を沙羅に向けた。 「いいんだ、沙羅。昔のツケが回ってきただけさ。沙羅のせいじゃない」 遼は、まだ泣きやまずに、ごめんなさい、を連発する沙羅を抱き寄せた。 遼の胸の上でも、沙羅は泣き続けた。 遼は沙羅の頭を撫でてやる。 しばらく遼は空を見つめ考えていた。 が、答えは一つしか見つからない。 「沙羅、もう俺と一緒にいない方がいい。友達でもつくってくれ」 遼は優しい声で言ったが、沙羅は激しく首を横に振った。 「やだ! やだ! お兄ちゃんと一緒にいたい! お兄ちゃんと…………」 沙羅は激しく泣きだしてしまった。 遼は大きくため息をついた。 するとその時、ぽっと案が浮かんだ。 「沙羅」 遼は上体を起こした。 体の節々が痛み、遼は顔を歪める。 一息ついてから遼は話だした。 「沙羅、剣道をやってみないか?」 沙羅は泣き顔をあげ、しゃくりながら、遼を見た。 「けんどう?」 「そう、剣道。自分で自分を守る手段だ」 沙羅は遼のえりをつかみ、遼につかみ寄った。 「やる。沙羅、剣道やる…………私、自分で自分、守る!」 沙羅はまた、遼の胸に顔をうずめ泣きだした。 遼は、そんな沙羅をしっかり抱いてやった。 それから、二人の会う時間は剣道の時間となった。 沙羅の剣道の上達は早く、半年もすると、小学生の大会ぐらいならどうにかなる程度 の実力となった。 そして、ぴったり一年後、二人は桜井達3人に喧嘩を挑み、見事勝った。 その時、沙羅もしっかり一人倒した。 そして、現在−−−− 沙羅も17になり、髪も伸び、魅力的な女性となった。 その沙羅はいま、東京の郊外に建っているあるマンションの3階にきていた。 田舎と言うわけではないが、静かないい所だった。
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